作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

白井光子の「ナクソスのアリアンナ」

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今日は久しぶりに歌曲を取り上げましょう。

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HMV ONLINEicon / amazon / TOWER RECORDS

白井光子のソプラノによるハイドン、モーツァルト、ペルゴレージの歌曲集。ハイドンは「ナクソスのアリアンナ」と英語によるカンツォネッタ集から6曲、モーツァルトは「エクスルターテ・ユビラーテ」、ペルゴレージは室内カンタータ「オルフェオ」。演奏はハイドンのピアノが元旦那さんのハルトムート・ヘル(Hartmut Höll)、その他がハンス・コッペンブルク(Hans Koppenburg)指揮のフランクフルト室内管弦楽団。ハイドンの録音は1983年4月24~26日、フランクフルトのフェストブルク教会でのセッション録音。レーベルはカメラータ・トウキョウです。

このアルバムは1999年発売のようですが、手に入れたのは最近。ハイドンの歌曲は好きなジャンルなので、見つけるたびに手に入れてますが、日本人の演奏は滅多にお目にかかれません。

白井光子さんは長野県生まれのメゾ・ソプラノでリリースされているアルバムのジャケットやネットで見られる写真からすると結構なお年のはず。日本人の歌手のなかではリートの第一人者でしょう。武蔵野音楽大学からシュトゥットガルト音楽大学に渡り、1973年からこのアルバムでも伴奏を務めるヘルムート・ヘルとコンビを組んで活動。様々な音楽賞を受賞し、日本では2008年紫綬褒章を受賞と華々しい経歴ですが、最近では難病として知られるギラン・バレー症候群にかかって活動を休止しているとのこと。

私も顔と名前は知ってはいましたが、最近の状況までは知りませんでした。2008年の5月にはラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポンに登場したとのことですが、その時のリアルな様子が下記のブログに書かれていますので是非ご覧ください。

ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン2010 & オペラとクラシックコンサート通いのblog:5/5 ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン2008 白井光子リサイタル

当日の様子が手に取るようにわかりますね。私は本人が歌いたかった、もしくはピアノのヘルさんが本人を最後にお客さんの前に立たせたかったんだと思います。単独のコンサートでは歌えない体調でお客さんを呼ぶことは難しいですが、多くのコンサートに足を運ぶよう仕立てられたラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポンしか白井さんがステージで残された力でシューベルトを口ずさむ場はないかもしれません。病は残酷なものですが、これも運命なのでしょう。

このアルバムの録音は、今から27年も前の、気力溢れる白井さんとヘルさんの演奏。私は白井さんの演奏をちゃんと聴いたことがありませんでしたので、このアルバムに収められたハイドンの歌を聴いて、その素晴しさにビックリしちゃいました。

1曲目はハイドン歌曲の傑作、「ナクソスのアリアンナ」(XXVIb:2) この曲は、前記事で取り上げたモーツァルトがハイドンにハイドン・セットを献呈した1785年の4年後の1789年頃の作曲。交響曲ではパリ・セットを書き終え、翌年からロンドン旅行に出かける、ハイドンが最も充実していたであろう頃の作品。曲の構成は前の記事をご参照ください。

ハイドン音盤倉庫:アンナ・ボニタティバスのオペラアリア集(つづき)

まず、耳を奪われるのが語りかけるように詩的な表現のピアノ。いきなり惹き付けられます。白井光子の声はヴィブラートのよく効いたよく通るリート向きの声。おそらく声量的にはオペラほど大きくないでしょうが、ほどほどの厚みもあっていい感じです。最初のレシタティーヴォも劇性が巧く表現できていますね。つづくアリアはピアノの優し響きから始まり、堂々とした声の楔が打ち込まれるような切々とした熱唱。ピアノとの間のやり取りが見事。ふたたびレシタティーヴォで雄弁なピアノの魅力を堪能できます。最後のアリアは絶唱ですね。この曲を聴くたびに一番最後の和音が長調に転じる工夫に唸らされます。この転調でこの歌がドラマであることを知らされる気がします。ちょうどドン・ジョバンニの一番最後の場が地獄落ちから一転、明るい調子でドラマが結ばれるのと似た効果があるような気がします。

2曲目から7曲目までは英語によるカンツォネッタ集から、「人魚の歌」(XXVIa:25)、「回想」(XXVIa:26)、「誠実」(XXVIa:30)、「さすらい人」(XXVIa:32)、「霊の歌」(XXVIa:41)、「おお美しい声よ」(XXVIa:42)の6曲。こちらも「ナクソスのアリアンナ」同様いい演奏です。タイプは違いますが、エリー・アメリングとデムスのコンビによる歌曲集と同様、歌曲を聴く悦びを存分に味わえる名演だと思います。

評価は白井光子の歌とヘルのピアノの双方、全曲[+++++]としました。

白井光子さんは現在どうしていることやら。ご健康を祈るばかりですね。
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