作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

セント・ルークス室内アンサンブルの朝、昼、晩

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先週金曜日に今日のカンブルランのコンサートの予習としてピノックの「朝」、「昼」、「晩」を取り上げたんですが、今日は現代楽器のお気に入り盤を紹介しましょう。リストを整理していたら、このアルバムを紹介しなくてはとメラメラと思い始めたという次第。

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2001年宇宙の旅を思わせるような意欲的な造りのジャケットがこのアルバムのただならぬ迫力を感じさせます。演奏は、セント・ルークス室内アンサンブル(St. Luke's Chamber Ensemble)によるハイドンの交響曲6番「朝」、7番「昼」、8番「晩」とディヴェルティメントの断片(II:24)の4曲。録音は2000年6月12日~18日にニューヨークの米国芸術文学アカデミーでのセッション録音。

この3部作が作曲された1761年は、ハイドンがエステルハーザに副楽長として赴任した年。当時のハイドンの雇い主であったパウル・アントン・エステルハージ候より副楽長就任一日の時刻を題材とするようというにというお題が与えられたとのことですので、それを踏まえてハイドンが渾身の力を込めて作曲したものと言うことができるでしょう。

オケは日本風には聖路加室内アンサンブルとでも言ったら良いでしょうか。ニューヨークを拠点に活動する1974年設立の楽団。現代楽器で指揮者はなしです。オルフェウス室内管弦楽団と同じような構成ということでしょう。

この演奏は、ハイドンの初期の交響曲を現代楽器の小編成アンサンブルでプレーンに演奏したもの。指揮者なしのオケらしく、踏み込んだ解釈はないんですがきっちりしたアンサンブルの美しさを感じさせ、個々の楽器のキレも良い演奏。個性的な演奏もいいのですが、こうしたオーソドックスながら良い演奏というのもまた良いものです。ライナーノーツのオケのメンバー表から各楽器の人数を書き出すと、次のようになります。

フルート(2)
オーボエ/イングリッシュホルン(2)
バスーン(2)
ホルン(2)
ハープシコード(1)
ヴァイオリン(4)
ヴィオラ(1)
チェロ(1)
ベース(1)

総勢でも16名ですから旋律がクリアに聴こえるわけですね。おそらくハイドンが着任した頃のエステルハーザの楽団もこの程度の人数だったことでしょう。

そもそもこの3部作自体、交響曲とは呼ばれていますが、独奏楽器を多用する書法はコンチェルト・グロッソ、特に管楽器を独奏楽器として愛用するオーケストレーションや楽章構成はディヴェルティメントに近いということです。この演奏は、これらの曲の特徴を鮮明に表現するというコンセプトにもとづくものと推察されます。

1曲目の「朝」。1楽章の出だしは朝もやがはれるようないつもの開始ですが、速めのテンポで始まり、小編成のオケらしく、線は細いものの書く音符の動きが鮮明にわかるようなクリアな演奏。各楽器のきっちりしたテンポ感とフレーズを入れ替わり担当する掛け合いの面白さが聴き所ですね。各楽器が生き生きとして演奏しているんですが、模範的な演奏ともいえる折り目正しさもあります。
2楽章は、テンポを落として編成の割に大きなうねりを感じさせる表情豊かなな演奏。1楽章と対比が効果的。個々の楽器の巧さを感じさせる緊密なアンサンブルですね。
3楽章のメヌエットはやはり丁寧な表情付けがいいですね。特に中間部に入りテンポを落として訥々としたフレーズを重ねるあたりの詩情は見事ですね。両端の舞曲はフルートをはじめとした木管楽器の音色の美しさで聴かせます。
フィナーレは期待どおりの快速テンポ。編成が小さいだけにホルンや木管各楽器の音色の美しさが印象ですが、この楽章は特にヴァイオリンが目立っていい響き。

つづく「昼」と「晩」もムラのない良い仕上がり。「朝」と同様なソロの美しさを満喫できます。ピノック盤でも良かった「晩」の2楽章は、さらに良いですね。極上の響き、長い休符の恍惚、ハイドンの神髄が凝縮した8分間。やはりハイドンは天才ですね。この曲のすばらしさが、パウル・アントン・エステルハージ候にも伝わったことでしょうね。この恐るべき才能を同時代、現場で聴いていた人の衝撃はいかばかりのものだったでしょうか。

最後に加えられたディヴェルティメント(II:24)の断片楽章ですが、コンサートであればアンコールに取り上げ他と言う感じで加えられたものでしょうか。作曲年は3部作と同様1761年頃とされています。小編成オケのための曲で、メヌエットと5つの変奏曲で成り立っていますが、メヌエット自体は消失してしまったとのこと。8分少々の曲ですがソロがかわるがわる出現し、最後はホルンとコントラバスの掛け合いがあるなどユーモラスな曲調がいいですね。この部分のホルンの響きは絶品。

評価はディヴェルティメントを含む全曲を[+++++]としました。以前より評価を上げました。このアルバムをリストに加えたときには個性と言うか、踏み込みの部分でもう一歩のものがあるという印象だったんですが、こちらが大人になったんでしょう、踏み込まないところが良いと思うよう場数を踏みました(笑)

HMV ONLINEのカタログには残っていますが、レーベルであるARABESQUE RECORDINGSのウェブサイトでは現役盤とはなっていないので入手可能かどうかはわかりません。見かけたら即ゲットをお薦めします。

さて、ちょっとのんびりしたら、今晩はサントリーホールでカンブルランの「朝」、「昼」、「晩」。流石にこのアルバムほど人数は絞り込んではこないと思いますが、生で聴くハイドンの傑作3部作はどう聴こえるでしょうか。レポートは帰ってから記事にしたいと思います。
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