作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

ヘルマン・バウマンのホルン協奏曲集

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昨日はほんとはスクロヴァチェフスキ/読売日響のブルックナーを池袋に聴きにいくはずだったんですが、仕事が入ってしまい、知人にチケットを譲っちゃいました。スクロヴァ爺がまた爆演だったんでしょうね。行かれた方のレビューでも読んで余韻を楽しみたいと思います。

レビューの方は前記事に引き続きPHILIPSレーベルの古いアルバムつながりで下記の盤を取り上げました。

BaumannHorn.jpg

ヘルマン・バウマン(Hermann Baumann)のホルンによる、ハイドンのホルン協奏曲集。ホルン協奏曲1番VIId:3、ホルン協奏曲2番VIId:4、2つのホルンのための協奏曲VIId:2、ハイドンと同時代の作曲家ポコーニー(Pokorny)のホルン協奏曲の4曲を集めたもの。演奏はアイオナ・ブラウン(Iona Brown)指揮のアカデミー室内管弦楽団(Academy of St. Martin-in-the-Fields)で、1988年2月のセッション録音。

バウマンのホルン協奏曲2曲は、他のハイドンの協奏曲と合わせた廉価盤で持っていたんですが、オリジナルのアルバムには珍しい2つのホルンのための協奏曲VIId:2が含まれているため、最近入手したものです。廉価盤の方がちょっと味気ないジャケットだったんですが、こちらの方は暗闇からバウマンの思慮深く彫りも深い意味ありげな姿が浮かび上がるなかなか迫力あるジャケットデザインで、コレクションに加えるべきとの判断から入手しました。

Wikipediaなどで調べたところハイドン作曲のホルン協奏曲(可能性のある曲も含む)は、知られているだけで5曲あります。

VIId:1 コルノ・ダ・カッチャ協奏曲 ニ長調(1765)紛失
VIId:2 2つのホルンのための協奏曲 変ホ長調(作曲年不明)偽作?
VIId:3 ホルン協奏曲第1番 ニ長調(1762)
VIId:4 ホルン協奏曲第2番 ニ長調(1781以前)偽作?
2つのホルンのための協奏曲 変ホ長調(1784以前?)偽作の可能性高い

一番有名というか演奏されることが多いのがホルン協奏曲第1番。作曲が1762年ですのでハイドンがアイゼンシュタットのエステルハージ家の副楽長に就任してすぐで、パウル・アントン・エステルハージ侯爵が亡くなった年のもの。2番は3楽章の類似性から弟ミヒャエル・ハイドンの作の可能性があるなど指摘があります。私の所有している録音も以前赤いジャケットの怪しいアルバムとして取り上げたクレヴェンジャー盤とこのバウマン盤のみ。2つのホルンのための協奏曲は1959年に筆写譜が発見されてハイドン作と思われたが認められなかったもの。こちらもパイヤールの指揮したERATO盤とバウマン盤のみ。

ということで、ハイドン作と確実に判明しているのはホルン協奏曲1番のみなんですね。

さて、第1番から。オケはロストロポーヴィチのチェロ協奏曲の名サポートで記憶にのこるアイオナ・ブラウン指揮のアカデミー室内管弦楽団。非常に軽やかかなリズムによるすがすがしい始まり。オケの鮮度が高く非常にキレがいい感じ。バウマンのホルンはそのオケに乗って、こちらも軽々と吹いていきます。よく聴くとバウマンのホルンはリズムが非常に正確で、重くなく、響きがよくコントロールされた模範的な演奏。こうした演奏は相当な技術がないと難しいのでしょう。オケのキレに合わせてホルンが軽々と進む痛快さ。1楽章のカデンツァは腕試し的にさらりとこなします。
2楽章はブラウンがギアチェンジ。非常に繊細にオケをコントロール。始まったとたんから素晴しい緊張感。バウマンのホルンは音量のコントロール、フレージングともに絶妙の極み。特に弱音のコントロールは見事の一言です。この曲の特徴であるホルンの低音部の魅力的なメロディーは、先日取り上げたデニス・ブレインが図太い低音の迫力で聴かせたのとは異なり、絶妙の音量コントロールで聴かせます。素晴しいテクニックですね。録音が鮮明な分純粋に響きの美しさも堪能できます。2楽章のカデンツァはバウマンの絶妙なテクニックによるホルン素晴しい響きを楽しめます。
3楽章はオーケストラの色彩感が際立ちます。美しい弦楽器の合奏と推進力。ホルンは再び軽々とメロディーをトレースしてハイドン特有の3楽章の複雑な構成をクリアに描いていきます。速いパッセージも滑かにこなしていきます。ホルンとオケが一体となった素晴しいフィナーレですね。最後のカデンツァはバウマンのテクニックが存分に発揮された素晴しい仕上がりです。

続いて第2番。演奏は1番の素晴しい質を保ってますが、やはり曲想が少々単調に感じられます。ハイドンの作曲かどうかの真贋を見定める能力も知識も立場もありませんが、耳に入る音楽の要素にはいつものハイドンの閃きのつみ重ねというよりは、単純なメロディーの組み合わせに聴こえてしまいます。演奏はバウマンの素晴しいホルンのメロディーを純粋に楽しめます。
2楽章はバウマン自身による本アルバムの解説に「宝石のよう」と書かれているように、短調の切々としたメロディーが美しい曲。打って変わって3楽章明るメロディーの曲。朗々たるホルンの響きを楽しめます。最後のカデンツァはホルンの音色の魅力のショーピースのような仕上がり。

最後は2つのホルンのための協奏曲。第2ホルンはティモシー・ブラウン(Timothy Brown)が担当。この曲は発見当時はハイドンの曲ということで話題となったようですが、その後の研究でハイドン作曲とまでは認められなかったようですね。ロビンス・ランドンの研究ではロセッティかエッティンゲン=ワーランシュタイン家の音楽家の一人の作品と推測されているとのことです。
曲は2本のホルンの掛け合いというか、響きの重なりを楽しむ曲。序奏はモーツァルトの曲といったら疑いようのないような流麗なもの。美しい序奏にホルンが乗ってきますが、2本のホルンによる響きは絶妙な調和で非常に美しいですね。ホルンという楽器の音色は1本でも美しいですが複数のホルンの音の重なりもまた違った美しさを感じさせますね。
2楽章はこの曲も短調のうら悲しいメロディーが美しい曲。3楽章は冒頭のタラタッタッタッターというメロディーが楽章全体の基調となる展開。オケとホルンがタラタッタッタッターの応酬。
全体の曲調もハイドンの曲とはちょっと異なる印象に聴こえます。

評価はホルン協奏曲1番が[+++++]、その他が[++++]としました。
この頃のPHILIPSのプロダクションは素晴しいものが多いですね。音楽産業全盛期の栄華が感じられます。1枚1枚の素晴しい完成度と、PHILIPSの自然な録音の素晴しさが堪能できます。このオリジナルアルバムが現在廃盤なのは残念なところ。中古で見つけられた際には見逃すべきではありませんね。
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