作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

イザベル・ファウストのヴァイオリン協奏曲集

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今日はヴァイオリン協奏曲を取り上げます。飲み会やら、仕事やらで、2日ほど開けてしまいました。

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いつものHMV ONLINEでは検索に引っかかりませんでしたので、amazonのリンクを張っておきます。

イザベル・ファウストのヴァイオリン、クリストフ・ポッペン指揮のミュンヘン室内管弦楽団でハイドンのヴァイオリン協奏曲VIIa:1、VIIa:3、VIIa:4の3曲。録音はドイツのエルマウにあるエルマウ城の大ホールで1997年4月のセッション録音。

イザベル・ファウストは、ショートカットの美人ヴァイオリニスト。コンサートの招聘元のウェブサイトに情報がありますのでそちらをご覧ください。

パシフィック・コンサート・マネジメント 招聘アーティスト イザベル・ファウスト

ハイドンの協奏曲といえば、まずはチェロ協奏曲、そしてトランペット協奏曲などがメジャーなところでしょう。ヴァイオリン協奏曲はいまひとつマイナーな存在かも知れません。私の所有盤でも、これという記憶にのこる演奏がまだありません。ということで、ファウスト盤をあらためて聴き直しレビューに取り上げた次第。

まずは、VIIa:1。ハ長調の明るい響きのオケの序奏から。ポッペンの指揮するオーケストラは現代楽器で収録の関係かちょっとざらついた響きが特徴。ゆったり目なテンポ、オーソドックスなフレージング、生気もほどほどでハープシコードが響きに華やかさを加えています。ファウストのヴァイオリンは爽やかな小節と強靭な張りのある高音が特徴。速いパッセージにちょっと溜め気味に弾いてアクセントをつけるのと、高音の音階を引きずるようにレガートを効かせて張りのあるヴァイオリンの音色で聴かせるという感じでしょうか。1楽章のカデンツァは静寂の中自在な音階と重音の連続で「眠れる美女」と名付けられた1704年製のストラディヴァリウスの美音が響きわたります。
2楽章はヴァイオリンのソロから始まる印象的な開始。ハープシコードとピチカートの伴奏に乗ってヴァイオリンがのびのびと旋律を奏でる展開。ヴァイオリンの落ち着き払った感じがとてもいいですね。
3楽章は分厚いオケの響きから始まり、冒頭からインテンポで畳み掛けるような展開。前楽章と主客逆転。完全にオケが主導権を握り、それにヴァイオリンが合わせていく感じです。

2曲目はVIIa:3ニ長調。この曲は1949年オーストリアのメルク修道院で発見されたため、「メルク協奏曲」とも呼ばれています。オケもヴァイオリンも前曲と同様の特徴。1楽章は落ち着いた入りから、低音弦の特徴的なメロディーを生かした曲想を奏で、中盤からのびのびした高音の魅力で聴かせます。ヴァイオリンのテンポが若干重いのが少々気になるところ。1楽章のカデンツァはヴァイオリンの美音を駆使した美しい音色を満喫できるすばらしいもの。
2楽章のアダージョは美しいメロディーをゆったりといきたいところですが、ちょっと腰がういた感じもして、ゆったりしきらない不思議な感覚。テイクをたくさん録りすぎて集中力がちょっと落ちているんではないかと邪推してます。
3楽章は非常に変わったメロディー。オケの低音弦の力強さが印象に残ります。相変わらずヴァイオリンの高音の音色は艶が乗って素晴しいですね。

最後はVIIa:4ニ長調。前曲のVIIa:3よりも前に作曲されています。私自身はヴァイオリン協奏曲の中ではこの曲が一番完成度が高いんじゃないかと思ってます。力強いオケの序奏から入ります。色彩感溢れるオーケーストレーション。オーケストラが主導権を握って進め、ヴァイオリンがその上で遊ぶ感じ。曲想が明解です。
2楽章のアダージョ。こちらは落ち着いて呼吸も深く、オケとソロの解け合いも見事。テクニックと美音を引っ込めてひたすら美しいメロディーに没頭しているよう。結果的に心を打つ出来に。
3楽章は力を抜いたオケの入り。ヴァイオリンもいい具合に力が抜けて曲の自然な流れに乗れてます。最後まで勢いに乗って颯爽とフィニッシュ。

総じて3楽章の出来がいいというのが特徴でしょうか。オケ主導で鮮烈な響きを引き出せている感じですね。

今回レビューで取り上げる前に聴いた印象はあまり特徴のないオーソドックスな演奏という印象でした。オケのちょっとざらついた感じもあって、目立った印象はなかったんですが、レビューのために何度か繰り返してきいたところ、ファウストのヴァイオリンのキャラクターもなんとなく理解できた気がします。
評価は全曲[++++]とします。[+++++]とするには、今一歩の踏み込みが欲しいところ。非常に丹念仕上げられた演奏ですが、最近聴いている協奏曲の他の高評価盤とくらべると、ソロ、オケともにちょっと差がつくところでしょう。

最近協奏曲を集中的に聴いて感じるのは、チェロ、ヴァイオリン、トランペット、ホルンなどそれぞれの楽器の音色の特徴に合わせた曲の面白さ。ホルン協奏曲はホルンの音色を十分に生かしきった曲となっていますし、今回のヴァイオリン協奏曲も楽器の特徴を見事に生かした曲。当たり前と言えば当たり前のことですが、ハイドンの非凡さがあらためて浮き彫りになった感じです。単なるメロディーでも弾かれる楽器の音色の違いを鮮明に描き分けているのは見事という他ありません。モーツァルトが楽器のちがいよりもそのメロディーの純度で聴かせるのに対し、ハイドンは楽器の違いを踏まえた曲作りと言う玄人好みの特徴で聴かせるといったらいいでしょうか。
いやいや、奥深いものですね。
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