アンドレアス・シュペリングのカンタータ集
今日は、アーノンクールのハルモニーミサ盤に含まれていたカンタータのところで触れたシュペリングのアルバムを取り上げておきましょう。

上が私の手元にあるアルバム。

HMV ONLINE
こちらはパッケージをあらためた現行盤。harmonia mundiのパッケージ改訂にはいろいろ背景があるんでしょうが、リリース当初のパッケージの美しさは捨て難いもの。個人的には上のデザインの方が購買意欲が湧きます。
アルバムは「エステルハージ家のためのカンタータ集」と題され、3曲のカンタータと交響曲12番の4曲を収めたもの。何れも1763年から64年にかけて作曲されたもの。ハイドンは1732年3月31日生まれですので30代に入ったばかり。このころハイドンはエステルハージ家の副楽長の立場としてエステルハージ家のために数々の作品を書いています。
収録曲目は収録順に次のとおり。
・祝賀カンタータ「目覚めよ、我を信ずる者たち」XXIVa:2(1763年12月10日ニコラウス・エステルハージ侯爵の命名祝日のために作曲)
・祝賀カンタータ「主君の幸運の帰還を祝い」XXIVa:3(1764年12月6日ニコラウス・エステルハージ侯爵の旅行帰還祝賀のために作曲)
・祝賀カンタータ「今やいかなる疑いが」XXIVa:4(1764年12月6日ニコラウス・エステルハージ侯爵の命名祝日のために作曲)
・交響曲第12番(1763年作)
演奏はアンドレアス・シュペリング(Andreas Spering)指揮のカペラ・コロニエンス(WDR)、合唱はケルン声楽アンサンブル、ソロはソプラノがスンハエ・イム(Sunhae Im)、ヨハンナ・ストイコヴィチ(Johanna Stojikovic)、テノールがマックス・チョレク(Max Ciolec)。交響曲のみ指揮がニコラス・クレーマー(Nicholas Kraemer)の指揮。
シュペリングは私のお気に入りの指揮者。古楽器オケによるハイドンの演奏がいろいろリリースされていますが、どれも名演。古楽器の音色を生かしたさっぱりとした表現が特徴。楽譜を忠実に演奏するだけのように見えますが、爽やかなアクセントによって爽快感を特徴とした演奏が多いですね。古楽器の演奏の一つの理想型だと思ってます。シュペリングの演奏だとハイドン曲自体を当時の響きで純粋の楽しめるような気がします。
カンタータとは本来、単声または多声のための器楽伴奏付の声楽作品のこと。このアルバムに収録された3曲のカンタータは、1762年に兄パウル・アントン・エステルハージ侯爵が亡くなり、弟のニコラウス候が侯爵を継いだばかりの時期に、その侯爵を讃えるために作曲した一連の声楽作品ということでしょう。
これらはハイドンがエステルハージ家の副楽長としてのオフィシャルな仕事で作曲したもの。今で言えば宮内庁楽部が天皇家の公式行事のための祝賀曲を作曲したというようなものでしょう。当時の祝賀行事の華やかさが想像できますね。ハイドン自身も自分の曲が250年近くを経て、CDとなって音楽ファンに聴かれることを想像だにしなかったことでしょう。
1曲目の「目覚めよ、我を信ずる者たち」XXIVa:2は6部構成、18分ほどの曲。歌詞の英訳を見ると侯爵を讃える歌そのもの。ソプラノのレシタチーヴォから始まります。イムは清楚で艶のある良く通る声。続いてソプラノとテノールのデュエット。チョレクのテノールも若々しい声でイムと非常に良く合ってます。ソプラノの短いレシタティーヴォをはさみ今度はソプラノ2人のデュエット。2人目のソプラノはストイコビッチ。名前からするとユーゴ方面の人でしょうか。2人の声質も合っていい歌唱です。最後は合唱。オペラの大団円のような曲。コーラスも透明感のあるいい響きですね。1曲目から非常にいい出来です。
2曲目の「主君の幸運の帰還を祝い」XXIVa:3はニコラウス候が旅行から帰還したのを祝して作曲されたもの。私も旅行帰りにカンタータを演奏してほしいものです(笑) 2部構成の10分弱の短い曲。最初はレシタティーヴォ。冒頭から華やかなオーケストレーション。低音弦の特徴的なメロディーをモチーフに曲が展開。オペラの一場面のような絶妙の間をとりソプラノが美しい歌と語り。続いて合唱曲でソロを交えたコーラスが美しいメロディーを歌いハープシコードが装飾をふんだんに加えて華やかさを増します。
3曲目の「今やいかなる疑いが」XXIVa:4は1曲目の翌年のコラウス侯の命名祝日のための曲。4部構成でソプラノと合唱による曲。前年の曲より一層誉れ高い仕上がり。前記事のアーノンクールの小節を利かせた演奏とはことなり、古楽器の雅な音色による祝賀カンタータとして素晴しい仕上がり。前年の曲よりも一層華やかさを増し、ソプラノに求められる音域も広がり、技巧的になります。ソプラノの晴れ舞台の曲としても十分通用する曲調。私の部下がこの曲を書いたら7階級特進の人事を発令しますね(笑)
聴き所はもちろんソプラノ素晴しい艶のある美声。トラック10のアリアはほれぼれする出来。イムの美声を堪能できます。
4曲目は交響曲12番。指揮がクレーマーに変わり、オケの音色がまろやかに。非常にオーソドックスな演奏。この演奏とくらべるとシュペリングのコントロールの方が音に華があるように聴こえます。「朝」、「昼」、「晩」の少し後に書かれた曲。ハイドン初期のほの暗い感じよく出たいい曲です。非常に落ち着いたテンポでゆったり入りますが、デリケートなニュアンスに富んでいていい演奏。技術力は非常にありながら、それをひけらかさない通好みの演奏と聴きました。1楽章は淡々とこなし、2楽章の深い陰影をソフトッタッチで聴かせるなかなかの演出。そして3楽章の明る響きを落ち着いた中でも彩りある響きで聴かせます。アルバム的にはオマケの演奏ですが、実にいい演奏。気に入りました。
このアルバムはハイドンのマイナーなカンタータの魅力を素晴しい演奏で伝える逸品と評価します。もちろんカンタータは3曲とも[+++++]、そして交響曲12番も[+++++]です。
ハイドンが好きな方には是非お薦めしたい名盤ですね。

上が私の手元にあるアルバム。

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こちらはパッケージをあらためた現行盤。harmonia mundiのパッケージ改訂にはいろいろ背景があるんでしょうが、リリース当初のパッケージの美しさは捨て難いもの。個人的には上のデザインの方が購買意欲が湧きます。
アルバムは「エステルハージ家のためのカンタータ集」と題され、3曲のカンタータと交響曲12番の4曲を収めたもの。何れも1763年から64年にかけて作曲されたもの。ハイドンは1732年3月31日生まれですので30代に入ったばかり。このころハイドンはエステルハージ家の副楽長の立場としてエステルハージ家のために数々の作品を書いています。
収録曲目は収録順に次のとおり。
・祝賀カンタータ「目覚めよ、我を信ずる者たち」XXIVa:2(1763年12月10日ニコラウス・エステルハージ侯爵の命名祝日のために作曲)
・祝賀カンタータ「主君の幸運の帰還を祝い」XXIVa:3(1764年12月6日ニコラウス・エステルハージ侯爵の旅行帰還祝賀のために作曲)
・祝賀カンタータ「今やいかなる疑いが」XXIVa:4(1764年12月6日ニコラウス・エステルハージ侯爵の命名祝日のために作曲)
・交響曲第12番(1763年作)
演奏はアンドレアス・シュペリング(Andreas Spering)指揮のカペラ・コロニエンス(WDR)、合唱はケルン声楽アンサンブル、ソロはソプラノがスンハエ・イム(Sunhae Im)、ヨハンナ・ストイコヴィチ(Johanna Stojikovic)、テノールがマックス・チョレク(Max Ciolec)。交響曲のみ指揮がニコラス・クレーマー(Nicholas Kraemer)の指揮。
シュペリングは私のお気に入りの指揮者。古楽器オケによるハイドンの演奏がいろいろリリースされていますが、どれも名演。古楽器の音色を生かしたさっぱりとした表現が特徴。楽譜を忠実に演奏するだけのように見えますが、爽やかなアクセントによって爽快感を特徴とした演奏が多いですね。古楽器の演奏の一つの理想型だと思ってます。シュペリングの演奏だとハイドン曲自体を当時の響きで純粋の楽しめるような気がします。
カンタータとは本来、単声または多声のための器楽伴奏付の声楽作品のこと。このアルバムに収録された3曲のカンタータは、1762年に兄パウル・アントン・エステルハージ侯爵が亡くなり、弟のニコラウス候が侯爵を継いだばかりの時期に、その侯爵を讃えるために作曲した一連の声楽作品ということでしょう。
これらはハイドンがエステルハージ家の副楽長としてのオフィシャルな仕事で作曲したもの。今で言えば宮内庁楽部が天皇家の公式行事のための祝賀曲を作曲したというようなものでしょう。当時の祝賀行事の華やかさが想像できますね。ハイドン自身も自分の曲が250年近くを経て、CDとなって音楽ファンに聴かれることを想像だにしなかったことでしょう。
1曲目の「目覚めよ、我を信ずる者たち」XXIVa:2は6部構成、18分ほどの曲。歌詞の英訳を見ると侯爵を讃える歌そのもの。ソプラノのレシタチーヴォから始まります。イムは清楚で艶のある良く通る声。続いてソプラノとテノールのデュエット。チョレクのテノールも若々しい声でイムと非常に良く合ってます。ソプラノの短いレシタティーヴォをはさみ今度はソプラノ2人のデュエット。2人目のソプラノはストイコビッチ。名前からするとユーゴ方面の人でしょうか。2人の声質も合っていい歌唱です。最後は合唱。オペラの大団円のような曲。コーラスも透明感のあるいい響きですね。1曲目から非常にいい出来です。
2曲目の「主君の幸運の帰還を祝い」XXIVa:3はニコラウス候が旅行から帰還したのを祝して作曲されたもの。私も旅行帰りにカンタータを演奏してほしいものです(笑) 2部構成の10分弱の短い曲。最初はレシタティーヴォ。冒頭から華やかなオーケストレーション。低音弦の特徴的なメロディーをモチーフに曲が展開。オペラの一場面のような絶妙の間をとりソプラノが美しい歌と語り。続いて合唱曲でソロを交えたコーラスが美しいメロディーを歌いハープシコードが装飾をふんだんに加えて華やかさを増します。
3曲目の「今やいかなる疑いが」XXIVa:4は1曲目の翌年のコラウス侯の命名祝日のための曲。4部構成でソプラノと合唱による曲。前年の曲より一層誉れ高い仕上がり。前記事のアーノンクールの小節を利かせた演奏とはことなり、古楽器の雅な音色による祝賀カンタータとして素晴しい仕上がり。前年の曲よりも一層華やかさを増し、ソプラノに求められる音域も広がり、技巧的になります。ソプラノの晴れ舞台の曲としても十分通用する曲調。私の部下がこの曲を書いたら7階級特進の人事を発令しますね(笑)
聴き所はもちろんソプラノ素晴しい艶のある美声。トラック10のアリアはほれぼれする出来。イムの美声を堪能できます。
4曲目は交響曲12番。指揮がクレーマーに変わり、オケの音色がまろやかに。非常にオーソドックスな演奏。この演奏とくらべるとシュペリングのコントロールの方が音に華があるように聴こえます。「朝」、「昼」、「晩」の少し後に書かれた曲。ハイドン初期のほの暗い感じよく出たいい曲です。非常に落ち着いたテンポでゆったり入りますが、デリケートなニュアンスに富んでいていい演奏。技術力は非常にありながら、それをひけらかさない通好みの演奏と聴きました。1楽章は淡々とこなし、2楽章の深い陰影をソフトッタッチで聴かせるなかなかの演出。そして3楽章の明る響きを落ち着いた中でも彩りある響きで聴かせます。アルバム的にはオマケの演奏ですが、実にいい演奏。気に入りました。
このアルバムはハイドンのマイナーなカンタータの魅力を素晴しい演奏で伝える逸品と評価します。もちろんカンタータは3曲とも[+++++]、そして交響曲12番も[+++++]です。
ハイドンが好きな方には是非お薦めしたい名盤ですね。
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