作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

新着! コープマンの97、98番

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昨日HMV ONLINEからついたばかりのアルバムの1枚。

Koopman9798.jpg
HMV ONLINEicon

トン・コープマン指揮、アムステルダム・バロック管弦楽団の演奏によるハイドンの交響曲98番、97番。2009年9月、アムステルダムでのセッション録音のようです。交響曲の録音はかなり久しぶりで、今回はザロモンセットの第1巻との表記ですので12曲の録音を目指したものでしょう。レーベルはこれまでのERATOレーベルではなくCHALLENGE CLASSICSというレーベル。

コープマンのハイドンの録音は、交響曲はパリセットから3曲と疾風怒濤期の3曲の6曲が知られていますが、何れも1980年代、90年代の録音。他にオルガン協奏曲、ピアノ協奏曲などの録音がありますが、新しいものでも94年の録音。ハイドン自体の録音が相当久しぶりということになります。

私がコープマンの指揮する演奏で印象に残っているのはモーツァルトのディヴェルティメントK.136、137、138、251のセットを収めた1枚。なんという繊細な響きのコントロール。流麗なK.136のメロディーを他の演奏とは全く違う音響で表現。弦の一音一音の出だしの角をすべて滑らかに丸く削ったような不思議な表現ですが、その表現が古楽器の繊細な音色と、非常にきめ細かい音量コントロールと相俟って、磨き抜かれた絶妙なモーツァルトの響きを再現しています。このアルバムに代表されるような繊細な響きというか色彩感豊かな古楽器の響きがコープマンの一番の特徴でしょう。あとはモーツァルトの交響曲21番、23番、24番、27番を収めたアルバム。特に23番の響きの素晴しさ、流れるような構成は息を飲まんばかりのもの。以前その指揮姿をダンパーの緩んだ車のようだとふれました(ノセダの太鼓連打)が(笑)、どっこい生み出す音楽はすばらしいものがあります。

モーツァルトの特に初期の作品の演奏では素晴しい演奏をしていたコープマンですが、これまでのハイドンの交響曲の録音ではその繊細な響きはそのままに、ほの暗いハイドンの音楽をじっくり表現しています。流麗、華麗さの表現においては一際鮮烈な印象を残したものの、ハイドンにおけるコープマンの表現はオーソドックスな範囲に聴こえてしまっていたのが正直なところ。果たしておよそ20年を経過して録音した新たなこのアルバムは如何なる演奏でしょうか。

まず98番から。冒頭の響きはある意味コープマンらしい柔らかい響きの特徴が薄れ、むしろダイナミックな印象。録音の関係か、色彩感よりもダイナミクスに特徴を感じます。弦の音色が以前に比べ響きよりも直接音の主体に。コープマンらしいところはオーソドックスなリズム感とフレージング。オケの各奏者は人数の少ない小編成だけに一人一人の音がよく聴こえ、テクニックも素晴しいもの。以前の録音としての響きの美しさではなく、まさに録音会場にいるような音響が時代の流れを感じさせます。
聴き所は2楽章と終楽章でしょうか。2楽章はあっさりした表現ながら、コープマン流のフレーズコントロールが行き渡り、端正な中にも叙情性を感じさせる表現。終楽章は弦と金管のアクセントのメリハリをつけながら複雑な音符を巧くまとめ、最後はコープマン自身のハープシコードを交えてスケール大きなフィニッシュ。

続いて97番。冒頭から迫力あるオーケストラ。曲調からから97番のほうが流れがいい感じです。コープマンの良さがオケの響きを生かした曲のほうが合っている感じです。途中の木管の響きが非常に美しい。こうした各楽器とマスとしてのオーケストラの掛け合いが97番の聴きどころですが、対比は抜群。ただし、強奏部分のオケがちょっと重い印象もあります。1楽章最後の部分でのティンパニがどすっと来る独特の音色でいい感じです。
2楽章は弱音の美しさが際立ついい演奏。コープマンのアダージョは、さっぱりした叙情性がいいですね。相変わらず木管の音色も美しくほれぼれします。3楽章が速くてビックリ。流れるようなメヌエット。そして終楽章も比較的速めのテンポで入りリズムのエッジを段々に立てていき、最後はオーケストラの各楽器の響きの競演に。どちらかというと98番のほうがいい出来と感じました。

ザロモンセットをリリースするのに最もマイナーな97番、98番から始めるあたり、コープマンやレーベルの意図はどこにあるのか判然としませんが、おそらくいろいろな演奏の刷り込みが少ない曲から、最新のコープマンの純粋無垢な響きを印象づけるという狙いかもしれません。1枚目の出来は今後のリリースの売上げをおそらく大きく左右することになるでしょうから、重要のものかと思います。

総じて、以前のコープマンのスタイルと、最近の現代楽器による古楽器演奏の成果を取り入れた演奏の中間のような演奏というとわかりやすいでしょうか。コープマンらしい特徴が少し薄まってしまい、ハイドンの交響曲の演奏としての踏み込みという点でも、もう一歩踏み込んでほしいという印象を残しました。当ブログの評価は両曲とも[++++]としました。

ちなみに、今後のリリースはおそらくすべて手に入れるのが当ブログの責務でありますので、続くリリースもその度にレビューしていきたいと思います。コープマンは注目するアーティストですので。
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