作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

【新着】ファレンティン・ラドゥティウのチェロ協奏曲2番(ハイドン)

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協奏曲ものが続きます。

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TOWER RECORDS / amazon(mp3)

ファレンティン・ラドゥティウ(Valentin Radutiu)のチェロ、ルーベン・ガザリアン(Ruben Gazarian)指揮のハイルブロン・ヴュルテンベルク室内管弦楽団(Württenbergisches Kammerorchester Heilbronn)の演奏でハイドンのチェロ協奏曲2番、アンリ・カサドシュ(Henri-Gustave Casadesus)のチェロ協奏曲ハ短調(J.C.バッハ:チェロ協奏曲 ハ短調 W.C77)、ジャン=バティスト・ジャンソン(Jean-Baotiste Aimé-Joseph Janson)のチェロ協奏曲ニ長調の3曲を収めたアルバム。収録は2016年6月27日から29日、シュトッツガルトの北の街、オッフェナウ(Offenau)のSalineという施設。レーベルはhänssler CLASSIC。

このアルバム、最近の新譜を物色していて手に入れたもの。チェリストも指揮者もはじめて聴く人ということで、いつものことながら新鮮な気分。

ファレンティン・ラドゥティウは1986年ミュンヘン生まれのチェリスト。ミュンヘン放送響のチェロ奏者だった父の手ほどきで6歳からチェロをはじめ、クレメンス・ハーゲン、ハインリッヒ・シフ、ダヴィド・ゲリンガスら名チェリストに師事し、2008年にはカール・ダヴィドフ国際コンクールで第1位と特別賞を同時受賞して頭角を現しました。ラドゥティウという不思議な響きの名前は、父がルーマニアから1977年に亡命したとのことで、ルーマニアの名前なんでしょう。彼のウェブサイトでディスコグラフィーを調べてみると、すでにハイドンの1番もリリース済みでした。ということで1番も追加注文です(笑)

指揮者のルーベン・ガザリアン、はじめて聴く人ではありませんでした! 調べてみると手元にあの、足でホルンを操るフェリックス・クリーサーのアルバムでホルン協奏曲の伴奏を務めていました。もちろんこのアルバムは記事にしています。しかも記事にしていないアルバムでもさらに2枚のアルバム(mDGのトランペット協奏曲、mDGの雌鶏)でもタクトをとっています。いやいや今更ですが記憶力に陰りが忍び寄ってます(苦笑)。どのアルバムのオケは今回のアルバムと同じハイルブロン・ヴュルテンベルク室内管弦楽団。調べてみると、このオケはアルゲリッチのハイドンのピアノ協奏曲の伴奏を務めたイエルク・フェルバーが1960年に設立し、2002年からルーベン・ガザリアンが芸術監督兼首席指揮者を務めていましたが、昨年2018年夏よりケース・サリオーネ(Case Salione)に引き継いだとのことです。

ということで、肝心の演奏です。

Hob.VIIb:2 Cello Concerto No.2 [D] (1783)
実にゆったりとして力の抜けた序奏から入ります。録音会場はウェブで調べると平土間の体育館のような感じのホール。それにしては響きもなかなかよく、オケの響きが良く溶け合ったいい録音。ラドゥティウのチェロは伴奏の自然さに呼応してか、こちらもリラックスして自然な入り。虚心坦懐、無欲というか、実に自然な演奏。ハイドンはこう演奏すれば曲の美しさが際立つことを知っているよう。適度に華やかで、抑制も効いて、古典期の協奏曲の理想的な演奏と感じます。そしてリズムは重くなく、むしろ軽やか。速いパッセージをしっかり弾くことで落ち着いた印象も残します。華がないかというとそうではなく、テクニックを誇示しない分音楽自体の魅力が滲む秀演。まだ若いのにこの円熟ぶりはどうでしょう。伴奏のガザリアンとの息もピッタリで、素晴らしい一体感。長大な1楽章は夢見心地です。驚いたのがカデンツァ。Tobias PM Schneid作とありますが、現代音楽風で非常に長いもの。ここで自己主張するということだったんですね。ここでも力むことなく冴えた弓裁きを披露。素晴らしい1楽章でした。
アダージョは予想通り、節度を保ちながらチェロが程よく鳴く見事なもの。全く力みなく非常にリラックスして演奏を楽しんでいるよう。オケの方も余裕たっぷりにさらりとチェロを支える職人芸。音量を抑えてもメロディーが心地良く響きます。2楽章のカデンツァも不協和音を織り交ぜながら訥々と語るような変わったものですが、不思議にこの楽章の静けさを踏まえてマッチしているように聴こえます。
フィナーレは独特の郷愁を誘うような入りからチェロが鳴き気味。引きずるような弓裁きで速いパッセージに陰りを加え、ようやく個性的な色をつけてきました。オケもさっぱりとしながら豊かなニュアンスを残す、ソロとマッチした演奏で花を添えます。

ハイドンのト長調協奏曲は名演揃いですが、このラドゥティウの演奏は薄化粧の美人が爽やかに微笑んでいるような魅力がありますね。協奏曲はソロのテクニックやオケとの掛け合いなど、様々な面白さがありますが、ラデゥティウの冴えたアプローチは、ハイドンの傑作コンチェルトの魅力を最大限に活かす見事なアプローチと言っていいでしょう。レビューのために何度が聴きましたが、全く聴き飽きるどころか、聴くたびに新たな発見がある、実に深い演奏です。私は気に入りました。ということで評価は[+++++]といたします。ハイドンの後の2曲も実に面白い曲。アルバム自体の企画も素晴らしい名盤です。未聴の方は是非!



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