作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

【新着】仏美女4人組ツァイーデ四重奏団のOp.50(ハイドン)

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またしてもご無沙汰しています。ようやく道場破りに対応できる体制が整いましてございます(笑)

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ツァイーデ四重奏団(Quatuor Zaïde)によるハイドンの弦楽四重奏曲Op.50のNo.1〜No.6の6曲を収めた2枚組のCD。収録は2015年2月、7月、9月、フランス北東部のザールブリュッケンにも近いメス(Metz)にあるアルセナルコンサートホールでのセッション録音。レーベルは仏NoMadMusic。

このアルバム、しばらく前に当ブログの影のご意見番ことSkunjpさんからおすすめいただいたもの。Skunjpさんは特にクァルテットもの、室内楽もの、フルートものには冴え渡る鋭敏な耳と尋常ならざる経験から、当ブログの記事を上回る多次元解析によりアルバムの真価をあぶり出してしまうキレ者ゆえ、おすすめいただいたアルバムを聴くにはこちらも身を清めてから聴かねばならぬほどの緊張感を持って臨まざるを得ません(笑) というか、当家もApple Musicなるネット環境がありますが、そこそこいい音はするものの、CDとはまだレベル差があるということで、CDの到着を待っていたのでした。
下手な前振りでスミマセン(笑)

若手のクァルテットを聴くのは実に楽しみなもの。いつも通り、所有盤リストに登録して、録音年、録音会場をさらっていると、このアルバムの録音会場は初めてのところ。いつも録音会場は名称からGoogle Mapsで場所を調べ、会場の外観、内観をネットの情報で調べてイメージをしっかり焼き付けて録音を聴くようにしているのですが、このフランスのメスという街のアルセナルコンサートホールの内観を見てビックリ! イタリアヴィツェンツァにあるパラディオのテアトロ・オリンピコのような新古典主義的オーラが漂うアーティスティックなインテリアに目が釘付けです。調べてみると、このホール、スペインの建築家リカルド・ボフィルの設計でした。かつて建築を学んでいた頃に強く印象付けられた建築家でもあります。日本でも銀座の資生堂の赤いビルやラゾーナ川崎などの設計を担当しています。もう、ホールからアーティスティックな音がしそうな予感です!

さて、奏者のツァイーデ四重奏団ですが、ジャケットをご覧の通り、ヴィジュアル系。美麗な女性4人のクァルテットですが、アルバムの作りや録音会場からしてもヴィジュアル売りになっていなところは流石なところ。設立は2009年とハイドンのアニヴァーサリーイヤーであるのに加えて2012年にはウィーンで開催されたヨゼフ・ハイドン室内楽コンクールで1位とハイドンの作品のベスト演奏賞に輝いています。アルバムのライナーノーツにはハイドンのみならず現代音楽まで広いレパートリーを誇りますがハイドンとは格別な縁で結ばれているよう。メンバーは以下の通り。

第1ヴァイオリン:シャルロッテ・マクレ(Charlotte Maclet)
第2ヴァイオリン:レスリー・ブーラン・ラウレ(Leslie Boulin Raulet)
ヴィオラ:サラ・シュナフ(Sarah Chenaf)
チェロ:ジュリエット・サルモナ(Juliette Salmona)

さて、肝心の演奏です。

Hob.III:44 String Quartet Op.50 No.1 [B flat] (1787)
冒頭から非常にシャープな弓使いにハッとさせられます。Skunjpさんの指摘通りいきいきとヴィヴィッドで、しかも格調高さがあります。これはアンサンブルの線と音色がピシッと揃って、テンポにも揺らぎがなく確信に満ちた音楽が流れているからでしょう。特に第1ヴァイオリンのシャルロッテ・マクレの音色が冴えて、時折クレーメルを思わせるような冴えを聴かせるなかなかのキレ味。この冴えに特化すると以前取り上げたキアロスクーロになるのですが、そこは古典のハイドンということで、端正さを保っているので聴きやすいのでしょう。
アダージョでどう来るかと身構えていると、ゆったりとするのではなく音符に戯れ遊びまわるような軽快さを前面に出した演奏。むむ、この曲の面白さを知り抜いていますね。ここでもシャルロッテ・マクレのヴァイオリンのボウイングの冴えが聴きどころ。まさにハイドンの音楽の幸福感が軽妙に沁みてきます。
メヌエットはチェロをはじめとして軽やかさが心地よいですね。クァルテットに一貫した音楽が流れる見事なアンサンブルと言っていいでしょう。
そして締めのフィナーレは軽妙の限りを尽くす妙技を披露。ここでも技術的な安定感は見事。テクニックの誇示ではなく音楽が淀みなく自在に流れる素晴らしいフィナーレ。最後のコミカルなハッタリも含めてスカッとするような素晴らしい演奏です。見事。

Hob.III:45 String Quartet Op.50 No.2 [C] (1787)
続くNo.2も冴えわたるように入ります。前曲で録音について触れませんでしたが、演奏のシャープさを活かすようにシャープな録音。意外に残響は多くなく、アルセナルコンサートホールの響きを堪能するようなイメージではありませんが、精緻な録音でクァルテットの演奏を存分に楽しむことができます。それにしても4人のアンサンブルの揃い方は音楽的に相当練られていますね。ヴィヴィッドなのは、高音よりなバランスなのに加えてフレーズのアクセントやデュナーミクがシャープだからということなんですが、その引き継ぎも含めて音楽的に非常に自然に流れているからに他なりません。これは相当つめてアンサンブルを磨いているに違いありませんね。
2楽章の陰りはキレから直裁な表現にシフトすることで迫力を増してきます。そしてメヌエットで軽妙な音楽に戻ります。そしてフィナーレはもはや自家薬籠中。自在の限りを尽くすアンサンブルに打たれます(笑)

Hob.III:46 String Quartet Op.50 No.3 [E flat] (1787)
構成の面白さがポイントの曲。やはり第1ヴァイオリンのシャルロッテ・マクレのキレ方が尋常ではありませんね。節度あるフレージングなのにどうしてこれほどアーティスティックなオーラを出せるのでしょう。まさに現代のハイドンの理想の演奏と言っていいのではないでしょうか。ヴァイオリンはどうしても表現意欲が先に立ちがちな楽器ですが、これほど古典の均衡を保ちながらアーティスティックに表現できる人はなかなかいないですね。2楽章のアダージョに入るとその表現力は圧倒的な領域に。孤高のメロディーが響き渡ります。その勢いのままメヌエットに入りますが、中間部が息抜きになる程、緊張感を保ち続けます。フィナーレはスリリングな転調と畳み掛けるような迫力にまたまた打たれます(笑)

Hob.III:47 String Quartet Op.50 No.4 [f sharp] (1787)
CD2枚め。以降は簡単に。このクァルテット、これまでのところ曲ごとのムラはほとんどなく、安定してキレてます。これが技術的なものか、収録の追い込みかは実演を聴いてみないとわからないですね。録音の方は少しバランスが変わって、低音が前3曲より少し膨らんでます。不思議な曲想の2楽章が特徴の曲ですが、現代音楽も得意とするクァルテットらしく、絶妙なるデリケートさでこの精妙な音楽を表現していきます。驚いたのがフィナーレ。これまでの演奏よりも一層砕けて遊びまわる感が素晴らしいですね。

Hob.III:48 String Quartet Op.50 No.5 (II:"Der Traum" 「夢」) [F] (1787)
録音のバランスはCD1と同じに戻りました。険しい表情はタイトなアンサンブルでしっかり出しながら軽さも保つ妙技。「夢」と名付けられた2楽章は、夢のほんのりとした雰囲気よりはくっきり冴えた夢という感じ。いつも不思議に思う2楽章から3楽章への展開。ハイドンの創意爆発のハッとするようななじまなさ(笑)。この演奏で聴くとその不思議さが際立ちますが、これも演奏意図でしょうか。メヌエットとしてもさらにハイドンの創意爆発の不思議な曲なんですが、シャルロッテ・マクレの妙技にマスキングされます(笑) そしてフーガのような終楽章まで精妙さに満ちた演奏。

Hob.III:49 String Quartet Op.50 No.6 "Frosch" 「蛙」 [D] (1787)
最後の曲。晴朗なこの曲の魅力を伸びやかなヴァイオリンがさらに引き立てます。そして一転、峻厳な影を感じさせる2楽章、再び突き抜けるような明るさに満ちたメヌエットと続き、聴きどころのカエルの鳴き声のようにざわめく終楽章へ。カエルの鳴き声以上にそのあとの鮮やかな展開、ヴァイオリンのキレが見事。ツァイーデの演奏は一貫してヴィヴィッドでした。

いやいや、美麗な女性クァルテットではありますが、実力はかなりのもの。ハイドンのクァルテットの魅力を存分に表現できる類い稀な表現力を持ったクァルテットでした。アルバムもこれまでにモーツァルト、フランク、ショーソン、ヤナーチェク、マルティヌーとリリースしており、古典に特化はしていませんが、ハイドンは玄人好みのOp.50から収録したことを考えると、さらなる録音も期待できそうです。これだけの演奏をするわけですから、次はこれまた玄人好みでOp.54/55あたりを攻めて欲しいですね。ということで、評価は全曲[+++++]といたします。

流石にSkunjpさんの繰り出す技はキレておりますな。またの道場破りお待ちしています(笑)



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1 Comments

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Skunjp

見事な返り討ち!ありがとうございます!笑

最近はバッハに回帰して、ハイドンはご無沙汰なのですが…デイジーさんこんにちは!見事な返り討ちにあってしまいました。笑

CD を聞くのに録音会場から入られると言う、まさに多次元的音楽鑑賞のあり方に兜を脱ぎました。まいりました!!!

それにしても演奏の方を褒めていただいておられますのでホッとしました。

このような演奏が増えてくればハイドン鑑賞の世界もますます広がるのでしょうね!

夏の暑さも幾分和らぎ、これからは室内楽の季節です。楽しみです。

とはいえ私は今、ゴールドベルクの世界にはまり込んでいたりで、さらに影の薄い陰のご意見番になりそうですが…どうぞご勘弁を!

でも時々ブログ見ています!お体に気をつけられて、さらに良い演奏をご紹介くださいませー!😄

  • 2019/09/10 (Tue) 11:21
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