作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

パドモア/ベズイデンホウトの歌曲集(ハイドン)

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深々とした情景描写のフォルテピアノの伴奏に乗ったのびやかなテノールを楽しめる歌曲集です。

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マーク・パドモア(Mark Padmore)のテノール、クリスティアン・ベズイデンホウト(Kristian Bezuidenhout)のフォルテピアノで、ハイドン、モーツァルト、ベートーヴェンの歌曲を収めたアルバム。ハイドン以外の収録曲はTOWER RECORDSなどのリンク先をご覧ください。収録は2014年5月、ロンドンの南西20kmのコバム(Cobham)にあるメニューヒンホール(Menuhin Hall)でのセッション録音。レーベルはharmonia mundi。

このアルバムも最近手に入れたもの。名テノール、マーク・パドモアに、伴奏が以前ハイドンのソナタ集で見事な演奏を聴かせたクリスティアン・ベズイデンホウトということで、どちらかというと伴奏の方に興味を惹かれたというのが正直なところ。

【新着】クリスティアン・ベズイデンホウトのソナタ集(ハイドン)

ソナタ集では、類まれな表現力によってフォルテピアノでも実に陰影に飛んだ描写が印象的でした。ソナタ集の記事でも触れた通り、パドモアとベズイデンホウトはこのアルバム以外にもシューベルトやシューマンのリートなども録音しており、格別の信頼関係があるのでしょう。

マーク・パドモアは調べてみると、リチャード・ヒッコクスのハイドンのミサ曲集の全ての曲のテノールを担当しているほか、天地創造ではマクリーシュ盤とハイティンク盤でそれぞれウリエル役を担当しています。声質は硬質で透明感がありながら、歌い回しはしなやかな気品あるテノールです。

このアルバムに収められたハイドンの歌曲は3曲、英語2曲にドイツ語1曲で、でこのアルバムの冒頭におかれています。

Hob.XXVIa:34 6 Original Canzonettas 2 No.4 "She never told her love" 「彼女は決して愛を語らなかった」 (William Shakespeare) [A sharp] (1795)
ハイドンの英語によるカンツォネッタ集の中でも、陰りのあるメロディーの美しい曲として知られる曲。ベズイデンホウトの序奏の入りから絶品。静寂の中に静かに響き始めるフォルテピアノがさっと聳つところのなんたる美しさ。弱音の諧調のなんたる豊かさ。まるでアンセル・アダムスのオリジナルプリントのような豊かなグラデーション。歌に入る前に伴奏に圧倒されてしまいます。パドモアはベズイデンホウトが描く情景を、あえて表現を抑えて引き立てるように淡々とメロディーを浮かび上がらせていきます。クリーンさと安定感から静けさのようなものを想起させる見事な歌唱。ドラマは伴奏が演出し、語るような歌唱がこの曲に込められた女性の心のひだのようなものを淡々と滲ませます。

Hob.XXVIa:41 "The Spirit's Song" 「精霊の歌」 (Anne Hunter) [f] (c.1795)
こちらもハイドンの歌曲の中でも幽玄な曲想の名曲。前曲同様、ベズイデンホウトの伴奏があまりに見事な御膳立て。パドモアも声量を落としてこの劇的な展開の曲の劇性よりもメロディーラインの静かな美しさを強調するような歌唱。冴え切った声色が精霊の世界にトリップさせてくれるよう。歌唱も伴奏も非常にデリケートなデュナーミクのコントロールに全神経を集中して、独特なこの曲の世界を描き切ります。

Hob.XXVIa:46 "Pensi a me sí fido amante" 「私を心から思って下さるの、恋人よ」 ("Vergiss mein nicht / Antwort auf die Frage eines Mädchens") [G] (c.1803)
3曲目は、滅多に演奏されない珍しい曲。手元にはこの演奏の他にはアメリンク盤、シュライアー盤しかありません。私も滅多に聴かない曲なので聴き覚えもありませんが、聴いてみると実に素朴な美しさに溢れた曲。歌詞の英訳を読むと甘い恋の歌。ベズイデンホウトの伴奏も可憐な微笑みをたたえ、パドモアも甘めの声色に転じ優しく語りかけるような歌唱で歌を重ねます。優しげなフォルテピアノのタッチに優しげな歌唱が幸せな気分に引き込んでいきます。

3曲通してきくと、曲想の異なる3つの歌を歌手と伴奏がそれぞれ巧みに表現を組み合わせで描き分けていることがわかります。特にベズイデンホウトの深い陰影の表現と弱音の精緻なコントロールが音楽が心に染みる深みを加えていると言っていいでしょう。3曲目はこの後に続くモーツァルトへの橋渡しになっていて、なぜかこの曲間だけアタッカ気味に入るのも面白いところ。もちろん、モーツァルトもベートーヴェンもハイドン以上に深い音楽を味わえることは言うまでもありません。ハイドンの3曲の評価は[+++++]とします。

(追伸)
ちなみに、お気づきのことかと思いますが、ブログのテンプレートを入れ替えました。レスポンシブとなりましたので、ブラウザーの横幅を変えるとデザインが連続的に変わります。これでようやくブログが近代化しました(笑)



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