作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

チャールズ・グローヴズのオックスフォードとロンドン(ハイドン)

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今日は交響曲のオーソドックスな演奏を。

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HMV ONLINEicon(入手困難!)

チャールズ・グローヴズ(Charles Groves)の指揮するイングリッシュ・シンフォニアの演奏で、ハイドンの交響曲92番「オックスフォード」と104番「ロンドン」。アルバムには2001年にリマスターと記載がありますが、録音年については記載がありません。そこでチャールズ・グローヴズについて調べてみると、英国生まれの指揮者で、1915年3月10日生まれで1992年6月20日に77歳で亡くなってます。このアルバムの録音はDDDとの表記でデジタル録音ですので、おそらく80年代前後の録音と推察できます。ネットを調べましたが録音年についてはわかりませんでした。

このアルバムを取り上げたのは、現代楽器のオーソドックスな隠れた名演ということでです。

まずはオックスフォード。デリケートな音量で奏でられる序奏の出だし。冒頭から弦楽セクションの張りのあるフレージングが印象的な演奏。ひとつひとつのフレーズが磨かれてよくコントロールされています。特にヴァイオリンがきっちりエッジをたてながらのびのびとしたフレーズを刻んでいくところが心地よいですね。きわめてオーソドックスな演奏ですが、楽譜からハイドンの交響曲を3次元的に浮かび上がらせようとするような構築感を感じます。グローヴズはイギリスで最初にマーラーの交響曲全曲を指揮したり、現代音楽を得意としていたようなので、音符をきっちり音響にして表現するのが得意なんでしょう。表現の方向は異なりますが、ブーレーズとかアンセルメとの共通点もありますね。ただしブーレーズほど覚醒した感もなく、アンセルメのような形式的な印象もありません。グローヴズのアプローチは中でも最もノーマルで、演奏は非常に瑞々しくつややかなもの。音楽的な表現能力が高い感じがしますが、個性的と言う面では一歩踏み込みが足りないということにもなるんでしょう。
2楽章にグローヴズの特徴がよく出ています。全体的にかちっとしており、ゆったりした感はないんですが、不思議と瑞々しい感じと言えば良いでしょうか。逆に3楽章はカチッとした構築感が見事にメヌエットに合って、引き締まったいい演奏。
フィナーレは躍動感溢れる演奏。以前朝比奈隆のオックスフォードを取り上げたときに感じた躍動感が再現されました。朝比奈隆の方が躍動感では上回るもの、楽章全体の構築感は見事。ジャケット背面には「オックスフォードの終楽章ではハイドンの終楽章の素晴しさが最も伝わる、躍動感溢れるヴァイオリンの特別な悦びを得られる」とのコメントが。まさにコメント通りの演奏ですね。

ロンドンの1楽章は期待通りの堂々とした入り。途中からヴァイオリンが刃物のようなキレをみせるアクセントが入り、全体に構築感溢れる骨格に、キレの良いアクセントの組み合わせが面白い演出効果を生んでいます。これは地味ながら斬新な解釈。後半にかけて徐々に畳み掛ける迫力を増し、エネルギーが溢れてきます。最後にテンポと音量を落とす部分で一旦熱を冷まし、再びエネルギーを表現して終了。
2楽章はオックスフォードと同様、カチッとしていますが、途中の盛り上がりが盛大な楽譜故、どちらかというと前曲のメヌエットの演奏に近い印象。そして3楽章の本当のメヌエットでは、さらにカチッとした印象でえぐるようなメヌエット。
終楽章は、力が抜けて流すような表現が秀逸。腕をぐるぐるまわして畳み掛ける演奏が多い中、この大曲の最後にここまで清透な心境になれるのは流石ですね。

評価はオックスフォードが[++++]、ロンドンは[+++++]としました。ハイドンの交響曲、特にオックスフォードやロンドンには名のある演奏家のアルバムがこれまで多数リリースされてきましたが、いちまいいちまいそれぞれ味わい深い特色があり、千差万別。このアルバムにもグローヴズの意図が行き渡ってました。交響曲を聴く楽しみを存分に味わえる名盤です。

最後に納めらた、モーツァルトの31番パリ交響曲もハイドン同様特筆すべき演奏ですよ。
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