作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

オリヴィエ・ヴェルネのオルガン四重奏と音楽時計曲集(ハイドン)

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今日はフランスの香り漂うオルガンのアルバムを。

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オリヴィエ・ヴェルネ(Olivier Vernet)のオルガン、アンサンブル・イン・オレ・メル(Ensemble ...in Ore mel...)の演奏でハイドンのピアノ四重奏曲4曲(Hob.XIV:12、XIV:13、XIV:11、XVIII:F2)、音楽時計曲6曲(Hob.XIX:27、XIX:31、XIX:30、XIX:28、XIX:29、XIX:13)、パルティータ(Hob.XVIIa:2)を収めたアルバム。収録は2008年2月1日から3日、南仏カンヌに近いムージャン(Mougins)のムージャン教会(église Mougins)でのセッション録音。レーベルは仏Ligia Digital。

このアルバム、先日取り上げたハンス=オラ・エリクソンによる音楽時計曲集について調べているときに発見して注文していたもの。オルガンを弾くオリヴィエ・ヴェルネのアルバムは以前に取り上げたことがあります。

2012/01/14 : ハイドン–協奏曲 : オリヴィエ・ヴェルネ/アンサンブル未開人によるオルガン協奏曲集(ハイドン)

以前取り上げたアルバムの方は、見ていただくとわかるとおり、何やら怪しい雰囲気が漂うアルバム。オケもアンサンブル未開人といわくありげ。ただ、演奏はなかなか良く、特にヴェルネのオルガンの独特な高揚感は鮮明に記憶に残っているんですね(笑) ヴェルネについては上の記事をご参照ください。

今日取り上げるアルバムではそのヴェルネが音楽時計曲も演奏しているということで、あの独特な雰囲気が乗ってくるかどうか気になるところ。しかも、曲目リストをみると、音楽時計曲はヴェルネの他にもう1人奏者がいて4手で演奏しているようなんですね。これは気になりますね。

このアルバムに含まれるコンチェルティーノは鍵盤楽器にヴァイオリン2丁、チェロの四重奏構成で、1760年ごろに作曲されたものばかり。1760年といえばその頃までに弦楽四重奏曲のOp.1や交響曲1番を作曲し、翌年にはエステルハージ家の副楽長に就任した創作のごく初期にあたります。

Hob.XIV:12 Concertino [C] (c.1760)
やはり、オリヴィエ・ヴェルネの艶やか、しなやかで明るい音色のオルガンは健在でした。オルガン自体の音色というより、圧倒的に鮮やかなタッチが生み出す高揚感でしょう。ハープシコードや現代ピアノで演奏されることが多い曲ですが、オルガンでの演奏になるとオルガンの存在感がグッと強くなります。ヴァイオリンとチェロはアコーディオンのように聴こえるのが不思議なところ。演奏の主導権は完全にヴェルネのオルガンにあり、弦楽器は完全に伴奏にまわります。2楽章のアダージョはオルガンが静謐に響き、そして終楽章は壮大流麗なオルガンの独壇場。ごく初期の作品にもかかわらずヴェルネの演奏で聴くと完成度が高く聴こえます。

Hob.XIX:27 MS. Niemecz No.2 (Hob.XVII:10) Allegretto [G] (1757–60)
Hob.XIX:31 MS. Wien No.6 Presto [C] (May–September 1765)
Hob.XIX:30 MS. Niemecz No.5 (Hob.III:63-IV) Presto [G] (Spring 1765)
続いて音楽時計曲が3曲続きます。音楽時計曲ばかり並べたアルバムとは異なり、口直し的に軽妙に響きます。音楽時計の再現ということからか、演奏はテンポを動かさずあえて機械的な素朴さを狙ったもの。元の楽譜がどのようになっているかはわかりませんが、4手の演奏ということで、音楽時計の演奏を忠実に再現しているのでしょうか。

Hob.XIV:13 Concertino [G] (c.1760)
アレグロ、アダージョ、フィナーレの3楽章構成。1楽章から展開の面白さに釘付けになります。次々と湧き上がるアイデアでメロディーがめくるめくように展開していきます。それをヴェルネが丁寧かつ流麗に浮かび上がらせていく様子はまさに快感。続くアダージョでもアイデアは尽きるどころか無尽蔵に噴出。若いハイドンの創意が溢れんばかり。そしてフィナーレはヴェルネがキレキレ。速いパッセージでも実に滑らかで表情豊か。響きをピニンファリーナがデザインしているような見事な流麗さ。

Hob.XIX:28 MS. Niemecz No.3 (Hob.III:70-IV) Allegro [C] (End of 1765)
Hob.XIX:29 MS. Niemecz No.4 (Hob.I:103-III) Menuetto [C] (1765)
Hob.XIX:32 MS. Niemecz No.4 (Hob.I:99-IV) Allegro [F] (1760–61)
もう3曲音楽時計曲が挟まります。メロディーが絡み合いながら展開することで4手での演奏とはっきりわか、ハーモニーもリッチでこれまで聴いたアルバムの中では一番音楽時計をイメージしやすいですね。音楽時計曲の演奏に一石を投じるものでしょう。このアルバムに収録されている6曲はいずれもハイドンのポピュラーなメロディーをもとにしたもので、この音楽時計曲は当時の人々にとって魅力的なものだったことがよくわかります。

Hob.XIV:11 Concertino [C] (1760)
モデラート、アダージョ、アレグロの3楽章構成。コンチェルティーノ3曲目ですが、メロディーと展開は似たところがないのが流石ハイドン。もはやヴェルネの流麗なオルガンに身を任せるばかり。グイグイドライブしていくヴェルネの恍惚感すら感じさせる見事な演奏にトランス状態寸前。一転、アダージョでは陰と陽の行き来のデリケートな描写が見事。この時代にしてすでに音楽に深みを感じさせます。この曲がこれほどの出来と初めて気づいた次第。フィナーレはあえてか儀式のような象徴的なメロディーで締めくくります。

Hob.XVIIa:2 Partita [F]
元々4手のための曲でハイドンの真作かどうか不明。この演奏以外にショルンスハイムがハープシコードを弾いたものしか手元にありませんので貴重な録音です。アレグロ、メヌエットの2楽章構成。非常に流麗な曲ですが、二つの楽章のメロディが似通っているのと、展開が単調なところはハイドンらしからぬところ。とはいえヴェルネとセドリック・メックラーのクッキリと旋律を浮かび上がらせる演奏は見事。

Hob.XVIII:F2 Concertino [F] (c.1760)
ホーボーケン番号はピアノ協奏曲の系列ですが、構成はピアノ四重奏曲。モデラート、アダージョ、アレグロ・アッサイの3楽章構成。明るく快活な1楽章に対して、2楽章のアダージョはハイドンならではの独創的なメロディーと展開が印象的。この2楽章の語り口の砕けながらも気品をたたえた演奏がヴェルネの真骨頂。そして3楽章も推進力爆発。これはホーボーケンが協奏曲と分類したのもうなづけます。いやいや演奏はまったく隙がなく完璧です。



オルガンの名手、オリヴィエ・ヴェルネによるハイドンの実にマイナーな曲ばかり集めたアルバムで、しかもコンチェルティーノでは珍しいオルガンによる演奏でしたが、オルガンで演奏することで主旋律の存在感が際立ち曲の面白さを再発見できる名演奏と言っていいでしょう。音楽時計曲では4手での演奏によってこれまでちょっと貧弱な印象のあった音楽時計曲のイメージを一新する快演でした。評価は全曲[+++++]とします。
このアルバム、私がつい最近入手した時は廉価でしたが、今amazonを見ると結構な値段になっちゃってます。とりあえずApple Musicで聴けるようですので、未聴の方は是非聴いてみてください。

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