【新着】ニコラ・スタヴィの「十字架上のキリストの最後の七つの言葉」(ハイドン)
今月に入ってこの曲3枚目です(笑)

TOWER RECORDS / amazon
ニコラ・スタヴィ(Nicolas Stavy)のピアノによるハイドンの「十字架上のキリストの最後の七つの言葉」と、アンダンテと変奏曲(Hob.XVII:6)の2曲を収めたSACD。収録は2006年1月、パリのサンマルセル寺院(Temple Saint Marcel)でのセッション録音。レーベルはスウェーデンのBIS。
このアルバムは最近手に入れたもの。実はニコラ・スタヴィのこの曲はMANDALAレーベルの演奏が手元にあって、その演奏から10年以上経っての再録音と思って注文したんですが、届いて中身を見てみると、MANDALAレーベルのリマスター盤ということで同じ演奏だったということ。まあ、元はCDでSACDになったので良いかと思って、気を取り直して聴いてみると、これが素晴らしい。MANDALA盤も鮮烈な印象はなかったものの、良い演奏だったという記憶があったので、こちらに手を出したわけですが、うっかり入れた注文が福をもたらしたという次第。
ちなみにハイドン愛好家の皆さんなら、ご存知の通り、BISレーベルはかつてKOCHレーベルに多数の名演の録音を残したマンフレート・フスのハイドン・シンフォニエッタ・ウィーンのディヴェルティメントやオペラの録音をBISレーベルでまとめてリリースしているんですね。KOCHレーベルの消滅に際して良い録音をしっかりと残すという素晴らしい働きをしたわけです。そして今回もMANDALAレーベルのアルバムはすでに廃盤となっていて、BISがそれを自らのレーベルに加えるという判断をしたこと自体が、この演奏の価値を物語っているということでしょう。
ピアニストのニコラ・スタヴィはフランスのピアニスト。パリ国立高等音楽院、ジュネーヴ音楽院で学び、2000年にショパンコンクールで特別賞の受賞を含む数多の国際コンクールで入賞し頭角を現した人。ブレンデルに師事し大きな影響を受けたとのこと。彼のサイトを見ると、録音は2002年以降で、このアルバムがおそらく2枚目の録音。直近はBISレーベルからアルバムをリリースしていますが、ティシチェンコ、ブリテン、コルンゴルド、フォーレなどが並び、レパートリーもかなりマニアックですね。
さて、これまでフォルテピアノとタンジェントピアノでの名演に続いて、ピアノでのこの曲の名演盤です!
Hob.XX:1C "Die sieben letzten Worte unseres Erlösers am Kreuze " 「十字架上のキリストの最後の七つの言葉」 (1787)
旧MANDALA盤もいい音だったんですが、SACDになって空気感のようなものが加わり、ピアノ響きが美しいですね。教会堂での録音ですが、残響は適度で鮮明さは保ってます。
スタヴィの演奏はメロディーラインの起伏を自然さを保ちながらもしっかりと描いていくもの。語り口の巧さが光ります。フォルテピアノとは比較にならないダイナミクスを表現できるピアノらしく、タッチの強弱をしっかりとつけての演奏。序奏からソナタに入ると美しいメロディーが次々と現れますが、ピアノならではの透明感と磨かれた音に打たれ続けるがごとき至福のひと時が続きます。すべてのソナタの音楽の流れを把握して、自身の音楽としてじっくりと紡ぎ出していくような落ち着いた展開。曲全体を俯瞰してしっかりと大きな流れを作っていく手腕は見事なもの。まさにこの曲の美しさに没入できます。なお素晴らしいのが弱音のコントロール。第3ソナタなど抑えた表現が絶美。緩徐楽章ばかりのこの曲にしっかりと構成感をもたらすのは静寂感がポイント。そして、第5ソナタのメロディーと伴奏の描き分け、第6ソナタの峻厳な強弱のコントラストなど聴きどころ多数。第6ソナタから第7ソナタにかけての展開の息を飲むような美しさ。7つのソナタが大河のように蕩々と流れていきます。
最後の地震はピアノらしくダイナミックなもの。ソナタの癒しをたちきり天地がひっくり返るような描写で締めます。
Hob.XVII:6 Andante con Variazioni op.83 [f] (1793)
そして、アンダンテと変奏曲もこの名曲の真価をしっかりと理解した演奏。変奏が重なり展開していく面白さと、キラめくようなメロディーの美しさ、ベートーヴェンの時代を先取りしたような展開力とこの曲に求められる聴かせどころを見事にまとめます。タッチの冴えも見事。やはり大局を押さえた語り口と構成力がスタヴィの魅力でしょう。
ピアニストの表現力を丸裸にしてしまうような、緩徐楽章ばかりの大曲を、デビューからまもない時期にこれだけ成熟した演奏を聞かせ、変奏曲では類まれな構成力を見せつけたということで、ニコラ・スタヴィの類稀な才能を明らかにした見事な録音と言っていいでしょう。このアルバムが廃盤にならず、BISのカタログに並び続けさせるという判断は酔眼です。MANDALA盤とともにお宝盤です。評価は両曲ともに[+++++]とします。

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ニコラ・スタヴィ(Nicolas Stavy)のピアノによるハイドンの「十字架上のキリストの最後の七つの言葉」と、アンダンテと変奏曲(Hob.XVII:6)の2曲を収めたSACD。収録は2006年1月、パリのサンマルセル寺院(Temple Saint Marcel)でのセッション録音。レーベルはスウェーデンのBIS。
このアルバムは最近手に入れたもの。実はニコラ・スタヴィのこの曲はMANDALAレーベルの演奏が手元にあって、その演奏から10年以上経っての再録音と思って注文したんですが、届いて中身を見てみると、MANDALAレーベルのリマスター盤ということで同じ演奏だったということ。まあ、元はCDでSACDになったので良いかと思って、気を取り直して聴いてみると、これが素晴らしい。MANDALA盤も鮮烈な印象はなかったものの、良い演奏だったという記憶があったので、こちらに手を出したわけですが、うっかり入れた注文が福をもたらしたという次第。
ちなみにハイドン愛好家の皆さんなら、ご存知の通り、BISレーベルはかつてKOCHレーベルに多数の名演の録音を残したマンフレート・フスのハイドン・シンフォニエッタ・ウィーンのディヴェルティメントやオペラの録音をBISレーベルでまとめてリリースしているんですね。KOCHレーベルの消滅に際して良い録音をしっかりと残すという素晴らしい働きをしたわけです。そして今回もMANDALAレーベルのアルバムはすでに廃盤となっていて、BISがそれを自らのレーベルに加えるという判断をしたこと自体が、この演奏の価値を物語っているということでしょう。
ピアニストのニコラ・スタヴィはフランスのピアニスト。パリ国立高等音楽院、ジュネーヴ音楽院で学び、2000年にショパンコンクールで特別賞の受賞を含む数多の国際コンクールで入賞し頭角を現した人。ブレンデルに師事し大きな影響を受けたとのこと。彼のサイトを見ると、録音は2002年以降で、このアルバムがおそらく2枚目の録音。直近はBISレーベルからアルバムをリリースしていますが、ティシチェンコ、ブリテン、コルンゴルド、フォーレなどが並び、レパートリーもかなりマニアックですね。
さて、これまでフォルテピアノとタンジェントピアノでの名演に続いて、ピアノでのこの曲の名演盤です!
Hob.XX:1C "Die sieben letzten Worte unseres Erlösers am Kreuze " 「十字架上のキリストの最後の七つの言葉」 (1787)
旧MANDALA盤もいい音だったんですが、SACDになって空気感のようなものが加わり、ピアノ響きが美しいですね。教会堂での録音ですが、残響は適度で鮮明さは保ってます。
スタヴィの演奏はメロディーラインの起伏を自然さを保ちながらもしっかりと描いていくもの。語り口の巧さが光ります。フォルテピアノとは比較にならないダイナミクスを表現できるピアノらしく、タッチの強弱をしっかりとつけての演奏。序奏からソナタに入ると美しいメロディーが次々と現れますが、ピアノならではの透明感と磨かれた音に打たれ続けるがごとき至福のひと時が続きます。すべてのソナタの音楽の流れを把握して、自身の音楽としてじっくりと紡ぎ出していくような落ち着いた展開。曲全体を俯瞰してしっかりと大きな流れを作っていく手腕は見事なもの。まさにこの曲の美しさに没入できます。なお素晴らしいのが弱音のコントロール。第3ソナタなど抑えた表現が絶美。緩徐楽章ばかりのこの曲にしっかりと構成感をもたらすのは静寂感がポイント。そして、第5ソナタのメロディーと伴奏の描き分け、第6ソナタの峻厳な強弱のコントラストなど聴きどころ多数。第6ソナタから第7ソナタにかけての展開の息を飲むような美しさ。7つのソナタが大河のように蕩々と流れていきます。
最後の地震はピアノらしくダイナミックなもの。ソナタの癒しをたちきり天地がひっくり返るような描写で締めます。
Hob.XVII:6 Andante con Variazioni op.83 [f] (1793)
そして、アンダンテと変奏曲もこの名曲の真価をしっかりと理解した演奏。変奏が重なり展開していく面白さと、キラめくようなメロディーの美しさ、ベートーヴェンの時代を先取りしたような展開力とこの曲に求められる聴かせどころを見事にまとめます。タッチの冴えも見事。やはり大局を押さえた語り口と構成力がスタヴィの魅力でしょう。
ピアニストの表現力を丸裸にしてしまうような、緩徐楽章ばかりの大曲を、デビューからまもない時期にこれだけ成熟した演奏を聞かせ、変奏曲では類まれな構成力を見せつけたということで、ニコラ・スタヴィの類稀な才能を明らかにした見事な録音と言っていいでしょう。このアルバムが廃盤にならず、BISのカタログに並び続けさせるという判断は酔眼です。MANDALA盤とともにお宝盤です。評価は両曲ともに[+++++]とします。
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