作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

サヴァリッシュ、N響の天地創造ライヴ

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本日は、先日ディスクユニオン神保町店で仕入れた、珍しいアルバムを。

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レーベルはなんと、BMW Japan。これはBMW Japanの設立10周年を記念して開かれたコンサートをライヴ収録したもの。コンサートは1991年10月13日にサントリーホールで開かれたもの。ライナーノーツの最初に記載された当時のBMW Japanの社長であるハンス=ペーター・ゾンネンボルンの挨拶文によると、このコンサートには定員の10倍もの応募があったとのことで、そのライヴ盤を制作し申込者に配布したものとのこと。ということでこのアルバムは一般に販売されたものではありません。設立10周年の記念にお客さんを招待して天地創造をやるとは、流石ドイツの会社、というより社長の力量でしょうか。

演奏陣がまた凄いメンバー。指揮はウォルフガング・サヴァリッシュにオケがNHK交響楽団、合唱が東京芸術大学合唱団(合唱指揮は田中信昭)。ソロはソプラノがドンナ・ブラウン(Donna Brown)、テノールがヘルベルト・リッペルト(Herbert Lippert)、バスがなんとクルト・モル(Kurt Moll)です。サヴァリッシュとN響は当時国内で天地創造をやるといったらベストに近い選択でしょう。しかも歌手にはあのバーンスタインのDVDで完璧な歌唱を聴かせたクルト・モルに、アーノンクールのミサなどのテノールを担当するリッペルト、そしてガーディナーのミサ曲などでソプラノを担当する、ブラウン。歌手の布陣は企業の主催するコンサートとしては申し分ないものでしょう。

演奏はサヴァリッシュらしい、ドイツ正統派の重厚な響き。古典的な雰囲気を出すために音を短めに切っている感じもあります。いい意味でちょっと重めのテンポにのって、じっくり溜めながらオケが序奏を演奏。第一声のラファエル役のクルト・モルの素晴しいバスの響き。録音は鮮度が十分ではありませんが、会場の雰囲気をちゃんと伝えており鑑賞には問題ありません。会場のノイズはほとんど気になりませんので、何らかの処理をしているんでしょうか。ウリエル役のリッペルトは地味ながら安定した歌唱。そして芸大の合唱も力の入ったいい歌唱ですね。ガブリエル役のブラウンは透明感のある高音の抜ける響きが美しいですね。いつものトラック8のガブリエルのアリアでは美声を轟かせます。3人とも安定感は流石ですが、やはり、モルの圧倒的な存在感がこの演奏の支えとなっていますね。ちょっと癖のある声ですが、正確なテンポ感と揺るぎない岩のような迫力はずば抜けています。
トラック10から13に書けての第一部のクライマックスへの盛り上げ方は、流石ライヴというべきで、落ち着きを失わないサヴァリッシュのにらみがきいていながら、オケは頂上に一歩一歩近づいていく感じ。トラック13は素晴しいふけ上がり。

第二部に入ると、オケがあったまったのか、よりリラックスして弾いているように聴こえます。トラック18の3重唱は見事の一言。そしてトラック19の盛り上がりでCD1を終わります。
CD2に入り、第二部後半は名曲のオンパレード。まずは、トラック3の第22曲「神を讃える人間の必要性」、かなりテンポを落として神々しさを演出。モルの圧倒的なバスの存在感。そして、トラック5、第24曲「神の姿に似た人間の創造」。サヴァリッシュの重厚なテンポの伴奏にのって爽やかなリッペルトのテノールが微風のよう。そして第二部の終曲はビッチリメリハリをつけて終わります。

花園ともいうべき第三部。あったまったオケとサヴァリッシュの巧みなコントロール。アダムとエヴァの掛け合いは意外に少し速いテンポに変わり、絡み合いの妙を聴かせます。最後の第34曲はサヴァリッシュ大爆発。なんと神々しい序奏。これまでの演奏の総決算的、重厚なリズムに天から光が射すような神々しさ。最後は拍手喝采に包まれます。いやいや、これは素晴しい演奏。当日のホールの興奮が伝わってきますね。

評価はもちろん[+++++]としました。特に第二部、第三部の出来は素晴しいの一言。オケとソロが徐々に火がついて、だんだん表現が深くなっていくところが聴き所でしょう。これは、BMW Japanのみならず、BMWのドイツ本国のお客さんにも配るべき名演奏だと思います。91年といえばバブル絶頂期の芳香を放っていた怪しい時代でもありますが、この時期にこれほど深い文化の淵を見せてくれたBMWの見識を見直さざるを得ませんね。
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