作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

朝比奈隆/大阪フィルのオラトリオ「四季」1982年ライヴ(ハイドン)

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日本のオケの素晴らしさを堪能できるアルバムが続きます。

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朝比奈隆指揮の大阪フィルハーモニー交響楽団、大阪フィルハーモニー合唱団の演奏で、ハイドンのオラトリオ「四季」を収めたLP。収録はハイドンの生誕250年のアニヴァーサリーの1982年12月4日、大阪のザ・シンフォニーホールでのライヴ。レーベルはVictor。

ブルックナーの演奏で神格化されている朝比奈隆ですが、ブルックナー自体は嫌いではないものの朝比奈隆のブルックナーはあまり聴いていません。その朝比奈隆、意外にもハイドンはコンサートでよく取り上げていたらしく、私は朝比奈隆のハイドンファン。その印象を決定的にしたのが次の記事で聴いたアルバム。

2010/04/03 : ハイドン–交響曲 : 朝比奈隆のオックスフォード、99番(ハイドン)

初めは律儀な演奏と思いつつ聴いていると、オックスフォードの4楽章の入りが今までに聴いたとがないように弾みます。有名なメロディーですが、ここまで本質を捉えた演奏は今までに聴いたことがないほど。楽譜から曲の本質的な面白さを見抜く酔眼。このオックスフォードを聴いてから、朝比奈隆のハイドンは見かけるたびに手に入れています。今回手に入れたのは「四季」のLP。しかも極上のコンディションのもの。

ジャケットの写真は観客を入れない状態で正装のオケと合唱団が大阪ザ・シンフォニーホールのステージに並ぶモノクロ写真。そして裏面には観客が入った状態での同様のカラー写真があしらわれており、なんとなく祝祭感があると思って調べてみると、この年1982年はハイドン生誕250年であると同時にザ・シンフォニーホールのオープンした年なんですね。柿落とし公演は10月14日、同じく朝比奈隆指揮の大阪フィルの演奏で「ニュルンベルクのマイスタージンガー」前奏曲等だったとのこと。このアルバムの演奏はオープニングシーズン飾る大規模なオーケストラと合唱の演奏ということで、このようなジャケットになったものと思われます。

歌手は以下のとおり。

ハンネ:樋本栄(Sakae Himoto)
ルーカス:林誠(Makoto Hayashi)
シモン:湯浅富士郎(Fujiro Yuasa)

合唱指揮は木村四郎。驚くのはライナーノーツに合唱団の団員全員の名前が掲載されていること。数えてみたら総勢228名。オケの奏者の名前はありません。このコンサート、大阪フィルハーモニー合唱団にとっても記念碑的なものだったと思われます。

Hob.XXI:3 "Die Jahreszeiten" 「四季」 (1799–1801)
録音はホールの残響をうまく取り入れながらも雑音も気にならず、適度に鮮明な聴きやすいもの。LPならではのリアルな迫力が素晴らしいですね。冒頭からオーケストラは厳かさに満ちた演奏。テンポは遅めではありますが落ち着き払って悠然とした風格がありながらキビキビとして緊張感に満ちた入り。第1曲のレチタティーヴォで3人の歌手の声を確認。シモンの湯浅さんは少しこもり気味の声ながら安定感があり悪くありません。ルーカスの林さんは非常に伸びやかでよく通るテノール、そしてハンネの樋本さん、艶やかな美声ですね。第2曲の村人たちの合唱は流石に人数が多いだけに大河のような雄大さ。オーソドックスな入りですが、朝比奈隆のコントロールは揺るぎなく、入りからオケ、歌手、コーラス皆見事。第3曲のレチタティーヴォに入るところで、いきなり第4曲に飛びますが、このアルバム、レチタティーヴォの多くが省略されています。録音だけでなく実演で省略されたのかどうかはわかりません。コミカルに転じる第4曲のシモンのアリアの入りは見事に音楽が弾みシモンの歌も表情豊か。レチタティーヴォが省略されたことで、物語としては中途半端なになりますが、音楽的は緊密さが増しより祝祭感が高まります。春のクライマックスである第8曲を速めのテンポでグイグイと煽り、ここに至る構築感の演出の狙いがわかった気がします。やはり大局をしっかり押さえたコントロールは只者ではありませんね。

レコードの面を変えて夏。一転して陰りを丹念に描く描写の巧みさが印象的。ホルンのソロも抜群の安定感。前半のクライマックスである三重唱と合唱による「陽はのぼり」では、やはりテンポを一段上げて畳み掛けるように盛り上がります。これがただ雄大さを表現するだけでなく引き締まった印象を与えます。またハンネのアリアのコミカルなところのクッキリした表情づけは朝比奈隆ならでは。後半の「嵐は近づき」の激しさから「黒い雲は切れ」で穏やかさを取り戻すところの描写も劇的。ディティールをクッキリと仕上げながらも全体を見通したコントロールがしっかりと効いているところは流石です。

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秋に入ると美しい重唱が一際映えます。第20曲の「自然は勤労に報いてくれた」ではダイナミクスを圧縮してメロディーを際立たせる見事な演出にうっとり。これがその後のコーラスの圧倒的な迫力をも浮かび上がらせます。曲想が目眩く変わっていく秋の一曲一曲のドラマをクッキリと描き分けていく緻密さはまさに朝比奈マジック! ホルンが大活躍する第26曲「聴け、この大きなざわめきを」ではホルンをバリバリ鳴らすのではなく、クッキリとしたメロディーの美しさを浮かび上がらせるようバランスを慎重に保ち、この曲のメロディーラインの美しさに改めて気づかされます。

最後の冬。序奏は省略されていますが、入りの沈んだ表情の深さ、音楽の深さは見事。前半の第35曲ルーカスのレチタティーヴォまではオケのいきいきとした伴奏に乗った3人の歌手の見事な歌唱の連続。3人とも抜群に上手い。そして「くるくる回れ」のジプシー風のメロディーが分厚いコーラスで押し寄せ雰囲気が一変します。曲の描き分けはさらに鮮明になっていきます。この演奏白眉が第38曲のシモンのアリア。コントロールが行き渡ったオーケストラから生み出される表情のなんと豊かなこと。あまりの素晴らしさに惚れ惚れします。そして最後の第38曲「大いなる朝がやってきた」の軽やかながらなんと神々しい響き。歌手とコーラスが重なっていき最後のクライマックスを迎えます。見栄を切るような最後がなんとも素晴らしい終結。最後は拍手も収録されています。

ハイドン生誕250年と大阪ザ・シンフォニーホールのオープンを記念して行われたコンサート。大編成のオケとコーラスの迫力で聴かせるのではなく、ハイドンの音楽のいきいきとした素晴らしさで聴かせる匠の技。やはり朝比奈隆の音楽を表現するコントロール力は別格です。オックスフォードで聴かれたあのヒラメキがこの四季の随所に散りばめれています。一曲一曲の描き分けの見事さ、オケと歌手、コーラスを一体としてコントロールする統率力、全体を見通した確かな構築力、どれをとっても素晴らしいもの。歌手、コーラス、そしてオケの大阪フィルもそれに見事に応える素晴らしい演奏でした。このアルバム、全曲ではなく一部省略されているのが惜しいところですが、長大な四季を聴きやすくまとめたという意味では価値のあるものでしょう。おそらくCD化はされていないと思いますが、これは多くの人に聴かれるべき記念碑的な演奏でしょう。朝比奈隆、ブルックナーだけでなくハイドンにおいても素晴らしい演奏を残されましたね。評価は[+++++]といたします。



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4 Comments

There are no comments yet.

小鳥遊

このレコードは人気ありますよね。
いつも競り負けてしまって、未だに聴けていません(笑)

そして、取り上げられてしまったので、今後暫くは高値が付くこと間違いなし!

故に、益々聴きたくなってしまいました。

Daisy

Daisy

Re: タイトルなし

小鳥遊さん、コメントありがとうございます。

もしかして、競ってました?(汗) しばらくオークションから遠ざかっていたんですが、先日旅行に行った時に風呂上がりにオークションチェックして虫がうずき始めてチョコチョコとオークションで仕入れしてます。こちらもこのアルバム何回か見逃していたので、先日競って入手したばかりです。ふぅ(笑)

  • 2020/01/20 (Mon) 23:53
  • REPLY

小鳥遊

幸い競ってはないです(笑)

朝比奈さんの天地創造と四季は、最近は諦めて入札してなかったので。

このところは、余りオークションも使っていないですが、入札しても競う相手のいないものばかりです。



Daisy

Daisy

Re: 幸い競ってはないです(笑)

小鳥遊さん

>幸いせてなないです(笑)
よかったです(笑) ハイドン以外は深追いどころかあまりうろつきませんのでご心配なく!

  • 2020/01/22 (Wed) 14:48
  • REPLY