作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

シュ・シャオメイのピアノソナタ集

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今日は、中国人ピアニスト、シュ・シャオメイ(Xhu Xiao-Mei)のピアノソナタ集。

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レーベルはフランスのMIRARE。収録曲目は収録順にピアノソナタXVI:23、XVI:34、変奏曲XVII:6、ピアノソナタXVI:50、XVI:52の5曲。録音は2008年6月パリでのセッション録音。

シュ・シャオメイはHMV ONLINEの情報によると、ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポンなどで日本にもおなじみの模様。私も音楽祭自体には何回か足を運んでいるんですが、実演を聴いたことはありません。上海生まれの中国人で、北京やパリなどで学んだ上、現在はパリで活動中のようですね。

収録順にレビューをしておきましょう。

最初はXVI:23。1773年頃の作品。1楽章は軽いタッチでスピーディに入り、徐々に力感を増してゆきます。タッチの微妙なコントロールと躍動感を主体とした演奏。指のキレは流石で、デュナーミクの付け方もデリカシーに富んだもの。ハイドンの中期のソナタの曲の構造の面白さが存分に発揮されています。録音は最新のものらしく解像力の高い自然なもの。静寂のなかにピアノがリアルに浮かび上がる良い録音。
2楽章のアダージョは一転、穏やかな入り。テンポは一定の幅におさまり、1楽章と比較するとメリハリをかなり抑えた表現。曲自体に語らせようということでしょう。
3楽章は再び躍動感溢れる表現に。軽やかなタッチによる速いパッセージの吹き抜ける感じと所々アクセントをつけて構成感を出すところのバランスが心地いい演奏ですね。基本的に個性的なという部分はないんですが、丁寧にしっかり弾けている感じです。力みがないのもいいですね。

続いてXVI:34。この曲は1780年代に入ってからの曲。ブレンデルの演奏で刷り込まれているせいか、ちょっと迫力不足に聴こえますが、素直に聴くと前曲同様、軽いタッチとデリケートなフレージングが美しい演奏。長身のブレンデルの渾身の左手と比べると、女性ということもあり、柔らかい左手の表現になるということでしょう。途中から活躍する右手のメロディーがきらめくようで非常に美しい。大きな方向性はブレンデルと似ているものの、低音の支えで聴かせるのと右手のきらめきで聴かせるのの違いを感じます。
2楽章のアダージョは控えめな表現ながら、右手のメロディーのきらめきが醸し出す詩情豊かな曲想。この曲の聴かせどころでしょう。ダイナミックレンジではなく詩情で聴かせます。
3楽章はシンプルなメロディにも巧みな表情付けで、非常に面白い。表情付けの豊かさな流石ですね。

続いて変奏曲XVII:6。この曲はだいぶ後の1793年の作曲。曲想に熟成を感じます。変奏曲のなかでは最も録音も多く、今現在31種の演奏を所有。古くから多くのピアニストが取り上げてきた名曲ですね。
普通はもうすこしゆっくり暗めに始まるところですが、さらりといつもの軽いタッチで、少し速めの入り。基本的に速めのテンポとあっさりとした表情付けで淡々と進めます。だんだんと表現の幅を広げ、演奏のダイナミックレンジも広がっていきます。最後は絶叫、とはいかず冷静なフィナーレ。

ソナタに戻ってXVI:50。変奏曲の直後の1794/95年の曲。こちらも速めの入り。基本的に1楽章は速めのテンポと軽めのタッチを生かした演奏なんですが、この曲ではちょっとアプローチが落ち着かない印象もあります。これまでの演奏の刷り込みでしょうか。ハイドンの後期のソナタには、もうすこし堂々とした印象もあってもいいと思いながら聴いてしまいます。速いパッセージの魅力はあるものの、何処か落ち着かない演奏になってます。
一転して2楽章のアダージョはゾクゾクするような美しさ。シャオメイの透明感溢れる右手のキラメキを生かした素晴しい詩情。落ちついたテンポ設定が功を奏している感じです。最後の消え入るようなところも絶品。
3楽章は曲想にマッチしているためテンポとタッチに違和感はありません。機知に富んだ演奏という範疇。最後の和音のあっさりとした終わり方はヨーロッパの人とは違う感じですね。漢詩文化圏を垣間見せるような気がします。

最後はXVI:52で全曲と同時期の1794年の作。この曲は最初から力感溢れる曲想で、演奏も力が入ってます。ピアノ響きを使い切るようなダイナミックさもあり、タッチの繊細さもあり、デリケートな響きのコントロールもあり、聴き応えのある演奏。このアルバムの総決算的トラックですね。
2楽章のアダージョはいつもと逆で、こちらがちょっと浮き足立ったようなテンポ設定。もう少し落ち着いて弾いてもいいのではないかと逆に思ってしまいます。
3楽章はハイドンの天才をいつもながら感じる楽章。シンプルなメロディの組み合わせながら、段々曲想が豊かに転じていく様子が見事。シャオメイらしいタッチの面白さを十分表現しきっていますね。

評価は全曲[++++]としました。新しい録音だけに非常に響きの美しいピアノが楽しめるアルバム。力みなく弾かれるピアノのタッチを楽しむアルバムと言うところでしょう。
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