絶美! ヤロスラフ・トゥーマの「十字架上のキリストの最後の七つの言葉」(ハイドン)
最近手に入れたアルバム。

TOWER RECORDS / amazon
ヤロスラフ・トゥーマ(Jaroslav Tůma)のフォルテピアノによる、ハイドンの「十字架上のキリストの最後の七つの言葉」を収めたSACD。収録は2003年8月30日から31日にかけて、場所はブラハとのみ記載されています。レーベルはチェコのPRAgA Digital。
フォルテピアノを弾くヤロスラフ・トゥーマははじめて聴く人。いつも通り軽くさらっておきましょう。1956年プラハ生まれの鍵盤楽器奏者で、オルガンからフォルテピアノ、クラヴィコードなどを弾き、現在はプラハ音楽演劇アカデミーで教職にある人。プラハ音楽院出身で卒業後オルガン奏者として数々のコンクールで優勝し頭角を現しました。その後はチェコを中心にオーケストラとの共演などで活躍するとともに、アルバムもかなりの数リリースされています。彼のサイトを見ると最近はARTA Recordsというレーベルからアルバムがリリースされています。バッハの録音が多いようですが、他にはチェコやボヘミアの作曲家、そしてトゥーマ自身の曲もあることから作曲もするよう。ハイドンの曲に関してはこのアルバムの他に音楽時計の曲がリリースされているようです。
このアルバムを取り上げたのは、もちろん演奏が素晴らしいからに他なりませんが、加えて録音も理想的。自然体の演奏ですが、7曲のそれぞれのソナタの起伏をしっかりと描く息遣いが素晴らしい演奏なんですね。
Hob.XX:1C "Die sieben letzten Worte unseres Erlösers am Kreuze " 「十字架上のキリストの最後の七つの言葉」 (1787)
広い空間に心地よく残響が広がる素晴らしい録音。SACD-Hybridでマルチチャネルですがステレオで聴いても非常に自然な残響が美しいですね。楽器は1806年製のワルターのコピー。まずはフォルテピアノの響きの美しさに耳を奪われます。トゥーマの演奏は自然体で淡々と演奏していくもの。適度なアゴーギクに適度なアクセント、そして適度なコントラストがついた実に自然なもの。かといって平板さや単調さは微塵もなく、いきいきと音楽が躍動します。緩徐楽章が続くこの曲から迸る音楽を見事に表現しています。
序奏から自然な音楽の美しさに引き込まれます。ソナタに入ると主旋律のメロディーの美しさを知り尽くしているように訥々と語り始めます。聞き進めていくうちに描くメロディーの起伏はかなり大きく表現も大胆になってきていますが、自然な音楽の流れが切れることはありません。まるで宇野重吉の語りで物語を聴いているような、安心感に包まれながら物語の展開に引き込まれるよう。ソナタが進むにつれ、その名調子の魅力にどっぷりと浸かります。強音の部分でも響きの美しさは損なわれず、フォルテピアノという楽器が美しく響く範囲での演奏。この辺のタッチのコントロールはまさに絶妙。終始フォルテピアノの美しい響きに包まれます。この丁寧なタッチの演奏がこの曲本来のメロディーの美しさをさらに際立たせます。第3ソナタの入りなど絶美の極み。ソナタごとにしっかりとクライマックスを設けて、大きな波に揺られながら、純粋に祈りの心境に昇っていくような不思議な感覚に満たされていきます。それまでゆったりとしたテンポでじっくりと描いていたものが、オーケストラ版ではピチカートで演奏される第5ソナタに入ると意外に速いことで、キリリとしたコントラストをつけてきます。大曲だけにしっかりと起伏をつけてきました。そして第6ソナタでは劇的な印象を、第7ソナタでは諦観にもにた枯淡の境地に至ります。そして一番びっくりしたのが最後の地震。かき鳴らすように強音を響かせるような演奏も多い中、なんとかなり力を抜いて演奏。速度はやや遅めなくらいですが、地震の記録映像を落ち着いて見るような風情。最後に品位を保ちながら、この最後の場面に込められた心情を全く異なる形で表現するあたり、意表を突かれましたが、これは見事に締まりました。
この「十字架上のキリストの最後の七つの言葉」という曲、ハイドンは渾身の作ということで、オリジナルの管弦楽版をこのクラヴィーア版、弦楽四重奏版、オラトリオ版に編曲していますが、このヤロスラフ・トゥーマの演奏、クラヴィーア版の面白さを最も際立たせる名演奏と言っていいでしょう。クラヴィーア版のお気に入りはインマゼール盤でしたが、調べてみると廃盤になっちゃっていんですね。録音の良さをあわせると、このトゥーマ盤が現在のベスト盤と断じます。評価はもちろん[+++++]とします。未聴の方、是非聴いてみてください!

TOWER RECORDS / amazon
ヤロスラフ・トゥーマ(Jaroslav Tůma)のフォルテピアノによる、ハイドンの「十字架上のキリストの最後の七つの言葉」を収めたSACD。収録は2003年8月30日から31日にかけて、場所はブラハとのみ記載されています。レーベルはチェコのPRAgA Digital。
フォルテピアノを弾くヤロスラフ・トゥーマははじめて聴く人。いつも通り軽くさらっておきましょう。1956年プラハ生まれの鍵盤楽器奏者で、オルガンからフォルテピアノ、クラヴィコードなどを弾き、現在はプラハ音楽演劇アカデミーで教職にある人。プラハ音楽院出身で卒業後オルガン奏者として数々のコンクールで優勝し頭角を現しました。その後はチェコを中心にオーケストラとの共演などで活躍するとともに、アルバムもかなりの数リリースされています。彼のサイトを見ると最近はARTA Recordsというレーベルからアルバムがリリースされています。バッハの録音が多いようですが、他にはチェコやボヘミアの作曲家、そしてトゥーマ自身の曲もあることから作曲もするよう。ハイドンの曲に関してはこのアルバムの他に音楽時計の曲がリリースされているようです。
このアルバムを取り上げたのは、もちろん演奏が素晴らしいからに他なりませんが、加えて録音も理想的。自然体の演奏ですが、7曲のそれぞれのソナタの起伏をしっかりと描く息遣いが素晴らしい演奏なんですね。
Hob.XX:1C "Die sieben letzten Worte unseres Erlösers am Kreuze " 「十字架上のキリストの最後の七つの言葉」 (1787)
広い空間に心地よく残響が広がる素晴らしい録音。SACD-Hybridでマルチチャネルですがステレオで聴いても非常に自然な残響が美しいですね。楽器は1806年製のワルターのコピー。まずはフォルテピアノの響きの美しさに耳を奪われます。トゥーマの演奏は自然体で淡々と演奏していくもの。適度なアゴーギクに適度なアクセント、そして適度なコントラストがついた実に自然なもの。かといって平板さや単調さは微塵もなく、いきいきと音楽が躍動します。緩徐楽章が続くこの曲から迸る音楽を見事に表現しています。
序奏から自然な音楽の美しさに引き込まれます。ソナタに入ると主旋律のメロディーの美しさを知り尽くしているように訥々と語り始めます。聞き進めていくうちに描くメロディーの起伏はかなり大きく表現も大胆になってきていますが、自然な音楽の流れが切れることはありません。まるで宇野重吉の語りで物語を聴いているような、安心感に包まれながら物語の展開に引き込まれるよう。ソナタが進むにつれ、その名調子の魅力にどっぷりと浸かります。強音の部分でも響きの美しさは損なわれず、フォルテピアノという楽器が美しく響く範囲での演奏。この辺のタッチのコントロールはまさに絶妙。終始フォルテピアノの美しい響きに包まれます。この丁寧なタッチの演奏がこの曲本来のメロディーの美しさをさらに際立たせます。第3ソナタの入りなど絶美の極み。ソナタごとにしっかりとクライマックスを設けて、大きな波に揺られながら、純粋に祈りの心境に昇っていくような不思議な感覚に満たされていきます。それまでゆったりとしたテンポでじっくりと描いていたものが、オーケストラ版ではピチカートで演奏される第5ソナタに入ると意外に速いことで、キリリとしたコントラストをつけてきます。大曲だけにしっかりと起伏をつけてきました。そして第6ソナタでは劇的な印象を、第7ソナタでは諦観にもにた枯淡の境地に至ります。そして一番びっくりしたのが最後の地震。かき鳴らすように強音を響かせるような演奏も多い中、なんとかなり力を抜いて演奏。速度はやや遅めなくらいですが、地震の記録映像を落ち着いて見るような風情。最後に品位を保ちながら、この最後の場面に込められた心情を全く異なる形で表現するあたり、意表を突かれましたが、これは見事に締まりました。
この「十字架上のキリストの最後の七つの言葉」という曲、ハイドンは渾身の作ということで、オリジナルの管弦楽版をこのクラヴィーア版、弦楽四重奏版、オラトリオ版に編曲していますが、このヤロスラフ・トゥーマの演奏、クラヴィーア版の面白さを最も際立たせる名演奏と言っていいでしょう。クラヴィーア版のお気に入りはインマゼール盤でしたが、調べてみると廃盤になっちゃっていんですね。録音の良さをあわせると、このトゥーマ盤が現在のベスト盤と断じます。評価はもちろん[+++++]とします。未聴の方、是非聴いてみてください!
- 関連記事
-
-
絶品! アニカ・ヴァヴィッチのソナタ(Hob.XVI:19)(ハイドン)
2019/12/26
-
パトリック・ホーキンスのスクエアピアノによるソナタ集(ハイドン)
2019/10/30
-
【新着】ニコラ・スタヴィの「十字架上のキリストの最後の七つの言葉」(ハイドン)
2019/10/26
-
アレクセイ・リュビモフの「十字架上のキリストの最後の七つの言葉」(ハイドン)
2019/10/17
-
絶美! ヤロスラフ・トゥーマの「十字架上のキリストの最後の七つの言葉」(ハイドン)
2019/10/09
-
【新着】名盤! エカテリーナ・デルジャヴィナの変奏曲と小品(ハイドン)
2019/08/12
-
グレン・グールド1958年ストックホルムでのXVI:49(ハイドン)
2019/06/28
-
ジャン=ベルナール・ポミエのXVI:37(ハイドン)
2019/05/11
-
【新着】井上裕子のフォルテピアノによるXVI:46(ハイドン)
2019/04/16
-