作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

絶品! 竹ノ内博明のソナタ集(ハイドン)

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新年最初のレビューはピアノソナタです。

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TOWER RECORDS / amazon(mp3)

竹ノ内博明のピアノによる、ハイドンのピアノソナタ4曲(Hob.XVI:37、XVI:21、XVI:25、XVI:39)を収めたアルバム。収録は2014年2月7日から9日にかけてドイツ、ニュルンベルク近郊のノイマルクト(Neumarkt in der Oberpfalz)のコンサートホール(Historischer Reitstadel)でのセッション録音。レーベルは独ARTALINNA。

このアルバム、年末にCDラックの掃除をしていて、あまり記憶にないアルバムということであらためて聴き直してみたところ、なかなかというか、あまりに見事な演奏と気づいて取り上げた次第。

奏者の竹ノ内博明さんは日本人ですが、ウェブサイトは英語のもの。

Hiroaki Takenouchi

ライナーノーツの略歴をさらってみると生まれは日本ですが、1997年に渡英し、王立音楽大学(Royal Collage of Music)でピアノ、作曲、フォルテピアノで学び、2012年からはスコットランド王立音楽院(Royal Conservatoire of Scotland)で教職に就いているそうです。アルバムもこのアルバムの他にディーリアスの管弦楽曲をピアノに編曲したものや、イギリスの現代作曲家のものが数枚リリースされています。ということで活動拠点はイギリスのようです。おそらく日本ではあまり知られていない人だと思いますが、このハイドンを聴く限り、視点が明確で、ハイドンの演奏のツボを押さえた見事な演奏。かなりの腕前と見ました。

このアルバムに収められたソナタは1770年代に作曲されたものということで、シュトルム・ウント・ドラング期直後のハイドンの創作に焦点を当ててくるなど選曲にもこだわりがありそう。しかもこのアルバム、ジャケットのアートワークはフィレンツェ近郊で取れるパエジナストーンと呼ばれる廃墟大理石によるもので、デザイン、タイポグラフィーともに凝ったもの。アルバム全体からアーティスティックな雰囲気が漂います。

Hob.XVI:37 Piano Sonata No.50 [D] (c.1780)
ピアノはスタインウェイ、録音会場は石造りの建物にあるホールで、響きが美しいですね。冒頭からピアノの美しい響きが印象的な素晴らしい録音。一音一音のタッチがクッキリと浮かび上がり、非常にわかりやすい模範的な演奏。ハイドンのメロディーラインに潜むコミカルなイメージをうまく汲み取って楽しげに弾みます。1楽章はオーソドックスに入りましたが、続く2楽章でグッと崩してきました。柔らかいタッチで訥々と語りかけるように演奏していきます。静寂の中にピアノが艶やかに響きます。そして、ことさら曲想を変えることなく自然にフィナーレに入ります。3つの楽章がひとつづきのように捉えた演奏。自然な語り口の面白さを、このソナタではじめて感じた次第。詩人ですね。

Hob.XVI:21 Piano Sonata No.36 [C] (1773)
この曲でも自然な入りが心地いいですね。気負いのない自然体のタッチから紡ぎ出される素朴な音楽の美しさ。特に左手のリズムが弾むので音楽に自然な躍動感が宿ります。そして右手からは遊び心がにじみ、演奏が楽しそう。ハイドンのソナタの素朴な魅力をストレートに表現しています。シンプルな曲ですがタッチが冴えているのでメロディーが交錯する面白さを存分に楽しめます。続くアダージョのなんという美しさ。余白のデザインで聴かせるように音がアーティスティックに散りばめられます。澄み渡るような透明感と自然な余韻の美しさに夢見心地。アダージョの詩情を爽やかに洗い流すような軽やかなフィナーレで覚醒(笑)

Hob.XVI:25 Piano Sonata No.40 [E flat] (1773)
入りの低音の暖かい音色が印象的。軽やかに弾むタッチは変わらず、音符の上で遊びまわるような楽しさに満ちた演奏。軽快な1楽章に続くのはメヌエットで、こちらもリズムが軽快に交錯する面白さを淡々と描くことで、この曲に意外にも深みを感じさせる見事な表現。

Hob.XVI:39 Piano Sonata No.52 [G] (1780)
冴え渡るタッチは変わらず、デリケートなメロディーの描写と、フレーズごと切替絵も冴えてもはや言うことなし。自在に遊びまわるメロディーの面白さに釘付けです。そしてこの曲では2楽章は美しいだけでなく語り口の多彩さに驚きます。紡ぎ出される音楽には奏者のイメージにしっかりと縁取りされていて、ハイドンの音楽を完全に自分のものにしています。そしてフィナーレも鮮やか。このアルバムで最も聴きごたえのある複雑な展開をこともなげに軽々とまとめます。この軽やかさこそハイドンの面白さ。見事。

いやいや驚きました。ハイドンが仕込んだソナタの面白さを完全に噛み砕いて、さらりと自然にまとめるさりげなくも見事な演奏に酔いしれました。緩徐楽章では間と静寂の美しさを極め、枯山水の飛び石のようなアーティスティックなリズム感が見事。枯山水というと侘び寂び的な印象につながりがちですが、音楽は艶やか。ん、よく考えるとこのイメージから触発されたのがジャケット写真のパエジナストーンかもしれませんね。そう考えると、このアートワーク、演奏のツボを押さえた見事なものかもしれません。このアルバム、所有盤リストに登録したのは2015年のこと。登録時には必ず聴くようにしているのですが、この演奏の詩情を聴き取れていませんでした。評価は全曲[+++++]に付け直しました!

おそらくSkunjpさんも気に入られるはずだと思います。これ逆道場破りの仕込みです。気づかれたら是非聴いてみてください!(笑)



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