作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

ジャクリーヌ・デュ・プレ!

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今日は朝から未整理盤を片付けています。

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ジャクリーヌ・デュ・プレのチェロによるチェロ協奏曲集。収録曲目はハイドンのチェロ協奏曲1番、2番とボッケリーニのチェロ協奏曲。バレンボイム指揮のイギリス室内管弦楽団の演奏ですが、ハイドンの2番のみバルビローリ指揮のロンドン交響楽団です。デュ・プレのハイドンは1番は別装丁のアルバムを持っていたんですが、最近2番の録音があるのにコレクションにないことを知り発注しておいたもの。HMV ONLINEで昨日取り上げた天地創造のDVDなどと一緒に到着していたものです。2番がバルビローリ指揮のものとは、今ブログを書くためによく見てはじめて知ったもの(笑)

ジャクリーヌ・デュ・プレは名前からフランス人かと思っていましたが、イギリス生まれとのこと。1945年1月26日生まれですが、皆様ご存知のように若くして多発性硬化症を患い、1987年10月に42歳の若さで亡くなってます。
このアルバムのハイドンの演奏は1番が1987年4月17日、24日と表記がありますが別の盤の表記は17日ということで24日はボッケリーニの収録日でしょう。2番が同年12月13日。ということで、両曲ともに22歳のときの録音ということになります。特に1番は前年結婚したバレンボイムとの共演ということで夫婦による録音です。デュ・プレのことはWikipediaにも詳しいのでご参照ください。

Wikipedia:ジャクリーヌ・デュ・プレ

Wikipediaの紹介キャッチのとおり、夭折の天才チェリストであるデュ・プレのハイドン、亡くなった人の演奏という情報のせいかもしれませんが、もの悲しいチェロの響きが心に残る名演ということが出来るでしょう。

第1番は、新婚の夫、バレンボイム率いるイギリス室内管との演奏。テンポも溌剌として若さ漲る演奏、といいたいところですが、溌剌とした中にも、諦観を感じるような場面が多々有り、この盤が古来より評価されてきた理由がわかるような気がします。
序奏は素晴らしい輝きのあるオーケストラ。ハ長調の明るい響きが響き渡ります。室内管弦楽団にも関わらず、素晴らしい厚みとキレ、推進力。バレンボイムの完璧なサポート。デュ・プレのチェロは巧い下手と言う次元ではなく、出だしから神がかったもの。なんという高音の鳴き。なんという正確なフレージング、67年にしては十分な録音で家の中にデュ・プレが降臨しているような実体感あふれる音響。痺れます。
2楽章は夢の中にいるような極上のリラックス。デュ・プレのチェロは神がかったというより、神様そのものになっちゃったような奇跡の演奏。デュ・プレ自身も幸せの絶頂にあった故の心技体渾然一体となった素晴らしさ。最後のカデンツァの弱音のコントロールは絶品。当時録音に関わったアビーロードスタジオのスタッフも息をのんだに違いありません。
3楽章はバレンボイムの棒が冴えまくり。なんという推進力。終楽章はデュ・プレが一瞬前のめりになるところがあるんですが、バレンボイムが巧くあわせて見事なサポート。愛を感じますね。最後にデュプレが弓を大きく使ってアクセントをつける部分もあり、すばらしい興奮のまま終了。
これは1番の決定盤というべき素晴しい演奏ですね。

第2番はバルビローリのペースなのか、テンポがぐっと遅くなりオケも序奏から燻し銀状態。昨日のバーンスタインの遅さのような溜めに溜めたような濃さはなく、枯淡の表情。オレは若い夫とは異次元のサポートをするぞというバルビローリの静かな気合いを感じますね。バルビローリのこのアプローチがデュ・プレの物悲しいチェロの音色を一層寂しげなものにしています。
デュ・プレの入りは、完璧な弛緩。力が抜けきってます。見事。バルビローリの遅いテンポの上でも素晴しい音楽を奏で、デュ・プレの音楽になってます。バルビローリの方も大きな単位で力を入れるフレーズを浮き立たせるなどデュ・プレに負けない音楽造り。次第にデュ・チェロの響きが悲しさを帯びたものに。22歳のチェリストに宿ったこの音楽性は何なんでしょうか。おそらく多くの音楽家が一生かかっても到達できないところまで来てしまっていますね。最後はバルビローリが力漲る弦楽合奏で支え結びます。
2楽章のアダージョはバルビローリの面目躍如。深い呼吸でデュ・プレを支えます。バルビローリの伴奏に乗ってデュ・プレの孤高のチェロが響き渡ります。カデンツァはもはやテクニックとは無縁のシンプルなもの。
3楽章はもうあれこれなく、ただただ音楽あるのみ。墨が若干かすれても勢いを保った筆による達筆の書のような趣。

1番から2番の録音は8ヶ月しかたっていないんですが、タイムマシンに乗ってだいぶ時を経たような印象があります。若い夫との録音と録音当時70歳近かったバルビローリとの録音。この伴奏者の違いがデュ・プレの音楽に大きな変化を与えています。

評価は両曲ともに[+++++]。もう一個足したいくらいです。これは世界遺産とでも言うべきアルバムですね。ハイドンのチェロ協奏曲のファーストチョイスとしてもおすすめできる名盤です。

先日取り上げたハンナ・チャンとシノーポリによるチェロ協奏曲でも2番のハンナ・チャンの変化が特徴でしたが、おそらくこのアルバムの影響を受けているのでは思える節があります。若いハンナ・チャンがデュ・プレを慕うのは当然のこと。ハンナ・チャンと話す機会があれば、聞いてみたいですね。もちろん、話す機会はないと思います(笑)
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