グリラー四重奏団の鳥(Op.33 No.3)

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このアルバムは最近Yahooオークションで手に入れたもの。廃盤ものかと思いきや調べたところ現役盤でした。
グリラー四重奏団によるハイドンとモーツァルトの弦楽四重奏曲集。収録曲目は録音は収録順にモーツァルトの弦楽四重奏曲14番(K.387)、ハイドンの弦楽四重奏曲Op.33 No.3「鳥」、モーツァルトの弦楽四重奏曲15番(K.421)の3曲。ハイドンの録音は1946年12月12日。その他の録音も1946年から47年にかけて。
ハイドンがこの「鳥」を含むロシア四重奏曲を完成させたのが1781年。ハイドンに大きな影響を受けたモーツァルトがこのアルバムに含まれる2曲を含む、いわゆるハイドン・セットを作曲したのが1783年から84年頃。この辺りの経緯は下記に詳しいのでご参照ください。
Wikipedia:ハイドン・セット
モーツァルトはハイドン・セットをハイドンに献呈し、ウィーンの自宅に招いて聴かせているんですね。お互いにその真の才能を知る者同志の友情を物語るエピソードですね。
グリラー四重奏団は1931年から1963年頃まで活動していたイギリスの弦楽四重奏団。メンバーはヴァイオリンがシドネイ・グリラー(Sidney Griller)、ジャック・オブライエン(Jack O'brien)、ヴィオラがフィリップ・バートン(Philip Burton)、チェロがコリン・ハンプトン(Colin Hampton)の4名。
レーベルは古い録音を高音質で復刻することで知られるDUTTON。ジャケットのDUTTONのロゴが誇らしげですし、ジャケットもコレクション欲をかき立てるもの。同じシリーズで「十字架上のキリストの最後の七語」もあり、こちらは既に所有していました。
演奏はまず1946年という戦後直後という録音年代が信じられないほど鮮明かつ厚みもあるいい音に驚かされます。1楽章は冒頭から非常に緊密な構成感を感じさせる演奏。印象的なのは第1ヴァイオリンの鮮明な縁取りと、チェロが強めのメリハリで積極的にリードしているように聴こえること。
2楽章のスケルツォは、チェロがかなり速めのテンポで入り、腰高なまま前半部をささっとこなします。途中からヴァイオリン同士の印象的な掛け合いをクッキリ浮かび上がらせ、再度チェロがささっとこなし、あっという間に終了。
3楽章のアダージョはじっくりと味わい深い展開。古雅な音色もあって弦楽四重奏曲の醍醐味を感じるすばらしいフレーズ。この曲の白眉。ゆったりと音楽が流れる至高の瞬間ですね。
フィナーレは快速に入り、ヴァイオリンの隈取りが見事でハイドン特有のフィナーレの複雑に入り組む旋律の面白さをクリアに表現。フレーズのひとつひとつが速めのテンポにもかかわらず鮮明に描かれて曲の魅力を十全に伝えています。
前後におかれたモーツァルトの弦楽四重奏曲はハイドンセットの1番と2番。こちらの演奏も見事。並べて同じ演奏者の演奏を聴くと、モーツァルトの曲の方が香りがあるというか色彩感があるように聴こえますね。逆にハイドンの曲は緊密な構成感と階調豊かなモノクロームのオリジナルプリントのような凛々しい印象がありますね。モーツァルトがハイドンに捧げた曲に挟まれたハイドンの四重奏曲もいいものですね。好企画というべきでしょう。
評価はもちろん[+++++]。秋の夜長に絶好の一枚ですね。


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