作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

ポーランドバリトン三重奏団のバリトントリオ集(ハイドン)

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バリトントリオのしなやかな名演奏。

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ポーランドバリトン三重奏団(Polish Baryton Trio)の演奏で、ハイドン、ヨーゼフ・ブルクシュタイナー(Joseph Burgksteiner)、アントン・ノイマン(Anton Neumann)、アロイス・ルイジ・トマジーニ(Alois Luigi Tomagini)のバリトン三重奏曲を収めたアルバム。ハイドンのバリトン三重奏曲はHob.XI:96とXI:66の2曲。収録は2001年7月2日から6日にかけて、ワルシャワのポーランド放送S-2スタジオでのセッション録音。

このアルバム、タイトルは「ニコラウス・エステルハージー侯のための音楽(Music for Prince Nikolaus Esterházy)。ハイドンとその楽団のコンサートマスターを務めていたトマジーニまでは良いのですが、ヨーゼフ・ブルクシュタイナーもアントン・ノイマンもはじめて聞く人。

ライナーノーツを紐解いてみると、ブルクシュタイナーの名はどの音楽辞典にも掲載されていない人で、生没年も不明。ハイドンと同時代の音楽家ヨハン・ニコラウス・フォルケル(Johann Nikolaus Forkel)がエステルハージー家のヴィオラ奏者であったと記しているのが唯一の情報とのこと。24曲のディヴェルティメントがストックホルムの音楽歴史博物館に残っています。
アントン・ノイマン(1740–1776)はチェコのブルノ生まれの音楽家。エステルハージ家に雇われている音楽家ではありませんが、ニコラウス侯の所蔵していた楽譜には彼のバリトントリオが含まれていたとのこと。

ニコラウス侯がバリトンの演奏を愛好していたことは広く知られていますが、バリトン曲の資料や楽譜の収集にも力を注いでいたとのことで、このアルバムに含まれるアントン・ノイマンの曲はニコラウス侯のコレクションということからフィルアップされたものでしょう。

奏者のポーランドバリトン三重奏団のメンバーは以下のとおり。

バリトン:カジミェシュ・グルシュチンキ(Kazimierz Gruszczyński)
ヴィオラ:ヴィオレッタ・プゥジェク(Violetta Płużek)
チェロ:マリア・サラプ(Maria Sarap)

ポーランド国内でバリトンの演奏活動する団体のようで、このアルバムリリース当時、ポーランド国内でバリトンを演奏するのはカジミェシュ・グルシュチンキただ一人だったそうです。

Hob.XI:96 Divertimento a tre per il pariton, viola e violincello : Baryton Trio [b] (before 1772?, 1769–71)
短調の有名曲。最初のラルゴは非常にしなやかな入り。バリトン、ヴィオラ、チェロの奏でるハーモニーが見事に溶け合い、アンサンブルの一体感が見事。派手な演奏ではありませんが、3人の奏者の呼吸がピタリとあって、音楽に穏やかなまとまりがあります。音が入り際、消え入り際のデリケートさがしなやかな流れにつながっているのでしょう。そして穏やかながら音楽に大きな起伏があり、仄暗いメロディーの陰りがしっとりと心に沁みてきます。
続くアレグロではチェロのリズムが軽いので音楽が軽やか。そして、一転してメヌエットにではシンプルながら深々とした響きを印象付けます。アンサンブルはバリトンが目立ちすぎることなく3つの楽器が対等にハーモニーを構成していることもまとまりの良さの一因でしょう。堅実な演奏が曲の面白さをしっかりと浮かび上がらせました。

次にブルクシュタイナーのバリトントリオ(ディヴェルティメント18番ニ長調)。ハイドンと同じ時を過ごしたことでしょうから、曲もハイドンの曲と似て、穏やかな曲調。Adagio con variazioni - Menuet - Finale. Prestoという3楽章構成。なかなかいい曲と思いながら聴いていきますが、メヌエットではやはり展開が単調に聞こえはじめ、逆にハイドンの凄さの引き立て役的になってしまいました。

3曲目はアントン・ノイマンの曲(ディヴェルティメント22番ト長調)。Adagio - Menuet - Poloneese - Allegroの4楽章構成。バリトンの開放弦をかなり鳴らす曲で、バリトンという楽器の面白さは感じられるものの、アンサンブルの成熟度は高くなく、やはりハイドンの曲とは差がつくところ。ただしエステルハージ家以外にもバリトンという楽器の演奏が広がっていたということを証するという意味で貴重なものでしょう。

Hob.XI:66 Divertimento a tre per il pariton, viola e violincello : Baryton Trio [A] (1767–68)
再びハイドンの幽玄な世界が戻ってきました。私はとても好きな曲。有機的につながっていくメロディーの面白さと、効果的な開放弦の音色の散らばり。醸し出されるゾクゾクするような不思議な世界観。これぞバリトントリオ! やはりハイドンは天才です。1楽章から惹きつけられます。この曲ではバリトンが完全に主役ですが、程よい穏やかさがアンサンブルをまとめます。
続く2楽章も、さらりとした演奏に漂う濃いニュアンス。特別な空気の中で演奏しているような独特の雰囲気。全員が軽々と演奏しながら張り詰めた緊張感を保っています。絶品です。そして3楽章は軽やかさのかぎりを尽くしたメヌエット。よくぞこのメロディーを思いついたと思える見事な展開の連続。ポーランドバリトン三重奏団、この軽さとリズムの冴えは見事。

最後はトマジーニの曲(ディヴェルティメント12番ト長調)。Allegro - Adagio - Allegrettoの3楽章構成。快活なリズムに乗って明るいメロディーが流れる楽しい曲。

ハイドンのバリトントリオ2曲とエステルハージ家に直接間接に関連のあった3人の作曲家のバリトントリオをまとめたアルバム。アントン・ノイマンの曲はハイドンの時代にバリトンという不思議が楽器のためにニコラウス侯が曲を書かせた例以外にもバリトントリオの曲が存在したことを証する例でもあります。ただし、ハイドン以外の3人の作品はハイドンとはやはりレベルが違い、結果的にハイドンの曲の素晴らしさを際立たせることになりました。ポーランドバリトン三重奏団の演奏はそうした曲自体の面白さをしっかりと伝える堅実かつ美しいアンサンブルが魅力の演奏でした。ハイドンの曲の評価は両曲とも[+++++]とします。



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2 Comments

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白井

基夫

更新をいつも楽しみにしています。
ツイッターからこっちにきています。

  • 2020/02/13 (Thu) 17:03
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Daisy

Daisy

Re: 基夫

白井さん、コメントありがとうございます。

拙いブログですが、こちらこそよろしくお願いいたします。

  • 2020/02/13 (Thu) 22:52
  • REPLY