【新着】バルト・ファン・レイン/ル・コンセール・ダンヴェルの交響曲80、81番(ハイドン)

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バルト・ファン・レイン(Bart Van Reyn)指揮のル・コンセール・ダンヴェル(Le Concert d'Anvers)の演奏で、ハイドンの交響曲80番、ピアノ協奏曲(Hob.XVIII:11)、交響曲81番の3曲を収めたCD。フォルテピアノの独奏はリュカス・ブロンデール(Lucas Blondeel)。収録は2016年8月27日、28日、ケルンの南にあるブリュール(Brühl)という街の聖マルガリータ教会(St. Margaretakirche)でのセッション録音。レーベルはouthere MUSICグループのFUGA LIBERA。
指揮者もオケもはじめて聴きます。指揮のバルト・ファン・レインは合唱指揮の出身。1981年ブリュッセル生まれで、アントワープ王立音楽院で合唱指揮を、ブリュッセル王立音楽院でオーケストラの指揮を、ハーグ王立音楽院で古楽を学び、当初はベルニウス率いるシュツットガルト室内合唱団のメンバーとして多くの録音に参加。その後合唱指揮者として活躍し、デンマークを中心に多くの合唱団を指揮。2012年にこのアルバムのオケであるル・コンセール・ダンヴェルを創設して活動しているとのこと。
フォルテピアノを弾くリュカス・ブロンデールもベルギーの人。以前ソナタ集のアルバムを取り上げていますので、略歴などはそちらをご覧ください。
2013/03/10 : ハイドン–声楽曲 : リースベト・ドフォス/リュカス・ブロンデールの「ナクソスのアリアンナ」など
このアルバム、調べてみるとおそらくバルト・ファン・レイン指揮のル・コンセール・ダンヴェルのデビュー盤でしょう。しかも選曲が渋い。ハイドンの交響曲でも80番、81番を最初に録音するとは、かなりの渋さ。激渋です(笑) 間に挟まれたピアノ協奏曲はハイドンの曲の中では一番演奏機会の多いものですが、交響曲と同時期である1784年ごろの作曲。ということでこのアルバムは1784年という、交響曲ではパリセットで一気に創作期の頂点に向かう直前に焦点を当てた選曲なんですね。解説をさらってみると、この頃にハイドンの交響曲作品がヨーロッパで出版され始め、それまでエステルハージ家のために書いていた作品がより広い聴衆に向けて書かれるようになりつつあったとのこと。これまで、パリセットの直前の曲ということでイマイチマイナーな存在だったこれらの作品に歴史的なパースペクティブの中でフォーカスしたなかなか本格的な企画ということになり、デビュー盤とはいえ企画意図は鮮明なものです。
しかも、演奏は極上です。
Hob.I:80 Symphony No.80 [d] (1784)
古楽器オケのバランスの良い響きが心地よい入り。バルト・ファン・レイン、相当耳の良い人との印象です。オケの響きが非常に美しい。教会での録音ですが残響は適度で、ハイドンの交響曲の端正な造形を絶妙なバランスで保ち、リズムもキレよく、短調の勢い良い入りながら端正なフォルムを描きます。オケが心地よく教会堂に響き渡る快感を味わえます。
アダージョに入っても響きの美しさは一貫しています。岩清水のような清らかさ。クセのないフレージングと透明感ある響きがそう感じさせるのでしょう。このハーモニーの透明感は合唱指揮で叩き上げた技かもしれませんね。しなやかなフレーズは各楽器の音色と音量が非常に緻密にコントロールされているからでしょう。
メヌエットは穏やかながらフレーズごとの表情の微妙な変化が巧みで、爽やかなのに実に濃い音楽が流れます。
フィナーレは非常にデリケートなフレージングで入り、すぐにめくるめくように盛り上がる楽しい曲調ですが、メヌエット同様、この表情付けが非常に巧みで痛快そのもの。優れたハイドンの交響曲の演奏が皆そうであるように力みは皆無。この軽さと爽やかこそハイドン。見事。
Hob.XVIII:11 Concerto per il clavicembalo(l'fortepiano) [D] (1784)
今までこの並びで聴いたことがなかったので、実に新鮮。この爽やかさ、前曲の余韻と調和して見事な繋がり。早いパッセージの爽やかさはバルト・ファン・レインならでは。ピアノで演奏されることが多い曲で、フォルテピアノの入りはちょっと音量不足気味に聴こえなくはないですが、聴き進むと逆にフォルテピアノのキレのいい音階がさらに爽やかさを強調するようで、これはこれでいい組み合わせ。ソロとオケが見事に噛み合って、協奏曲として火花を散らすというよりアンサンブルの見事さを狙っているよう。前曲同様、オケは極上、そしてフォルテピアノはキレキレで痛快極まりない素晴らしい。極上の録音で聴く極上の演奏にとろけそう。この演奏で聴くとモーツァルトのコンチェルト以上に華麗な響きを楽しめます。カデンツァも古典的な曲調を見事なテクニックで披露。
期待の2楽章は入りから絶美。ここではオケは裏方にまわり、ブロンデールの雄弁な表現力を際立たせます。古楽器らしく流れよりもリズムの刻みを若干強調することで、叙情に流れがち音楽が引き締まります。この楽章のカデンツァへの入りとオケへの引き継ぎの自然さが秀逸。ゾクゾクします。
フィナーレは期待通り極上。ブロンデールのタッチのキレは最高。オケが柔らかく雄大に響いて実に心地よい響き。最高。
Hob.I:81 Symphony No.81 [G] (1784)
またまた、全曲の余韻といい繋がり。湧き上がるオーケストラの美音。めくるめくような音の狂宴。このワクワク感の演出は見事。奏者全員がノッてます。古典の枠組みの中で音を楽しむという本来のあるべき姿を求めたような音楽。ハイドンの音楽の楽しさを理想的に実現したような素晴らしい演奏。この曲を書くときのハイドンの心境を共有したような気分に浸れます。ウィーンやヨーロッパの聴衆が熱狂したことがよくわかります。
続くアンダンテもしっとりとしたメロディーをバルト・ファン・レインが極上に仕立ててきます。メロディーを描くフルートの音色が実に美しい。中間部の鮮烈な響きも落ち着きがあってバランスを保ちます。
メヌエットは音楽自体に語らせるように、表情を抑えて入りますが、中間部のメロディーの朗らかさを引き立てるためでした。節度ある微妙な変化が聴き手の脳を刺激します。そしてフィナーレはやはりこのオケのバランスの良い巧さが光ります。よく聴くと弦のボウイングにもかなりの表情があり、緻密にコントロールされた快活さであることがわかります。
いやいや、これは素晴らしいアルバムです。一見創作期の谷間に見える時期の作品ではありますが、このアルバムの演奏で聴くと、パリセット以降の作品に劣るどころか、ハイドンの創作の変化とハイドンらしい晴朗な構成感を味わえる佳作であることがよくわかります。演奏のレベルは非常に高く、しかも個性で押し通すような演奏ではないため、ハイドンの作品を極上の味つけで味わえる王道を行くもの。交響曲の2曲は比較的録音が少ない中、キラリと光る名盤と言っていいでしょう。協奏曲の方も古楽器によるベスト盤と断じます。ということで評価は全曲[+++++]といたします。おすすめです!
これは、更なる録音を期待せざるを得ません。
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