ダントーネのハープシコード協奏曲

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オッタヴィオ・ダントーネのハープシコード、ステファノ・モンタナーリのヴァイオリンによるピアノ協奏曲などを収めた1枚。採用としたのはシュタイアーのアルバムで興味をもったピアノとヴァイオリンのための協奏曲XVIII:6が含まれていることもあって。果たして、その出来は如何なるものでしょう。
まずは演奏者につてほとんど知識というか情報がないため、少々検索。
ハープシコードのオッタヴィオ・ダントーネ、自身のサイトがありました。ついでにアカデミア・ビザンティナも。
http://www.ottaviodantone.com/
http://www.accademiabizantina.it/
ダントーネは根っからのハープシコード奏者のようですね。オケのアカデミア・ビザンティナはイタリアのラヴェンナの古楽器オケ。
1曲目はピアノ(ハープシコード)協奏曲XVIII:11。いつもの聴き慣れたメロディーを想像していたところ、脳天をたたき割られんばかりの衝撃。古楽器オケなんですが、オケがものすごい筋肉質の演奏。それもただの筋肉質ではなく、オイルで黒光りしているボディービルダーの怪しいまでにデフォルメされた筋肉質。そして、ソロは強弱のメリハリがほとんどつかないハープシコード。音色としてはランドフスカのゴールドベルク変奏曲と変わらない古雅な響き。なんと言うミスマッチなんでしょう。耳に直撃する前衛。唖然とはこのことです。
ジャケットの怪しい目つきにもう少し注意を払っておくべきでしたね。
1楽章はオケの迫力とおそらく音量的には生では敵いそうにないハープシコードの掛け合い。ハープシコードは基本的には快速に飛ばしますが、ところどころテンポを落としてアクセントをつけます。
2楽章はハープシコードの繊細なメロディーによる魅力を表現するために、オケも八分の力で合わせます。
3楽章は再びムキムキ。1楽章の違和感は耳が慣れたせいか、少々薄らいできました。印象的なメロディーによる中間部のハープシコードのそろで突然のギアチェンジで快速に変化、途中でまた普通の速さにギアチェンジ。最後はオケの迫力の響きを残して終了。
2曲目はヴァイオリン協奏曲。演奏のコンセプトは前曲と変わりありませんが、ソロが音質的に近いヴァイオリンということもあり、違和感はだいぶ押さえられました。流麗さは陰を潜め、過度に近いメリハリによりメロディーを浮き彫りにしてきます。ソロのモンタナーリはオケであるアカデミア・ビザンティナのコンサートマスターといった役割でしょうから、オケとソロの融合という意味では見事。この演奏は弾く立場の人からは評価が高いかもしれませんが、聴く立場としては、個性的に過ぎてハイドンの曲を楽しむといった心境になれないかもしれませんね。
曲を通してこの印象が支配していた演奏と言うべきでしょう。
3曲目はハープシコードとヴァイオリンのための協奏曲。シュタイアー盤では1楽章にちょっと違和感があったものの、こちらの演奏では、逆に1楽章は面白く聴けました。非常に明確な表情付けが曲の構造を浮き彫りにできているからでしょう。フォルテピアノではなくハープシコードであることで、コンティニュオのような位置づけとなっていることが曲を聴きやすくしている可能性もありますね。
2楽章は特にハープシコードの伴奏としての役割が引き立つ曲想。違和感がないどころか、ヴァイオリンを引き立てる役割で大活躍。
3楽章に至ってはヴァイオリン協奏曲のコンティニュオのような位置づけが板についていい感じ。このアルバムでもっとも説得力がある演奏になってますね。
評価はXVIII:11とヴァイオリン協奏曲は[+++]、ピアノ(ハープシコード)とヴァイオリンのための協奏曲XVIII:6については[++++]としました。古楽器によるピアノ協奏曲という意味ではお薦めできる盤というわけにいきませんかね。非常に個性的な演奏であることは間違いありませんので、マニア向けといったところでしょう。
このアルバムを評価するのは、演奏者視点もしくはハイドンの協奏曲を数多聴き込んでいるベテランの方なんじゃないかと思います。
今日はお腹に卵がつまった鮎の塩焼きで一杯やりながら夕食。写真撮り忘れましたが、鮎が絶品。今の季節だけの贅沢ですね。日本酒と行きたいところでしたが、汗だくで帰宅したためいつものようにクリネリッシュのハイボールを飲みながら鮎などをつまみました。
夜は暑さが少し和らいできたんでしょうか。
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コメントの投稿
No title
ところでもうご存知かとは思いますが、ダントーネはこんど交響曲全集を出すらしいですね。(それもなんと年内に36枚組を一括で!)
プロモーション盤が近々発売されるとのことですので、ぜひレビューをお願いいたします。
http://www.hmv.co.jp/news/article/1601070047/
Re: No title
ダントーネの交響曲全集ですが、気になりますね。協奏曲の方はちょっと灰汁が強い演奏だったのであまり好みに合いませんでしたが、交響曲の方はどう来るか興味津々です。もちろん手に入れたらレビューを予定していますので、お待ちください。