シュペリングの祝賀カンタータ「アプラウス」 絶品!
今日は平日にはなかなか取り上げにくい2枚組の大物を。

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ハイドンの祝祭カンタータ「アプラウス(賛美)」。1768年とハイドンが前学長ヴェルナーの死後エステルハーザ楽長に昇進した直後の時代の作曲。曲自体はZwettiシトー派修道院の院長Rayner I. Kollmannの誓願式50周年祝賀のために作曲されたもの。初演はZwetti修道院で1768年4月17日とのこと。
曲は、「調和」「知恵」「正義」「不屈」という4つの基本徳目と「神学」との間の論争を抽象的に描いたラテン語のテキストによるカンタータ。
シュペリングの演奏はこれまで2回取り上げてきました。記事のリンクを張っておきましょう。
ハイドン音盤倉庫:アンドレアス・シュペリングのカンタータ集
ハイドン音盤倉庫:アンドレアス・シュペリングの天地創造
このブログの読者の方ならご存知のことと思いますが、以前取り上げたカンタータ集の方は、Haydn Disk of the Monthに輝いた名盤です。シュペリングの演奏はライヴ感あふれる古楽器の響きが素晴しいもので、知る人ぞ知るマニア好みの演奏。
さて、今日この曲を取り上げたのは、ブログ読者の横浜在住のYさんからメールで情報をいただいて。Yさんは私以上にハイドンをはじめとした古典派の音楽に造詣が深く、ハイドンの珍しい作品、珍しい演奏もずいぶんご存知でメールでいろいろ情報をいただきます。アプラウスは私も3組のアルバムをもっていたんですが、今ひとつちゃんと聴けてませんでした。平日は仕事から帰ってから記事を書きますので、あまり大物は取り上げにくいんですね。今日はYさんからいただいた情報の中らから、アプラウスを取り上げた次第。Yさんから私の所有しているのと同じ3組の情報をいただき、今日は朝から3組のアルバムをとっかえひっかえ聴いて、私なりに1組をセレクト。それがシュペリング盤ということになった訳です。
このアルバムは最近の録音。2008年8月23~25日のケルン近郊のブリュールにあるアウグストゥスブルク城でのコンサートのライヴ録音。ソロは調和:アンナ・パリミーナ(ソプラノ)、知恵:マリーナ・デ・リーゾ(メゾ・ソプラノ)、正義:ドナート・ハヴァール(テノール)、不屈:ヨハネス・ヴァイサー(バリトン)、神学:アンドレアス・ヴォルフ(バス・バリトン)の5人。
曲は16曲構成のレシタティーヴォとアリアなど。先日取り上げた祝賀カンタータと同様、祝祭的な雰囲気のもの。
冒頭の入りは先日のカンタータ集を思わせる素晴しく清透な響き、シュペリング独特の繊細ながらゆったりとしたオケの響きがたっぷりとした残響とともに楽しめます。ライヴですが会場ノイズなどはほとんど気にならなず、また響きも自然で録音はライヴとしては極上のもの。
第2曲の4重唱は他の2組のアルバムよりも速めのテンポでフレーズの美しい流れよりも曲の見通しを重視したもの。歌手はいきなり4重唱でハードルが高いでしょうが、アンサンブルもオケとの一体感も見事。オケは微風のような軽さを感じさせるヴァイオリンが適度なメリハリをつけて、美しさを引き出しているのと、全体に厚みのある響きが祝賀カンタータの迫力を演出。冒頭から素晴しい充実度ですね。
3曲目のレシタティーヴォと4曲目のアリアに至り、バス・バリトンのヴォルフの厚みのある朗々とした声の魅力で圧倒。ライヴではさぞかし素晴しい存在感でしょう。深みがありながら輝きというか華のある良い声です。アリアではシュペリングのサポートもアクセントが明確ですばらしい推進力と活気、抜群のノリ。
6曲目はパリミーナ(ソプラノ)とデ・リーサ(メゾ・ソプラノ)のデュエット。可憐なパリミーナの声と、ふくよかなデ・リーサの素晴しいデュエットにシュペリングの万全のサポート、天上につきぬけるトランペット城内を揺るがすティンパニの響き! 極上の瞬間。シュペリングのサポートはほんとに素晴しい。祝賀のための華やかな盛り上がりだけにとどまらず、ハイドンの機知を十分にふまえた音楽的な面白さを際立たせるアクセントの数々。途中短調に転じると、ぐっと腰を落としじっくりとした流れに。深い深い呼吸が見事です。再び長調に転じ、美しいデュエットに。シュペリングのコントロールは神の領域に入ります。奇跡的な閃き、なんという機知。このトラックだけで昇天です。
レシタティーヴォに続いて8曲目のハヴァール(テノール)のアリア。しばらくハープシコードのソロとオケの伴奏による至福の演奏がつづいたあと、おもむろにテノールな歌が浮かび上がります。ちょっとエッジがはっきりしないところもありますが、声の響きの透明感は流石、メリハリをおとなしくしたシュライアーのような声質。さきほどの素晴しいデュエットのあとに静寂のアリアとは、それにしても素晴しい構成ですね。14分以上つづく長いアリアですが、聴き飽きることはありません。
9曲目のレシタティーヴォに続いて、CD-1の最後の10曲目は激しい曲調のヴァイサー(バリトン)のアリア。シュペリングが畳み掛けるようにオケをあおります。ヴァイサーは表情豊かにアリアを歌います。比較的柔らかな声質で声量はそこそこ。オケに飲み込まれそうなところもあります。
CD-2に移って、最初はレシタティーヴォ。続いて12曲目はソプラノのパリミーナのアリア。穏やかなアリアなんですが、終盤にきてソプラノの美しい高音を楽しめます。
14曲目はハヴァールのアリア。再び14分超の長いアリアです。今度はハープシコードではなくソロヴァイオリンとの掛け合いのようなこちらも穏やかなアリア。途中から快活なオケが加わり、いきなりドラマティックになる部分がありますが、一瞬のみ。再びヴァリオリンとの静かな掛け合いに戻ります。最後はカデンツァのように聴かせどころをつくって終了。
続く15曲は前曲のアリアよりも劇的な感じのレシタティーヴォ。すこし休んだオケが再び生気を取り戻します。
そして16曲のコーラス。すべてを締めくくる大団円的曲想。最後はオケを盛大に鳴らしきってフィニッシュ。拍手はカットされています。
曲の完成度からすると、ちょっと後半尻すぼみ気味で、前半の充実度が目立つ曲ですね。ただし、前半の充実度は図抜けて素晴しいものがあり、特に第6曲のデュエットは素晴しい曲ですね。
この曲にはエピソードが合って、初演というか依頼の目的の演奏にハイドンが立ち会えないことから演奏の指示を詳細にわたって手紙にしたためて送った文面が残っており、その下りがいつも参照している大宮真琴さんの「新版ハイドン」に詳細に触れられているんですが、この演奏を聴いてその真意がようやくつかめました。ハイドンはこの素晴しい曲を楽譜にした時点で相当の自信作との認識をもっていたはずで、その演奏を人に任せるということを考えるとあれだけの詳細な指示を手紙を書くのは当然のことと納得できます。それだけハイドンはこの作品に相当の思い入れがあったのでしょう。
評価はもちろん[+++++]。いままでじっくり聴いていなかったことが悔やまれる、快心の素晴らしさ。またしてもシュペリングの術中にハマりました。この名曲の本当の素晴しさをオレが聴かせてやるとの強いメッセージがつたわります。以前のカンタータ集もこの曲もマイナーな曲だけに、これだけレベルの高い演奏で聴ける機会は多くはありません。
ハイドンが好きな人には絶対のおすすめ盤です。天地創造とは違いますが、音楽の素晴しさは劣ってませんね。

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ハイドンの祝祭カンタータ「アプラウス(賛美)」。1768年とハイドンが前学長ヴェルナーの死後エステルハーザ楽長に昇進した直後の時代の作曲。曲自体はZwettiシトー派修道院の院長Rayner I. Kollmannの誓願式50周年祝賀のために作曲されたもの。初演はZwetti修道院で1768年4月17日とのこと。
曲は、「調和」「知恵」「正義」「不屈」という4つの基本徳目と「神学」との間の論争を抽象的に描いたラテン語のテキストによるカンタータ。
シュペリングの演奏はこれまで2回取り上げてきました。記事のリンクを張っておきましょう。
ハイドン音盤倉庫:アンドレアス・シュペリングのカンタータ集
ハイドン音盤倉庫:アンドレアス・シュペリングの天地創造
このブログの読者の方ならご存知のことと思いますが、以前取り上げたカンタータ集の方は、Haydn Disk of the Monthに輝いた名盤です。シュペリングの演奏はライヴ感あふれる古楽器の響きが素晴しいもので、知る人ぞ知るマニア好みの演奏。
さて、今日この曲を取り上げたのは、ブログ読者の横浜在住のYさんからメールで情報をいただいて。Yさんは私以上にハイドンをはじめとした古典派の音楽に造詣が深く、ハイドンの珍しい作品、珍しい演奏もずいぶんご存知でメールでいろいろ情報をいただきます。アプラウスは私も3組のアルバムをもっていたんですが、今ひとつちゃんと聴けてませんでした。平日は仕事から帰ってから記事を書きますので、あまり大物は取り上げにくいんですね。今日はYさんからいただいた情報の中らから、アプラウスを取り上げた次第。Yさんから私の所有しているのと同じ3組の情報をいただき、今日は朝から3組のアルバムをとっかえひっかえ聴いて、私なりに1組をセレクト。それがシュペリング盤ということになった訳です。
このアルバムは最近の録音。2008年8月23~25日のケルン近郊のブリュールにあるアウグストゥスブルク城でのコンサートのライヴ録音。ソロは調和:アンナ・パリミーナ(ソプラノ)、知恵:マリーナ・デ・リーゾ(メゾ・ソプラノ)、正義:ドナート・ハヴァール(テノール)、不屈:ヨハネス・ヴァイサー(バリトン)、神学:アンドレアス・ヴォルフ(バス・バリトン)の5人。
曲は16曲構成のレシタティーヴォとアリアなど。先日取り上げた祝賀カンタータと同様、祝祭的な雰囲気のもの。
冒頭の入りは先日のカンタータ集を思わせる素晴しく清透な響き、シュペリング独特の繊細ながらゆったりとしたオケの響きがたっぷりとした残響とともに楽しめます。ライヴですが会場ノイズなどはほとんど気にならなず、また響きも自然で録音はライヴとしては極上のもの。
第2曲の4重唱は他の2組のアルバムよりも速めのテンポでフレーズの美しい流れよりも曲の見通しを重視したもの。歌手はいきなり4重唱でハードルが高いでしょうが、アンサンブルもオケとの一体感も見事。オケは微風のような軽さを感じさせるヴァイオリンが適度なメリハリをつけて、美しさを引き出しているのと、全体に厚みのある響きが祝賀カンタータの迫力を演出。冒頭から素晴しい充実度ですね。
3曲目のレシタティーヴォと4曲目のアリアに至り、バス・バリトンのヴォルフの厚みのある朗々とした声の魅力で圧倒。ライヴではさぞかし素晴しい存在感でしょう。深みがありながら輝きというか華のある良い声です。アリアではシュペリングのサポートもアクセントが明確ですばらしい推進力と活気、抜群のノリ。
6曲目はパリミーナ(ソプラノ)とデ・リーサ(メゾ・ソプラノ)のデュエット。可憐なパリミーナの声と、ふくよかなデ・リーサの素晴しいデュエットにシュペリングの万全のサポート、天上につきぬけるトランペット城内を揺るがすティンパニの響き! 極上の瞬間。シュペリングのサポートはほんとに素晴しい。祝賀のための華やかな盛り上がりだけにとどまらず、ハイドンの機知を十分にふまえた音楽的な面白さを際立たせるアクセントの数々。途中短調に転じると、ぐっと腰を落としじっくりとした流れに。深い深い呼吸が見事です。再び長調に転じ、美しいデュエットに。シュペリングのコントロールは神の領域に入ります。奇跡的な閃き、なんという機知。このトラックだけで昇天です。
レシタティーヴォに続いて8曲目のハヴァール(テノール)のアリア。しばらくハープシコードのソロとオケの伴奏による至福の演奏がつづいたあと、おもむろにテノールな歌が浮かび上がります。ちょっとエッジがはっきりしないところもありますが、声の響きの透明感は流石、メリハリをおとなしくしたシュライアーのような声質。さきほどの素晴しいデュエットのあとに静寂のアリアとは、それにしても素晴しい構成ですね。14分以上つづく長いアリアですが、聴き飽きることはありません。
9曲目のレシタティーヴォに続いて、CD-1の最後の10曲目は激しい曲調のヴァイサー(バリトン)のアリア。シュペリングが畳み掛けるようにオケをあおります。ヴァイサーは表情豊かにアリアを歌います。比較的柔らかな声質で声量はそこそこ。オケに飲み込まれそうなところもあります。
CD-2に移って、最初はレシタティーヴォ。続いて12曲目はソプラノのパリミーナのアリア。穏やかなアリアなんですが、終盤にきてソプラノの美しい高音を楽しめます。
14曲目はハヴァールのアリア。再び14分超の長いアリアです。今度はハープシコードではなくソロヴァイオリンとの掛け合いのようなこちらも穏やかなアリア。途中から快活なオケが加わり、いきなりドラマティックになる部分がありますが、一瞬のみ。再びヴァリオリンとの静かな掛け合いに戻ります。最後はカデンツァのように聴かせどころをつくって終了。
続く15曲は前曲のアリアよりも劇的な感じのレシタティーヴォ。すこし休んだオケが再び生気を取り戻します。
そして16曲のコーラス。すべてを締めくくる大団円的曲想。最後はオケを盛大に鳴らしきってフィニッシュ。拍手はカットされています。
曲の完成度からすると、ちょっと後半尻すぼみ気味で、前半の充実度が目立つ曲ですね。ただし、前半の充実度は図抜けて素晴しいものがあり、特に第6曲のデュエットは素晴しい曲ですね。
この曲にはエピソードが合って、初演というか依頼の目的の演奏にハイドンが立ち会えないことから演奏の指示を詳細にわたって手紙にしたためて送った文面が残っており、その下りがいつも参照している大宮真琴さんの「新版ハイドン」に詳細に触れられているんですが、この演奏を聴いてその真意がようやくつかめました。ハイドンはこの素晴しい曲を楽譜にした時点で相当の自信作との認識をもっていたはずで、その演奏を人に任せるということを考えるとあれだけの詳細な指示を手紙を書くのは当然のことと納得できます。それだけハイドンはこの作品に相当の思い入れがあったのでしょう。
評価はもちろん[+++++]。いままでじっくり聴いていなかったことが悔やまれる、快心の素晴らしさ。またしてもシュペリングの術中にハマりました。この名曲の本当の素晴しさをオレが聴かせてやるとの強いメッセージがつたわります。以前のカンタータ集もこの曲もマイナーな曲だけに、これだけレベルの高い演奏で聴ける機会は多くはありません。
ハイドンが好きな人には絶対のおすすめ盤です。天地創造とは違いますが、音楽の素晴しさは劣ってませんね。
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