フリッツ・ライナーの交響曲集
このところ交響曲に戻ってます。今日はクレンペラーの時計つながりでライナーの時計など。

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フリッツ・ライナー(Fritz Reiner)指揮のシカゴ交響楽団とフリッツ・ライナー交響楽団の演奏で、ハイドンの交響曲88番、95番、101番「時計」の3曲。もともとはRCAが録ったものをTESTAMENTレーベルが再発したものでしょう。録音は88番のみがシカゴ交響楽団の演奏で、1960年2月6日、シカゴオーケストラホールでの録音。その他が1963年9月13、16、18、29日、ニューヨークのマンハッタンセンターでの録音。何れもセッション録音です。
フリッツ・ライナーは1888年12月19日ハンガリーのブダペストに生まれたユダヤ系の指揮者。このところ取り上げているクレンペラーやアンセルメと同世代ですが、クレンペラーより3つ下ということになります。この演奏のころは70歳代ですが、亡くなったのが1963年の11月15日ですので、95番と時計は亡くなる2ヶ月前の最晩年の録音ということになります。Wikipediaなどによればライナーは88番を録音した1960年に心臓発作で一度たおれており、その後95番と時計を録音した1963年にニューヨークのメトロポリタン歌劇場で「神々の黄昏」の公演準備中に亡くなったので、ハイドンの演奏はライナーにとって鬼門だったのかも知れませんね。
1曲目のシカゴ交響楽団との88番。入るや否や分厚いシカゴ響の素晴しい精度の音響! 流石魔術師ライナー、いきなり全力投球ですね。元の録音もいいのでしょうが、TESTAMENTの復刻した音響も素晴しい。とても1960年の録音とは思えません。若干デッドで低音が薄い感じがしますが、クッキリ感を際立たせる方向の調整だと思います。1楽章の弦の速いパッセージの充実ぶりは素晴しいものがあります。インテンポでザクザク切り込む感じですが、ライナーらしく流線型のスタイリッシュさも兼ね備えています。
2楽章のラルゴは一転、クッキリさをたもちながらゆったり感も十分な展開。途中から楔のようにはいる強音は迫力満点で楽章を引き締めます。後半の鳥の鳴き声のように入るオーボエ?をちょっと遅らせて鳴らすなどの粋な演出も効いて、なかなかの出来。
3楽章のメヌエットはあえて小節をきかせて舞曲のリズムの面白さを浮き彫りに。曲の本質を良くふまえた考えられたアプローチですね。太い筆なのに非常に繊細な輪郭を描いているところが常人とは異なるレベル。
フィナーレは、非常に優しく入る開始の部分が鳥肌が立つような秀逸な解釈。いきなり引き込まれます。クレッシェンドして勢いをましたり、引いたりの波のような緻密な演出。途中、フレーズの終わりを荒々しく強調したり、テンションを落としたり、ライナーによってハイドンの楽譜がなんと豊かな表情を魅せるのでしょう。素晴しいフィナーレですね。88番は群を抜いた出来です。
つづく95番。オケが変わってフリッツ・ライナー交響楽団。収録場所もニューヨークにかわり、音響は残響豊かなゆったりした響きになり、低音も豊かに。88番の鋼のようなテンションから、力のぬけた開放的な演奏に変わりました。冒頭からの流れはライナー流の流麗さを感じさせますが、前曲で見せた緻密なコントロールというよりは、手綱を少し緩めてオケに任せて鳴らしているという印象。テンポは若干遅めでオーソドックスな解釈ですが、1楽章の最後の1フレーズを極端にテンポを落として起承転結を鮮明に表現するようなアクセントをつけます。
2楽章のアンダンテ・カンタービレはかなり遅めのテンポ。柔らかいフレージングで進めますが、とはいってもライナーのコントロールは行き渡っていて、所々に閃きを感じるアクセントがつけられて、やはり普通の演奏とは違います。
3楽章のメヌエットは音を短く切ったような表現を基調に、レガートを強調したり、細かい表現の対比で聴かせる玄人向けの演奏。これは面白いですね。途中で入るピチカートに乗ったチェロのソロも聴かせ上手。分厚い強奏の魅力をたっぷり楽しめます。
フィナーレは88番と同様、力をぬいた爽やかな入りの演出が巧み。絶妙の入りですね。ハイドンもこれほど爽やかなフレージングを想像だにしなかったでしょう。意外と速くないテンポでじっくり複雑に入り組んだ楽譜を鮮明に描き出している感じです。最後はライナー流にテンポをぐっと落として終わります。
最後は時計。1楽章の序奏は遅めのテンポでじっくり描き出していきます。主題の提示以降は素晴しい覇気溢れるオケのショーケースのような展開。この曲本来の素晴しい構成感を3Dテレビで見るような見通しのよい演奏。オケの精度は88番の手兵シカゴ響には及びませんが、ライナーのコントロールによる構成感の表現は見事の一言。盛り上がりますね。
2楽章はかなりゆっくりとしたテンポの設定。時計という曲のモチーフからすると遅すぎるきらいはありますが、ライナーが表現しようとしたのはヴァイオリンによって奏でられる旋律のとびきりの美しさでしょう。途中からの展開部も遅めのテンポでじっくり描きます。
3楽章のメヌエット。これまでの2曲とくらべると演出は若干あっさりしたものと感じます。溜やコントラスト、アクセントをあしらって創意を尽くすというより、楽譜に忠実に演奏することを優先しているよう。このアルバムの中では最もポピュラーなハイドンの交響曲故、小細工無用との判断なんでしょうか。
フィナーレはライナー特有のデリケートにおさえた優しい入りですが、ほどなく3D映像のような見事な構成感が浮き彫りになります。アルプスの雄大な山脈を空撮で眺めるがごとき素晴しい気分になりますね。これがシカゴ響の覇気溢れる音響で聴けたら卒倒確実ですね! いやいや、素晴しいフィナーレです。
評価はもちろん3曲とも[+++++]。正直88番は[++++++]を進呈すべき出来だと思います。ライナー/シカゴ響の金字塔といっても過言ではないでしょう。クレンペラーやセルなど名実ともにハイドンの名演奏とされているアルバムと比べるとライナーのハイドンはあまり知名度がある訳ではありませんが、これは素晴しい演奏ですね。ブログで取り上げるときには背景や情報を調べた上で何度か聴いた上で記事にしますが、今回あらためて聴き直して、ライナーのハイドンの素晴しさを再発見。
さて、本日は台風が関東直撃コースで北東にコースをとるなか、これからサントリーホールにアーノンクールの天地創造を聴きに出かけます。室内のコンサートゆえ中止とはならないでしょうが、帰りの電車が止まらないか若干心配でもありますね。コンサートレポートは今夜か明日にでも記事にする予定です。
それから明日で10月も終わりですので、先月より始めたHaydn Disk of the Monthの2回目の選考もしなくてはなりません。今月はどの盤が栄光に輝きますでしょうか!

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フリッツ・ライナー(Fritz Reiner)指揮のシカゴ交響楽団とフリッツ・ライナー交響楽団の演奏で、ハイドンの交響曲88番、95番、101番「時計」の3曲。もともとはRCAが録ったものをTESTAMENTレーベルが再発したものでしょう。録音は88番のみがシカゴ交響楽団の演奏で、1960年2月6日、シカゴオーケストラホールでの録音。その他が1963年9月13、16、18、29日、ニューヨークのマンハッタンセンターでの録音。何れもセッション録音です。
フリッツ・ライナーは1888年12月19日ハンガリーのブダペストに生まれたユダヤ系の指揮者。このところ取り上げているクレンペラーやアンセルメと同世代ですが、クレンペラーより3つ下ということになります。この演奏のころは70歳代ですが、亡くなったのが1963年の11月15日ですので、95番と時計は亡くなる2ヶ月前の最晩年の録音ということになります。Wikipediaなどによればライナーは88番を録音した1960年に心臓発作で一度たおれており、その後95番と時計を録音した1963年にニューヨークのメトロポリタン歌劇場で「神々の黄昏」の公演準備中に亡くなったので、ハイドンの演奏はライナーにとって鬼門だったのかも知れませんね。
1曲目のシカゴ交響楽団との88番。入るや否や分厚いシカゴ響の素晴しい精度の音響! 流石魔術師ライナー、いきなり全力投球ですね。元の録音もいいのでしょうが、TESTAMENTの復刻した音響も素晴しい。とても1960年の録音とは思えません。若干デッドで低音が薄い感じがしますが、クッキリ感を際立たせる方向の調整だと思います。1楽章の弦の速いパッセージの充実ぶりは素晴しいものがあります。インテンポでザクザク切り込む感じですが、ライナーらしく流線型のスタイリッシュさも兼ね備えています。
2楽章のラルゴは一転、クッキリさをたもちながらゆったり感も十分な展開。途中から楔のようにはいる強音は迫力満点で楽章を引き締めます。後半の鳥の鳴き声のように入るオーボエ?をちょっと遅らせて鳴らすなどの粋な演出も効いて、なかなかの出来。
3楽章のメヌエットはあえて小節をきかせて舞曲のリズムの面白さを浮き彫りに。曲の本質を良くふまえた考えられたアプローチですね。太い筆なのに非常に繊細な輪郭を描いているところが常人とは異なるレベル。
フィナーレは、非常に優しく入る開始の部分が鳥肌が立つような秀逸な解釈。いきなり引き込まれます。クレッシェンドして勢いをましたり、引いたりの波のような緻密な演出。途中、フレーズの終わりを荒々しく強調したり、テンションを落としたり、ライナーによってハイドンの楽譜がなんと豊かな表情を魅せるのでしょう。素晴しいフィナーレですね。88番は群を抜いた出来です。
つづく95番。オケが変わってフリッツ・ライナー交響楽団。収録場所もニューヨークにかわり、音響は残響豊かなゆったりした響きになり、低音も豊かに。88番の鋼のようなテンションから、力のぬけた開放的な演奏に変わりました。冒頭からの流れはライナー流の流麗さを感じさせますが、前曲で見せた緻密なコントロールというよりは、手綱を少し緩めてオケに任せて鳴らしているという印象。テンポは若干遅めでオーソドックスな解釈ですが、1楽章の最後の1フレーズを極端にテンポを落として起承転結を鮮明に表現するようなアクセントをつけます。
2楽章のアンダンテ・カンタービレはかなり遅めのテンポ。柔らかいフレージングで進めますが、とはいってもライナーのコントロールは行き渡っていて、所々に閃きを感じるアクセントがつけられて、やはり普通の演奏とは違います。
3楽章のメヌエットは音を短く切ったような表現を基調に、レガートを強調したり、細かい表現の対比で聴かせる玄人向けの演奏。これは面白いですね。途中で入るピチカートに乗ったチェロのソロも聴かせ上手。分厚い強奏の魅力をたっぷり楽しめます。
フィナーレは88番と同様、力をぬいた爽やかな入りの演出が巧み。絶妙の入りですね。ハイドンもこれほど爽やかなフレージングを想像だにしなかったでしょう。意外と速くないテンポでじっくり複雑に入り組んだ楽譜を鮮明に描き出している感じです。最後はライナー流にテンポをぐっと落として終わります。
最後は時計。1楽章の序奏は遅めのテンポでじっくり描き出していきます。主題の提示以降は素晴しい覇気溢れるオケのショーケースのような展開。この曲本来の素晴しい構成感を3Dテレビで見るような見通しのよい演奏。オケの精度は88番の手兵シカゴ響には及びませんが、ライナーのコントロールによる構成感の表現は見事の一言。盛り上がりますね。
2楽章はかなりゆっくりとしたテンポの設定。時計という曲のモチーフからすると遅すぎるきらいはありますが、ライナーが表現しようとしたのはヴァイオリンによって奏でられる旋律のとびきりの美しさでしょう。途中からの展開部も遅めのテンポでじっくり描きます。
3楽章のメヌエット。これまでの2曲とくらべると演出は若干あっさりしたものと感じます。溜やコントラスト、アクセントをあしらって創意を尽くすというより、楽譜に忠実に演奏することを優先しているよう。このアルバムの中では最もポピュラーなハイドンの交響曲故、小細工無用との判断なんでしょうか。
フィナーレはライナー特有のデリケートにおさえた優しい入りですが、ほどなく3D映像のような見事な構成感が浮き彫りになります。アルプスの雄大な山脈を空撮で眺めるがごとき素晴しい気分になりますね。これがシカゴ響の覇気溢れる音響で聴けたら卒倒確実ですね! いやいや、素晴しいフィナーレです。
評価はもちろん3曲とも[+++++]。正直88番は[++++++]を進呈すべき出来だと思います。ライナー/シカゴ響の金字塔といっても過言ではないでしょう。クレンペラーやセルなど名実ともにハイドンの名演奏とされているアルバムと比べるとライナーのハイドンはあまり知名度がある訳ではありませんが、これは素晴しい演奏ですね。ブログで取り上げるときには背景や情報を調べた上で何度か聴いた上で記事にしますが、今回あらためて聴き直して、ライナーのハイドンの素晴しさを再発見。
さて、本日は台風が関東直撃コースで北東にコースをとるなか、これからサントリーホールにアーノンクールの天地創造を聴きに出かけます。室内のコンサートゆえ中止とはならないでしょうが、帰りの電車が止まらないか若干心配でもありますね。コンサートレポートは今夜か明日にでも記事にする予定です。
それから明日で10月も終わりですので、先月より始めたHaydn Disk of the Monthの2回目の選考もしなくてはなりません。今月はどの盤が栄光に輝きますでしょうか!
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