ピエール・アンタイ チェンバロ・リサイタル(白寿ホール)

コンサートの秋とばかりに、コンサートに通っています。

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日本アーティストマネジメント:ピエール・アンタイ チェンバロ・リサイタル

ハイドンがプログラムされているわけではありませんでしたが、ちょっと気になっていたコンサート。どうして気になっていたかというと、、、

2011/02/13 : ハイドン–室内楽曲 : アンタイ/クヴェール/ヴェルツィアーによるピアノ三重奏曲集

そう、以前レビューしたピアノトリオのアルバムが実に素晴らしかったからなんですが、チケットを取った後、よくよく確認してみると、以前のアルバムでフォルテピアノを弾いていたのはジェローム・アンタイ(Jérôme Hantaï)、今回のコンサートはピエール・アンタイ(Pierre Hantaï)。アンタイ違いかと思いきや、この2人、兄弟でした(笑)。しかも、この兄弟には、もう1人有名な奏者がいて、そちらもレビュー済みでした!

2011/11/23 : ハイドン–室内楽曲 : クイケン・アンサンブルによる「ロンドン・トリオ」

ロンドン・トリオでフラウト・トラヴェルソをバルトルト・クイケンとともに吹いていたマルク・アンタイ(Marc Hantaï)もこの兄弟とのこと。それぞれ生年月日をみるとマルク、ジェローム、ピエールの順でした。日頃奏者の背景はきちんと調べている方ではありますが、この辺りは把握外でした(笑)

そのピエール・アンタイ、1964年パリに生まれて、グスタフ・レオンハルトに触発されてチェンバロを学び始め、兄弟で活動しながら頭角を現し、同じく兄弟で活躍するクイケン兄弟やミンコフスキなどと共演を重ねているそうです。近年はル・コンセール・フランセを立ち上げ指揮にも活動領域を広げています。なおネットを検索してみると、何度か来日もしているようで、ラ・フォル・ジュルネなどにも来ていますね。



この日の会場は白寿ホール。小田急沿線の代々木八幡駅が最寄駅なのでうちからは非常に便利。ここははじめてです。株式会社白寿生科学研究所ということころが運営しているホールで、代々木公園脇のビルの7階にあります。

IMG_9252.jpeg

開場時間に到着しロビーのある7階に上がると代々木公園越しに新宿の高層ビルや初台のオペラシティが一望できる眺望。屋上にも出られて開放感があっていいですね。まずはいつも通りワインで血流を適度に活性化します(笑)

プログラムは以下の通り。またロビーに掲示されていた情報によると、当日使用したチェンバロは「Jan Kalsbeek 2000年製作 ミートケモデル」とあります。専門外でどのような楽器かわからないのでこのまま検索してみると、情報がありました。梅岡楽器サービスのコンサートレンタル用2段鍵盤チェンバロのジャーマンタイプで、オランダのベテラン作家Jan Kalsbeek氏によるM・MIETKEモデルということでした。歯切れの良い音色でバッハなどの演奏に適したモデルとのこと。こちらに画像があります。

梅岡楽器サービス:レンタル用2段チェンバロ

配布されたプログラムと掲示によると演奏される曲は以下の通り。事前に公表されていたものとちょこちょこ変更点があります。

ラモー:クラブサン小曲集より
 アルマンド、クーラント(1728)、内気(1741)、三つの手、サラバンド(1728)、つむじ風、ロンドー型式のジーグ(1724))
J.S.バッハ:アリア(イタリア風のアリアと変奏 BWV989より)
ヘンデル:序曲「忠実な羊飼い」より P.アンタイ編曲
ヘンデル:組曲「ボ―トンハウスの筆写譜」より
 プレリュード、アルマンド、クーラント、サラバンド、メヌエットと変奏、ジーグ
D.スカルラッティ:ソナタK.3、ソナタK.208、ソナタK.175
 (休憩)
J.S.バッハ:パルティータ 第6番 ホ短調 BWV830
D.スカルラッティ:ソナタK.871


私にとってははじめて聴く曲がかなりあります。バッハとスカルラッティは馴染みはなくはありませんが、ラモーとヘンデルはオーケストラもの以外はほとんど未聴。ということで実に新鮮な体験となります。

ホールは300席と室内楽向け。ホールの内装も綺麗でなかなかいいホールです。珍しくフカフカの座席で疲れるかと思いきやなかなかいい座り心地でした。設計はどこかと調べてみると、音響設計も含めて竹中工務店。この日の席は前から8列目のやや右。アンタイの表情が良く見え、響きも非常にいい席でした。

開演前のステージの真ん中に置かれたチェンバロはなかなかの存在感。バルダッキーノ様の脚部が伝統を感じさせます。

開演時間となり、ホール内客席の照明が落ちると、まずはスタッフが出てきてチェンバロの蓋を開けます。開演直前まで蓋を閉じているのは照明が当たって調律に影響することを避けるためでしょうか。すぐにピエール・アンタイが登壇、軽く客席に会釈してすぐに演奏に入ります。

最初のラモーは素晴らしい色彩感。ダイナミクスにかなり制限のあるチェンバロで表現の幅を広げるのは主にテンポとアゴーギク。かなり自在にテンポを動かしながらキレの良いタッチでグイグイ弾き進めます。フランス人らしく独特の華やかさがラモーの魅力とシンクロしている感じ。曲間を短めにとって、対比を浮かび上がらせるあたり、曲の組み合わせにもこだわりがあるようですね。一覧のラモーの曲の演奏を終えたところで、拍手。
続いてバッハ。同じ楽器の同じ音色ながら、一瞬でバッハの世界に変わります。楽器の説明にバッハの演奏に適すると書いてあったのも納得。まさに厳粛な雰囲気に変わります。バッハは1曲のみで、すぐにヘンデルへ。ヘンデルになると音数が増えます。これでもかというように音が畳みかけてくる感じ。アンタイの見事なテクニックを存分に披露。キリリと引き締まった曲想、堂々とした祝祭感、そして畳み掛けるような音階。チェンバロでの演奏でこれだけの迫力を表現するのは曲、演奏ともに見事ですね。配布されたプログラムではここで休憩が入る予定でしたが、ロビーの掲示でこの後のスカルラッティの後に休憩が変更されました。
スカルラッティには膨大な数のソナタがあり、どこかハイドンのソナタにも共通する感覚があるのでたまに聴きますが、アンタイのチェンバロでの演奏はハイドンの延長上のような印象よりも抽象的な、あるいは現代的な印象が伴うものでした。調律も影響したかもしれませんね。時折不協和音のような響きが印象的に混じりながら、予想外の展開が連続するという感じ。前半のラモーとヘンデルがビシッと決まっていたのに対して、なんとなく座りの悪い印象も少々残りました。

休憩中は、ロビー以外にも屋上のスカイテラスに出ることができます。これは良いですね。生憎この日は雲が重く垂れ込める天気でしたが、外の空気をすってのんびりできるのは貴重です。

休憩後も、スタッフがチェンバロの蓋を開けるところから入ります。休憩中も蓋を閉めていたんですね。バッハのパルティータ6番。やはりバッハは有無をも言わせぬものでした。チェンバロの響きは非常に美しいものの、優雅な印象はなく、険しく攻めるようなバッハ。速めのテンポで曲が進むうちにバッハの深遠な世界に引き込まれるよう。ここでも自在にテンポを動かしながら自ら感じるままにバッハの音符に戯れるアンタイ。奏者自身は無我の境地なのでしょう。こちらはチェンバロの響きの渦に巻き込まれていくような不思議な感覚になります。やはりバッハは偉大ですね。
そして、最後にスカルラッティを1曲。最後のスカルラッティはアルカイックな雰囲気を楽しむことができました。ピエール・アンタイは、このチェンバロリサイタルを聴きに来たコアなお客さんのあたたかい拍手にはにかみながら会釈で応え、何度かのカーテンコールの後、「バッハ」とだけつぶやき、アンコールにバッハを演奏。曲名の発表があったのかもしれませんが、バッハに明るいわけではないため、曲名は分からず。パルティータの時の深遠な世界にすぐに戻る見事な演奏。バッハを2曲演奏してコンサートを終えました。



アンタイ違いからチケットをとったコンサートでしたが、非常に良い響きのホールで、名手の手による演奏を堪能。結果的にチェンバロという楽器の魅力を生で実感でき、大変良い経験になりました。

外に出ると幸い雨は降り出しておらず、散歩にちょうど良い気候だったため、白寿ホールから下北沢まで散歩がてらのんびり歩いて帰途につきました。



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tag : ラモー バッハ スカルラッティ ヘンデル

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ハイドン(Franz Joseph Haydn)の膨大な録音をコツコツ集めてレビューしております。好きなものはお酒全般(ワイン、日本酒、モルトなど)、美味しいものを食べること、料理、鄙びた温泉めぐり、歌舞伎見物、スポーツクラブで泳ぐこと(美味しいお酒を呑むため!)などなど。私はなぜハイドンにはまったのか?

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(2019年3月31日)
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