作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

ジュリーニの驚愕

0
0
今日は久しぶりに交響曲ものを。

Giulini94.jpg
HMV ONLINEicon / amazon

カルロ・マリア・ジュリーニ指揮のバイエルン放送交響楽団の演奏で、ハイドンの交響曲94番驚愕。1976年1月26日のライヴです。

ジュリーニは好きな指揮者の一人。個人的に印象に残っているのは古くはフィルハーモニアオーケストラとのフィガロ。晩年とは違い速めのテンポでタイトに進める展開。ベーム盤とともによく聴きました。それからシカゴ響とのブルックナー9番。峻厳な雰囲気と歌が同居した素晴しい9番。聴いてきたのはLPですが最近CDも買い直しちゃいました。それからウィーン・フィルとのブルックナーの7番、8番、9番。この辺はジュリーニの全盛期でしょう、ブルックナーの交響曲の壮大な伽藍をイタリア人らしい流麗さとウィーンフィルの豊穣な音響ので描いた素晴しいもの。決して録音が多い方ではないと思いますが、ファンが多いのは頷けるところ。最晩年のSONY時代の録音は、行き着くところまで行ってしまったような、少し極端な演奏が多いような気がしていますが、バッハのロ短調ミサの1994年のライヴなどは素晴しいものがありますね。ロ短調ミサの録音があるなら天地創造の録音があってもいいはずなんですが、下記のファンサイトでもハイドンの録音はあまり多くないようです。

CARLO MARIA GIULINI Discographie complète:トップページ(仏語のみ)
CARLO MARIA GIULINI Discographie complète:ハイドンを含むその他作曲家のディスコグラフィページ

手もとのコレクションには本アルバムと同一の演奏と思われる1枚の計2枚しかありませんが、上記のディスコグラフィでは他に99番(1986年ウィーンフィル)、101番時計とチェロ協奏曲2番(1958年フィルハーモニア管、チェロ=シュタルケル)、104番ロンドン(1965年ミラノRAI)、そして94番驚愕には本盤以外にも複数の演奏があります(1962年ボストン響、1969年ボストン響、1956年フィルハーモニア管)
手に入るかどうかはわかりませんが、引き続き収集候補としてアンテナ張っておかなくてはなりませんね。

この演奏は1976年1月のライヴということで、ウィーン交響楽団の首席指揮者時代にバイエルン放送響に客演してのコンサートということでしょう。ジュリーニは1914年生まれですので61歳の時の演奏。最も充実していたころ、しかも名手ぞろいのバイエルン放送響ということで期待が高まります。

前振りが長くなりましたので、早速レビューを。

冒頭は残響が多めのつややかな音響。木管と弦の解け合いが見事。序奏から素晴しい弦のメロディーの美しさ。ハイドンには美しすぎるんではないかというぐらい磨かれた表現。大オーケストラによるハイドンの交響曲演奏の理想型のような響き。音階を刻むヴァイオリン軽やかさもさることながら、デュナーミクの幅が広く、しかも規律正しい感じも保った高次のバランス。ジュリーニ節も健在で、おそらくヴィオラ奏者出身ならでは弦の各楽器間の音量コントロールにより、全体としてクッキリつややかながら厚みある弦の響きを実現しているんでしょう。心情的には落ち着ききった中でコントロールしているようなゆったり感もありながら、気迫も十分。すばらしい1楽章です。ハイドンの素晴しい曲がジュリーニよってブルックナーの大伽藍に迫らんとするようなスケール感。1楽章を聴くだけで素晴しい演奏に興奮を禁じ得ません。
2楽章のビックリはビックリさせる意図は陰をひそめ大河の流れがごとき滔々とした大きさを感じます。2楽章もリズムはほとんど揺らすことなく、淡々と進めますが、一貫したゆったりさが迫力につながっているんでしょう。最後は消え入るように終わります。
3楽章のメヌエット。堂々としながら気品もあり素晴しいメヌエット。奏者の笑顔が見えてきそうなメヌエットですね。
そしてフィナーレ。決しては速すぎないテンポで、ハイドンの天才的な楽譜を音にしてゆきます。最後まで余裕たっぷりに、決して破綻をきたさないオーケストラ。全体の骨格、メロディーをきちんとまとめながら、フレーズのアクセントもきちんとメリハリをつけ、そして奏者全員が楽しみながら弾いているような一体感。最後のクライマックスも奏者の9分の力で完璧にコントロールして終わっています。ライヴとしては信じられない質の高さ。会場ノイズや拍手はカットされています。

もちろん評価は[+++++]。古楽器での演奏や、現代楽器のノンビヴラート奏法での演奏とは説得力、迫力が違います。演奏のスタイルを超えて、魅力的な演奏というのはこの演奏のことでしょう。驚愕はハイドンの入門曲の一つ。こうしたいい演奏を通じてハイドンの魅力が多くの人に伝わるといいですね。

後半に収められたラヴェルのマ・メール・ロア組曲も静寂感が印象的ないい演奏。こちらもおすすめですが、ハイドンのフィナーレから余韻を楽しむ間もなく始まるのがちょっと今ひとつですかね。素晴しい演奏ゆえ、プロダクションも今ひとつの気遣いがあるといいと思います。

この盤にはもう一つちょっとした欠点があります。ジャケットのジュリーニの綴りが間違ってます。アルバムの看板である指揮者の名前の間違いは珍しい。本来Giuliniですが、ジャケットは外から見える部分はGuiliniになってます。ライナーノーツは正しいのでデザイナーの誤りでしょう。残念なミスですね。
関連記事

0 Comments

There are no comments yet.