ヌリア・リアルのオペラ挿入アリア集
今日は珍しいハイドンが他の作曲家のオペラのために書いたアリア集。

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先日手に入れてレビューしたテレサ・ベルガンサのアリア集を所有盤リストに登録したのを機に、手持ちのアルバムで未登録のものを登録しようと聴き直したもの。
ソプラノはヌリア・リアル(Nuria Rial)、メゾ・ソプラノの曲はマルゴ・オイツィンガー(Margot Oitzinger)が歌ってます。伴奏はミッヒ・ガイック(Michi Gaigg)指揮のオルフェオ・バロック管弦楽団の演奏。収録は2008年9月9日~11日、オーストリア南部グラーツの東にあるブルゲンランドのリストセンターコンサートホールでのセッション録音。
演奏を記録するために、ジャケットやらライナーノーツやらをしげしげと眺めていると、アルバムの裏面に英語で気になるコメントが! 訳すと「このレコーディングはハイドンが密かに恋慕っていたイタリア人のソプラノ歌手ルイジア・ポルッツェリのために作曲した美しいアリアの数々を収録」とあります。今一度アルバムのジャケットを見ると、”Arie per un'amante”と書いてありますが、これをMacの翻訳ウィジェットに入れると、まさに「恋人のためのアリア」ではありませんか。あわてていつもの大宮真琴さんの「新版ハイドン」を紐解いてみると、この辺りのことが詳細に記されていました。要約すると次のようになります。
エステルハーザの楽長となったハイドンにとって、妻アンナ・アロイジアとの家庭生活は無味乾燥であった。ところが、1779年にイタリア人のヴァイオリニストのアントニオ・ポルツェリとメゾソプラノ歌手のルイジア・ポルツェリの夫婦がエステルハーザにやってきた。ルイジアは典型的なイタリアのブルネットで優美な容姿だったとのこと。この時ハイドン47歳で、ルイジアは28歳下とのことなので19歳! 夫のアントニオは老年で体が弱く、ルイジアにとっても不幸な結婚。ハイドンがこのルイジアに熱心に歌唱指導したため、夫は2年で契約が終了したが、ルイジアはその後約12年間ルイジアはエステルハーザの歌手として雇われつづけたとのこと。ルイジアには2名の息子があったが2人目のアントンは1783年にエステルハーザで生まれ、ハイドンの子であるとの噂があった。ハイドンはルイジアの息子を非常にかわいがり、後年に至るまで送金したり面倒を見たとのこと。
また、ハイドンの伝記を書いたガイリンガーの記述を先の著書から引用しておきましょう。
「ハイドンが深く愛していた時期にあっては、ルイジアは彼の必要としていたものを与え、また彼の感情生活を覚醒させることによって、その発展に重要な部分を演じたのであった。もしこのイタリア女性に対する情熱が、彼の人生に新しい展望を開いたのでなかったとしたならば、壮麗さに彩られた1780年代の作品の芸術的成熟が果たして成し遂げられたかどうかは疑問である。」
まさに、ハイドンの数多くの名曲が作曲された頃、ハイドンの創造の源泉となっていたということでしょうか。
さてさて、このような背景を知って、あらためてこのアルバムのジャケットを眺めると、ヌリア・リアルの姿がルイジアと重なって見えるのは私だけでしょうか。ブルネットの髪をもつ、若くて美しい容姿。ハイドンがルイジアを迎えた年齢に私も近いせいか、ちょっぴりハイドンの気持ちがわかるような気がします。このアルバムの企画意図がようやく見えてきましたね。ついでにヌリア・リアルのウェブサイトへのリンクも張っておきましょう。
Nuria Rial - Soprano(英文)
収録曲は1曲をのぞいてすべて1779年から1792年の間に作曲されたもの。歌はソプラノとメゾソプラノ用のものがありますが、おそらくルイジアが歌うために作曲されたんでしょうね。収録曲目については上にリンクを張ったHMV ONLINEをご参照ください。
収録曲目は、まずこのアルバムの序曲という位置づけか、交響曲81番の1楽章が最初に置かれています。この次の82番以降のいわゆるパリ・セットと呼ばれる交響曲は、外国からの依頼にもとづいて作曲されたもの。ルイジアがエステルハーザにいた頃に、依頼でなく最後に作曲した曲ということでしょうか。演奏は人数の少ない古楽器オケの俊敏さがよく出た快活なもの。音が耳に刺さるような生き生きとした響きが特徴です。録音は多少デッドな印象もあるものの鮮明に各楽器をとらえた最新の録音らしい素晴しいキレ、というか、キレまくってます! 指揮者のミッヒ・ガイックも女性ですね。オケのオルフェオ・バロック管弦楽団も巧いですね。エッジをかなり明確に立てた鋭い表現が痛快です。
ヌリア・リアルの歌声は、清透そのもの。歌い方も古楽にあわせたヴィブラートをほとんどかけないもの。一流のオペラ歌手の堂々とした歌唱とは全く違う印象。年齢や声質は異なりますが、エマ・カークビーの歌い方に近いと言えば伝わりますでしょうか。先日このアルバムにもふくまれるいくつかの曲をベルガンサの名唱で聴いたばかりですが、同じ曲とは思えないほど印象が変わります。
収録曲はハイドンが他の作曲家のオペラの挿入アリアとして書いたもの。というより、ルイジアのために当時演奏されていた様々なオペラの演奏時にルイジアに歌わせようと書き加えたものなんじゃないかと思います。
前置きがだいぶ長くなっちゃいましたので、気に入った曲をいくつか上げておきましょう。
基本的に全曲オペラのアリアとして素晴しいものばかり。トラック3の「薔薇に刺がなくなったら」は2分弱の短い曲で、曲調もシンプルですが、愛しい人が歌ったらぐっとくるような美しいメロディー。続くトラック4の「あなたはご存知で」は、ハイドン特有の心温まる序奏で始まる曲。トラック10の「私は運命に見放された不幸な女」は、不思議と明るくちょっとコミカルなフレーズがぐっときます。そしてトラック12の「情け深い人は」、何度聴いても素晴しいメロディ。
評価は、歌、オケ、指揮ともに素晴しい出来で、もちろん全曲[+++++]としました。ルイジアを愛しむハイドンの気持ちがよくわかります。私も当時のハイドンに近い年齢ゆえ、個人的な感情移入もあります。ヌリア・リアルにノックアウトされたと言えば、おわかりでしょうか(笑)

先日手に入れてレビューしたテレサ・ベルガンサのアリア集を所有盤リストに登録したのを機に、手持ちのアルバムで未登録のものを登録しようと聴き直したもの。
ソプラノはヌリア・リアル(Nuria Rial)、メゾ・ソプラノの曲はマルゴ・オイツィンガー(Margot Oitzinger)が歌ってます。伴奏はミッヒ・ガイック(Michi Gaigg)指揮のオルフェオ・バロック管弦楽団の演奏。収録は2008年9月9日~11日、オーストリア南部グラーツの東にあるブルゲンランドのリストセンターコンサートホールでのセッション録音。
演奏を記録するために、ジャケットやらライナーノーツやらをしげしげと眺めていると、アルバムの裏面に英語で気になるコメントが! 訳すと「このレコーディングはハイドンが密かに恋慕っていたイタリア人のソプラノ歌手ルイジア・ポルッツェリのために作曲した美しいアリアの数々を収録」とあります。今一度アルバムのジャケットを見ると、”Arie per un'amante”と書いてありますが、これをMacの翻訳ウィジェットに入れると、まさに「恋人のためのアリア」ではありませんか。あわてていつもの大宮真琴さんの「新版ハイドン」を紐解いてみると、この辺りのことが詳細に記されていました。要約すると次のようになります。
エステルハーザの楽長となったハイドンにとって、妻アンナ・アロイジアとの家庭生活は無味乾燥であった。ところが、1779年にイタリア人のヴァイオリニストのアントニオ・ポルツェリとメゾソプラノ歌手のルイジア・ポルツェリの夫婦がエステルハーザにやってきた。ルイジアは典型的なイタリアのブルネットで優美な容姿だったとのこと。この時ハイドン47歳で、ルイジアは28歳下とのことなので19歳! 夫のアントニオは老年で体が弱く、ルイジアにとっても不幸な結婚。ハイドンがこのルイジアに熱心に歌唱指導したため、夫は2年で契約が終了したが、ルイジアはその後約12年間ルイジアはエステルハーザの歌手として雇われつづけたとのこと。ルイジアには2名の息子があったが2人目のアントンは1783年にエステルハーザで生まれ、ハイドンの子であるとの噂があった。ハイドンはルイジアの息子を非常にかわいがり、後年に至るまで送金したり面倒を見たとのこと。
また、ハイドンの伝記を書いたガイリンガーの記述を先の著書から引用しておきましょう。
「ハイドンが深く愛していた時期にあっては、ルイジアは彼の必要としていたものを与え、また彼の感情生活を覚醒させることによって、その発展に重要な部分を演じたのであった。もしこのイタリア女性に対する情熱が、彼の人生に新しい展望を開いたのでなかったとしたならば、壮麗さに彩られた1780年代の作品の芸術的成熟が果たして成し遂げられたかどうかは疑問である。」
まさに、ハイドンの数多くの名曲が作曲された頃、ハイドンの創造の源泉となっていたということでしょうか。
さてさて、このような背景を知って、あらためてこのアルバムのジャケットを眺めると、ヌリア・リアルの姿がルイジアと重なって見えるのは私だけでしょうか。ブルネットの髪をもつ、若くて美しい容姿。ハイドンがルイジアを迎えた年齢に私も近いせいか、ちょっぴりハイドンの気持ちがわかるような気がします。このアルバムの企画意図がようやく見えてきましたね。ついでにヌリア・リアルのウェブサイトへのリンクも張っておきましょう。
Nuria Rial - Soprano(英文)
収録曲は1曲をのぞいてすべて1779年から1792年の間に作曲されたもの。歌はソプラノとメゾソプラノ用のものがありますが、おそらくルイジアが歌うために作曲されたんでしょうね。収録曲目については上にリンクを張ったHMV ONLINEをご参照ください。
収録曲目は、まずこのアルバムの序曲という位置づけか、交響曲81番の1楽章が最初に置かれています。この次の82番以降のいわゆるパリ・セットと呼ばれる交響曲は、外国からの依頼にもとづいて作曲されたもの。ルイジアがエステルハーザにいた頃に、依頼でなく最後に作曲した曲ということでしょうか。演奏は人数の少ない古楽器オケの俊敏さがよく出た快活なもの。音が耳に刺さるような生き生きとした響きが特徴です。録音は多少デッドな印象もあるものの鮮明に各楽器をとらえた最新の録音らしい素晴しいキレ、というか、キレまくってます! 指揮者のミッヒ・ガイックも女性ですね。オケのオルフェオ・バロック管弦楽団も巧いですね。エッジをかなり明確に立てた鋭い表現が痛快です。
ヌリア・リアルの歌声は、清透そのもの。歌い方も古楽にあわせたヴィブラートをほとんどかけないもの。一流のオペラ歌手の堂々とした歌唱とは全く違う印象。年齢や声質は異なりますが、エマ・カークビーの歌い方に近いと言えば伝わりますでしょうか。先日このアルバムにもふくまれるいくつかの曲をベルガンサの名唱で聴いたばかりですが、同じ曲とは思えないほど印象が変わります。
収録曲はハイドンが他の作曲家のオペラの挿入アリアとして書いたもの。というより、ルイジアのために当時演奏されていた様々なオペラの演奏時にルイジアに歌わせようと書き加えたものなんじゃないかと思います。
前置きがだいぶ長くなっちゃいましたので、気に入った曲をいくつか上げておきましょう。
基本的に全曲オペラのアリアとして素晴しいものばかり。トラック3の「薔薇に刺がなくなったら」は2分弱の短い曲で、曲調もシンプルですが、愛しい人が歌ったらぐっとくるような美しいメロディー。続くトラック4の「あなたはご存知で」は、ハイドン特有の心温まる序奏で始まる曲。トラック10の「私は運命に見放された不幸な女」は、不思議と明るくちょっとコミカルなフレーズがぐっときます。そしてトラック12の「情け深い人は」、何度聴いても素晴しいメロディ。
評価は、歌、オケ、指揮ともに素晴しい出来で、もちろん全曲[+++++]としました。ルイジアを愛しむハイドンの気持ちがよくわかります。私も当時のハイドンに近い年齢ゆえ、個人的な感情移入もあります。ヌリア・リアルにノックアウトされたと言えば、おわかりでしょうか(笑)
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