作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

ペレーニの至芸、チェロ協奏曲

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今月の協奏曲集中レビューにより、チェロ協奏曲を再発見。今日は大御所ミクローシュ・ペレーニを取り上げます。

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ミクローシュ・ペレーニのチェロ、ヤーノシュ・ローラ指揮のフランツ・リスト室内管弦楽団の演奏。録音は1979年、ハンガリーのナショナル・レーベルHUNGAROTON CLASSICのアルバムです。
収録曲目はハイドンのチェロ協奏曲1番と2番のみ。ただし変わっているのは、収録順が2番、1番と通常と逆になっていること。真意はわかりませんが、2番を最初に聴いてほしいほど、良い出来だったのでは、と想像しています。

ペレーニについては、クラシック関係のウェブのパイオニアの一人、斉諧生さんがウェブで取り上げていますので、そちらのリンクを張っておきます。

斉諧生音盤志:提琴列伝

斉諧生さんがペレーニに注目するきっかけとなったのが、チェリストの長谷川陽子さんの言葉とのこと。要はチェリストに凄いと思わせる演奏をする人ということでしょう。
情報によれば、ペレーニは1948年ブダペスト生まれということで、現在62歳ですので演奏家としてはまだまだ脂ののった年齢だと思います。この録音当時は31歳ということで音楽家としては若手の範疇に入る年代での演奏。

収録曲順といきたいところですが、やはり1番から聴きたくなるので、まずは1番から。

出だしの一音は若干録音の古さを感じさせるもの。オケの音色が万全とはいえない録音状態なのが惜しいところ。ペレーニのチェロは一言でいうと味わい深い演奏。奏法や音色についてはっとするようなわかりやすい特徴があるかといえば、そうではなく、必要十分な弓さばきで音色の変化を最大限引き出し、実に奥ゆかしいチェロのソロを奏でるといった感じでしょうか。高音というより中音域の伸びの良さが音色上の特徴ですね。伴奏のオケも媚びないというか、さっぱりした表情ながら滋味深いというか、地味ながら十分なサポート。オケの音色もHUNGAROTONに多い、解像度はほどほどで、弦が石っぽいというかちょっと硬質感のある音色です。カデンツァはペレーニ自身によるもので、こちらも自己顕示欲などとは無縁の澄み切ったもの。流石です。

2楽章は中庸なテンポに乗って、チェロが枠の中で自在に遊ぶよう。意外にデュナーミクの幅も大きく、チェロだけでも聴き応えがあります。ところどころに高音の泣きをちりばめ、名旋律を情緒に流されることなく凛々しく演奏。この音楽性こそ、プロが唸るポイントなんでしょう。

3楽章はオケが適度な快速で爽快に入ります。チェロもリズムを崩すことなく、速めのテンポの波にうまく乗って遊び回るような表情付け。ウィスペルウェイのテクニックの博覧会のような印象ではなく、曲を楽しみながら遊び回る余裕を感じます。

つづいてトラック1に戻って2番。

穏やかなオケの出だし。チェロ8分の力と8分の表現の幅で入ります。次第に曲調に乗って、表現の幅が広がり、テンポの揺れも出てきます。ペレーニのテクニックではなく弓さばきというか音楽の至芸を楽しむような領域に入り、1楽章のカデンツァで最高潮に。音楽的には独演会に近い充実ぶり。

2楽章はまるで美空ひばりの歌に近い完璧なコントロール。聴き慣れたメロディーながらチェロの奏でる音は異次元のまとまり。

3楽章はテンポはそれほど早くなく、チェロは力を抜いて流す感じで入ります。着流しのような粋な風情を出そうとしたのでしょうか。こうゆう解釈も有りですね。曲の解釈の視点が一歩高い感じですね。フィニッシュも非常にあっさりと媚びない終わり方。

両曲ともにチェロは流石ペレーニ。玄人が唸るわけです。このチェロにはハマると抜けられなくなるのはわかります。

意外といえば意外ですが、このところ取り上げたチェロ協奏曲の2曲セットの中では1番と2番の間の演奏スタンス差が少ない方の代表格。ハンナ・チャン盤もデュ・プレ盤も基本的には2番を意図的に枯れた表現で表現していたように聴こえますが、ペレーニ盤は基本スタンスの違いはあまり大きくなくテンポも表現も落ち着いたもの。

評価は、逡巡しましたが、録音の古さ(物理的に古いのではなく、いい録音が出来る年代なのに古くさい音色がするの意)から、万人におすすめできる盤とするには多少欠点があるため、両曲ともに[++++]としました。
もっと古い録音にもいい録音もたくさんあり、また実際古ぼけた音でも全然鑑賞に問題ないと感じる中、HUNGAROTONの音響は若干問題を感じるといったところでしょう。もちろん文面を読んでいただければ、ペレーニのチェロ自体は素晴しい演奏。このへんも筆者の好みの範疇とご理解ください。
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