作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

ルドルフ・ケンペのロンドン

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今日はHMV ONLINEから到着したばかりの1枚。新譜ではなく私が最近注文しただけなんですけどね。

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おなじみBBC LEGENDSから、ルドルフ・ケンペ(Rudolf Kempe)指揮のBBC交響楽団の演奏でハイドンの交響曲104番「ロンドン」とブリテンの「ピーター・グライムズ」より4つの海の間奏曲、ショスタコーヴィチの交響曲第1番の3曲を収めたアルバム。収録はハイドンが1975年10月8日、ロンドンのロイヤルフェスティヴァルホールでのライヴ収録で、拍手入り。その他の演奏は別の日のもの。

ルドルフ・ケンペは1910年ドレスデンで生まれ、1976年に66歳目前で肝臓がんで急逝とのこと。ということはこの演奏は亡くなる前年の録音。ケンペは1950年に40歳でドレスデン・シュターツカペレの音楽監督になり、その後、バイエルン国立歌劇場、メトロポリタン歌劇場、ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団、チューリッヒ・トーンハレ管弦楽団、ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団など世界の名だたるオーケストラの音楽監督や主席指揮者などを歴任。そしてこのアルバムのハイドンの演奏の年、1975年にBBC交響楽団の常任指揮者に就任しています。

ケンペと言えば私はドレスデン・シュターツカペレとのリヒャルト・シュトラウスの管弦楽曲集ですね。分厚いオケの音色と圧倒的な存在感。それからミュンヘン・フィルとのベートーヴェンの交響曲全集。オーソドックスなベートーヴェンの全集として愛聴しました。厚い響きと丹念なオーケストラコントロールが印象に残っています。

さて、ケンペが最晩年に指揮するロンドンは如何なる演奏でしょうか。

1楽章は序奏の金管が少し目立ちすぎる嫌いがありますが、弦はケンペ独特の厚みと柔らかみを持つ丹念なフレージング。録音は残響がかなり多めでオケの実体感が少々薄めながら、ぼやけたところもなく鑑賞には十分でしょう。テンポが上がってからは推進力を保った安定感溢れる演奏。聴き進むうちにヴァイオリンパートの響きの美しさを際立たせようと言う意図があるように感じるようになります。ケンペの手にかかるとロンドンの楽譜から、非常に安定感もあり、フレーズの美しさも感じられる名曲の定番演奏のような見事な展開が自然に生み出されていくようです。1楽章は端正なギリシャ建築を見るような優美さと安定感を感じます。
2楽章のアンダンテもヴァイオリンパートの美しさが際立ちます。フレーズを非常に滑らかにつなげていくところ、さっぱりしながら味わい深いテンポ感、情感のこもったフォルテッシモなど、最晩年のケンペの面目躍如といったところ。それまでの素晴しい経歴を裏付けるような見事なコントロールですね。タイプはちょっと異なりますが、長生きしていたらジュリーニのような存在になったんじゃないかと想像してます。ドイツ的かイタリア的か、音響的か哲学的かという差はありますが、音を磨き込んで聴かせるスタイルには共通したものもありますね。
3楽章のメヌエット。意外と緻密な展開。大きくざっくりいくかと思いきや、フレーズのコントロールも緻密にこなし、リズムもしっとり感のある優しい感じ。次の音に入る瞬間、オケ全員が息を合わせてすっと入るような空気感を感じます。
そしてフィナーレ。速いパッセージにも綺麗な陰影を感じさせるところが流石です。フィナーレもオケは乱れを一切みせず、ケンペのコントロールは見事の一言。素晴しいフィナーレです。

全体にフレージング、デュナーミクのコントロールが行き届いた素晴しい演奏。このコントロールの利き渡り方と柔らかくメロディーの美しさを際立たせる方向性は、今で言えばヤンソンスが受け継いでいるような気がします。

評価は演奏だけなら[+++++]なんですが、1975年のライヴとしては若干聴き劣りがするということで、[++++]としました。ただ、ケンペの丹念な演奏によってロンドンが聴ける悦びは大きく、ハイドンの交響曲の歴史的な演奏の一つとして私たちの記憶にのこる演奏だと思います。
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