作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

モーリス・アンドレのトランペット協奏曲

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今日はトランペットの巨匠、モーリス・アンドレのハイドンを取り上げましょう。

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私が手に入れたのは国内盤。現役盤とは知らずにオークションで入手。モーリス・アンドレ(Maurice André)のトランペットにリッカルド・ムーティ(Riccardo Muti)指揮のフィルハーモニア管弦楽団の演奏によるハイドンのトランペット協奏曲。収録曲目はブランデンブルグ協奏曲2番とテレマン、トレッリ、ハイドンのトランペット協奏曲の4曲。収録は1984年7月8日~10日、ロンドンのアビーロードスタジオにて。

モーリス・アンドレのトランペット協奏曲はERATOレーベルにパイヤールとの1960年代の録音がありますが、最近いろいろいい演奏を聴くようになって耳が肥えてきたせいか、今ひとつすっきりしない演奏でした。この演奏はだいぶ後の1984年の録音で、しかもリッカルド・ムーティという豪腕指揮者のサポートゆえ、力が入っているでしょうか。アンドレは1933年生まれということで、この時51歳。ムーティは1941年生まれということで、この時43歳、ムーティは写真が若いですね(笑)

ハイドンの協奏曲のはじまりのオケは柔らかな響きに包まれて、テンポも非常に落ち着いたもの。ムーティらしく古典的な均整のとれたオケの響き。ヴァイオリンのメロディーにはきちんとエッジを立てて華やかさを演出しつつも、うまい具合に力が抜けていいサポート。アンドレのトランペットは極度にレガートを利かせたような、こちらも柔らかさを狙ったもの。溶けかけのアイスクリームのような風情。入りは押さえた入りで、オケに華をもたせているような感じ。高らかに吹き抜けるというよりは弱音の響きの余韻で聴かせるような、巨匠ならではの余裕。ふつうここまで押さえた演奏は逆にできませんね。1楽章のカデンツァは滑らかなメロディを基調にした音階の痛快さを表現したもの。

2楽章は遥か昔の思い出を語るようなデリケートな響きから入ります。トランペットもそれに合わせて情感を醸し出します。あえて平板な演奏に近いこの演出はムーティの個性が強く反映しているような気がします。ちょっとロマンティックに過ぎると聴こえるかもしれませんね。

3楽章は押さえた序奏の1フレーズ目から2フレーズ目に入るところで雄々しい雄叫び炸裂ですね。ムーティの本領発揮でしょう。ここに焦点をあわせていたんですね。アンドレのトランペットはスタッカート気味にアクセントをつけたフレージング。ムーティの設計による大神殿の伽藍を飾る装飾のようなトランペットの位置づけ。巨匠の真の余裕を見た感じですね。協奏曲なのに最後はオケの大音響が聴き所となりました。

協奏曲の演奏なのに、聴かせどころはオケという異色の演奏。トランペットも素晴しいんですが脇役のような控えめな演奏。演奏を聴き終わってあらためてジャケット写真を見ると、ムーティの微笑みは、オレが聴かせてやるとの自信に溢れた表情に、そしてアンドレの自己顕示欲0の無邪気な笑みは、才能ある若手指揮者とのセッションを純粋に楽しむ巨匠の余裕の表情にそれぞれ見えてしまいます。

この演奏の評価は、協奏曲としてみると[++++]となりますでしょうか。私は好きな演奏ですが、万人向けには一つ+を減らしておいた方がいいとの配慮です。

協奏曲を聴く楽しみの幅をひろげるような異色ながら良い演奏といえるでしょう。
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