作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

レスリー・ジョーンズの「十字架上のキリストの最後の七つの言葉」(ハイドン)

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自然な流れの美しさを感じさせる名演奏。

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レスリー・ジョーンズ(Leslie Jones)指揮のリトル・オーケストラ・オブ・ロンドン(Little Orchestra of London)の演奏で、管弦楽版の「十字架上のキリストの最後の七つの言葉」を収めたLP。収録年は記載されておりませんが1969年リリースのようです。レーベルはNonesuch。

レスリー・ジョーンズについて、以前は情報がほとんどなかったのですが、Wikipediaにかなりの情報が掲載されていました。編集履歴をみると2018年から追加されたようです。

1905年イギリス生まれの指揮者で法律家でもあったようです。若い頃は救世軍の楽団でサクソルンを吹いたり、トロンボーン、オルガンなどを演奏していたとのこと。戦前ニューカッスルに弦楽オーケストラ、戦後はストーク=オン=トレント交響楽団、レスリー・ジョーンズ交響楽団を相次いで創設するなど精力的に活動。そして1957年には多くのハイドンの交響曲を録音することになるリトル・オーケストラ・オブ・ロンドンを創設。メンバーはロンドンの一流どころが集い、フルートのジェームス・ゴールウェイなども参加していたそうです。主兵リトル・オーケストラ・オブ・ロンドンとのハイドンの交響曲の録音は1960年代を中心におそらく44曲にのぼり、ドラティの全集登場以前のまとまった録音として貴重な存在です。

2016/09/20 : ハイドン–交響曲 : レスリー・ジョーンズ/リトル・オーケストラ・オブ・ロンドンのホルン信号、告別など(ハイドン)
2013/07/17 : ハイドン–交響曲 : レスリー・ジョーンズ/リトル・オーケストラ・オブ・ロンドンのラ・ロクスラーヌ、78番(ハイドン)

ちなみに、レスリー・ジョーンズの交響曲の録音は数枚を除いてほぼ手元にあるのですが、曲によってムラもあり、やはりドラティの素晴らしい偉業と比べると少々見劣りします。しかし、今回手に入れたこの「十字架上のキリストの最後の七つの言葉」はジョーンズの録音の中でも指折りの素晴らしい演奏ということで取り上げた次第。

Hob.XX:1 "Die sieben letzten Worte unseres Erlösers am Kreuze" 「十字架上のキリストの最後の七つの言葉」 [D] (1785)
肩の力の抜けた、ゆったりとした序奏の入り。多少時代がかった音色ではありますが、Nonesuchの録音らしくオーケストラが眼前に鮮明に定位します。交響曲の演奏では多少表情過多な時もあるレスリー・ジョーンズですが、この曲では適度に劇的で淀みなく曲が自然に流れていきます。この淀みなく曲を淡々と描いていくことで、曲の見通しがよくなり、大局的な表現の面白さが浮かび上がってくるわけです。
厳かな印象もあった序奏に続いてソナタが始まりますが、このソナタは少しテンポを上げて非常に流れの良い演奏。まるで微風を楽しむかのようないい意味での軽さが、この曲のメロディーの美しさを際立たせます。
第2ソナタに入っても、少しテンポが落ち着くもののこの一貫したスタンスは続きます。早くも燻銀的穏やかさが香ります。じわりと暖かさを感じる見事なコントロールで曲自体の劇性を抑えめに描いていく酔眼。

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LPをひっくり返して後半4つのソナタ。じっくりと描く第4ソナタに、ゆったりとしたピチカートに乗ってメロディーが劇的に大胆になっていく第5ソナタと前半の爽やかさから劇性を徐々に濃くしてきました。そして第6ソナタでは再びそよ風のような心地よいメロディーに癒やされます。第6ソナタを聴くといつも思うのですが、さっと陽が差したかと思うと、スッと陰るような微妙な表情の変化の美しさはこの曲の最も美しいところ。そこをいかに深く表現できるかが指揮者の腕の見せ所。レスリー・ジョーンズはその辺りのツボを見事に抑えた演奏で応えます。そして最後の第7ソナタは澄み切った心境を表すような落ち着いた演奏。最後の地震は絶妙なるバランス。彫りは深く、適度に力強く、しなやかさも保った落ち着いたフィナーレ。序奏から地震までの全9曲がまるで一つの曲であるかのように流れの良く、大局的なコントロールが行き渡った見事な演奏でした。

このアルバム、今まで聴いたレスリー・ジョーンズのハイドンでは間違いなくベスト。オーケストラの音色に多少時代を感じなくはありませんが、Nonesuchの名録音がLPならではのダイレクトな響きで再現され、穏やかさの中に郷愁すら感じさせる見事な演奏でした。手元にない数枚のアルバムも是非集めたいと思います。評価は[+++++]といたします。



(追伸)
今月もちょっと忙しく、レビュー数が伸びない可能性があることお詫びいたします。



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