作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

ハイドンとパリ/ヴァン・ワースの交響曲集

0
0
最近手に入れたアルバムをもう1枚。

VanWaas.jpg
HMV ONLINEicon

ギィ・ヴァン・ワース(Guy Van Waas)指揮のレザグレマン(Les Agrémens)の演奏によるハイドンの交響曲85番「王妃」、45番「告別」そして、クラウスの交響曲ニ長調の3曲を収めたもの。レーベルはいいプロダクションが多いRICERCARレーベル。このレーベルのアルバムは店頭で輸入盤ながら国内向けに帯や解説の訳をつけて売っていることが多いですね。値段が高いので躊躇しがちなんですが、これまで手に入れたアルバムは非常にレベルが高い演奏が多く、しかも解説の翻訳も丁寧で信頼できるもの故、そういった手間と思って、国内向けのパッケージを買っています。

このアルバムの帯に書かれたキャッチは非常に気になるもの。あんまり良くかけているキャッチなので、ちょっと紹介しちゃいましょう。

時は18世紀後半、場所はパリ - 音楽愛好家ではない一般の人々まで「歌のない音楽」の面白さに気づき始めたこの時代、オーケストラ定期演奏会の花形プログラムと言えば、まずハイドンの交響曲にほかなりませんでした。失意のうちにこの街を去った旅人モーツァルトをさしおいて、遠くオーストリアからもたらされ、パリっ子たちを熱狂させたハイドンの「噂の新作」は数あれど、終楽章で「いわくつきのソロ演奏」が次々と聴かれる「告別」はとりわけ人気が高く、マリー・アントワネットお気に入りの変ロ長調交響曲「王妃」とともに、パリのハイドンを象徴する一遍となっています。(中略)
パリの楽譜出版社が売れ行きを見込んで「ハイドン作」と偽った、北方の天才クラウスの絶妙傑作とあわせ、18世紀のパリっ子を熱狂させた「ありのままの響き」の面白さ、心ゆくまでご堪能ください。

アルバムを店頭で手に取って、このキャッチを読んだら、有無をも言わず買ってしまいます。かくゆう私ももちろん購入です(笑) 国内盤でもここまでパッケージにしっかりとしたコピーが書いてある盤はあんまりありませんね。レコード産業斜陽の現在、魅力あるコンテンツの魅力をしっかり伝えるという基本的なところが出来ているのかと問われると、特に国内については実際にはいろいろと課題もあるのではないかと思ってます。こうゆう地道なところをしっかり手間をかけているのは流石です。

私は売る側ではありませんが、音楽やCDやレコードは大好きで、なくなってしまっては困りますので、その魅力をきちんと発信していきたいとの想いからブログを書いているという面もあります。CDなどは以前から比べるとずいぶん安く手に入れられるようになりましたが、こうゆう魅力をきちんと伝えている仕事をされているところは、しっかり取り上げていかなくてはなりませんね。

アルバムのレビューに戻りましょう。収録は2008年3月、ベルギー南東部(ということはフランスに近い?)のファルニエール教会でのセッション録音。
演奏者のギィ・ヴァン・ワースははじめて聴く人。添付の解説によるとベルギーの人で、鍵盤楽器も弾く指揮者とのことですが、もともと古楽器のクラリネット奏者として活躍した人のようですね。ブリュッヘンの18世紀オーケストラ、コープマンのアムステルダム・バロック・ソロイスツ、ヘレヴェッへのシャンゼリゼ管弦楽団、ベルリン古楽アカデミーなどとそうそうたるオケに参加してきたようですね。最近になって指揮者としても活躍しているとのことです。

一方オケのレザグレマンはベルギー南部の古都ナミュールに創設された古楽器オーケストラ。設立の経緯が珍しいんですが、元々同地で活躍していた、ナミュール室内合唱団の活動が古楽の領域で評価され、それを支えるオケの設立が求められて創設されたとの経緯。メンバーもギィ・ヴァン・ワース同様、古楽シーンの実力者を集めたということです。

1曲目に置かれた85番「王妃」。一聴して精度が高く、古楽器にしては柔らかめで、作為なく自然なオーケストラの響きの美しさに打たれます。きわめて自然なテンポとフレージングで極上の音響。録音も悪くありませんね。最近のファイのような前衛的な演奏とは一線を画す、きわめてオーソドックスに響きをまとめたもの。どちらかというと、コープマンやクイケンなどのアプローチに近い感じですが、オケの柔らかい響きと丁寧なフレージングは上をいく感じですね。クラリネット奏者出身だけにフルートなどの木管の古雅な音色と息づかいすら感じさせる丁寧な扱いは見事です。テンポも重くなる部分は一切なく、オケの実力の高さが伺えます。メヌエットの入りの非常に柔らかな入り方と音楽性溢れる柔らかなアクセントの付け方、フィナーレの静かな推進力、一聴して地味な演奏でもありますが、これはいい演奏ですね。素晴しい。

3曲目の「告別」、こちらも同様、暖かみのあるオケの響きに打たれます。まさに極上の演奏。

2曲目におかれたクラウスの交響曲に長調VB143は、ハイドンの作と言われればそう聴こえなくもない、変化に富んだ古典の名曲というような曲。当時を知る上で貴重な作品でしょう。同様極上の演奏で、まさに当時のパリの聴衆の気分で聴く感じ。

評価はもちろん両曲とも[+++++]。両曲の古楽器におけるおすすめ盤として真っ先に上げるべき素晴しい演奏との評価です。アルバムの企画意図も抜群。こうゆういい仕事と出会えるのは音楽を聴く悦びのひとつですね。多くの人に聴いていただきたい名盤です。
関連記事

0 Comments

There are no comments yet.