作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

【新着】ジュビリー四重奏団の弦楽四重奏団集(ハイドン)

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またまた新着アルバム。

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TOWER RECORDS / amazon(mp3) / HMV&BOOKS onlineicon

ジュビリー四重奏団(Jubilee Quartet)によるハイドンの弦楽四重奏曲3曲(Op.64のNo.4、Op.54のNo.2、Op.20のNo.2)を収めたアルバム。収録はイングランドのロンドン北西の海沿いの街、サフォーク(Suffolk)のポットン・ホール(Potton Hall)でのセッション録音。レーベルは英RUBICON。

聞きなれないクァルテット名に聞きなれないレーベル名。しかもルビコンといえばルビコン川を渡るという故事が思い当たります。レーベルのロゴには川の流れのような波も見えますので重大な決断を下してこのレーベルを立ち上げたのでしょう。ということでまずはレーベルを調べてみたところ最近イギリスで設立されたレーベル。

Rubicon Classics

このサイトのAbout usを見ると、実に志の高いコンセプトが書かれていました。あまりにキレた文章なので引用しちゃいましょう。

Rubicon Classics is an exciting new label offering truly collaborative partnerships for musicians.
Whether you are making your first recording, or looking for a new label that will work with you bringing your recording to the market place, on CD, vinyl, and on digital, RUBICON is the go-to label for the classical artist who requires a daring, adventurous and pro active label partner.
RUBICON is free from major label decision making inertia and internal pressures. RUBICON is proactive, not reactive and will make decisions quickly.
With a worldwide network of distributors, first class digital distribution and social media marketing, RUBICON will support, advise and guide artists from the recording studio to a successful release and beyond.
RUBICON – daring and different, creative and collaborative.


素晴らしいレーベルができたものです。手短かに言うと、アーティストに寄り添って、メジャーレーベルの影響は受けず、独自の視点でクラシックの新人アーティストの才能を掘り起こしていくというもの。才能ある若手にとって実に頼もしい存在といっていいでしょう。

このアルバムを記事にしようと思ったのは、若手クァルテットの新鮮なアプローチもありますが、このレーベルの若手アーティストを発掘しようと言う意気込みを買ってのこと。若手のクァルテットのハイドンということで、当ブログの重鎮の読者の皆様にもご賞味いただきたいと思います。

ジュビリー四重奏団は2006年、ロンドンの王立音楽院の生徒だった4人によって設立されたクァルテット。メンバーはチェコ、カナダ、スペイン、イギリス出身者で今日取り上げるアルバムがデビューアルバム。

第1ヴァイオリン:テレサ・プリヴラツカ(Tereza Privratska)
第2ヴァイオリン:ジュリア・ルークス(Julia Loucks)
ヴィオラ:ロレーナ・カント・ヴォルテッシュ(Lorena Cantó Woltèche)
チェロ:トビー・ホワイト(Toby White)

The Jubilee Quartet

クァルテットのウェブサイトにはこのアルバムのspotifyへのリンクや、収録時のYouTubeの映像などもあり、サイトだけでも色々なことを知ることができるため、参照価値ありです。



さて、肝心の演奏です。

Hob.III:66 String Quartet Op.64 No.4 [G] (1790)
ノンヴィブラートの透明感ある響きが新鮮。ハイドンの音楽がまるで窓から吹き抜けるそよ風のように響きます。そして特徴的なのが弱音のコントロール。すっと音量を落とすセンスはなかなか。録音は弦と弓の擦れる音が迸るような鮮明さ。適度に弾むハイドンらしい愉悦感と、この弦の摩擦によるリアルな響きの現代音楽的な峻厳さが入り混じる緊張感の対比、そしてはっきりとした音量の対比がこのクァルテットの音楽づくりのポイントとみました。フレージングも非常にデリケートな部分と直裁な部分が入り混じって聴き手の脳に多彩な刺激が届きます。メヌエットでもトリオでグッと音量を下げるのは新鮮。そして最もユニークなのはアダージョ楽章。癒されるような雰囲気ではなく、研ぎ澄まされた孤高感というか、音楽の余韻を削いでミニマル的な響きすら感じさせるもの。フィナーレはハイドンの巧みな構成に多角的に光を当てようというのか、コントラストをくっきりつけて締めくくります。

Hob.III:57 String Quartet Op.54 No.2 [C] (1788)
デビューアルバムでこの曲を持ってくるとはなかなか玄人好みです。これまでの伝統的な演奏は響きの深さとハイドンの意図した構成の展開の面白さを高次元に両立させたものですが、ジュビリーの演奏は小気味良い新鮮さをベースとした爽やかなもの。鳥のさえずりのような軽やかさによってこの曲のまた違った面白さを感じさせます。1楽章はこの新鮮さが心地よかったんですが、続くアダージョでは、いま少し深みが欲しい気になってきます。楽章間の対比がもう少しつくとこの名曲の真髄に迫れるでしょう。逆にメヌエットはもう少し弾んで欲しいところ。この曲の聴きどころはもちろん驚くべきアイデアに満ちたフィナーレ。ここにきて表現の幅を広げて聴かせどころにふさわしい表現力を発揮します。この楽章での表現の深さのためにそれまでの楽章をあえて淡々とした演奏でまとめたのかもしれませんね。

Hob.III:32 String Quartet Op.20 No.2 [C] (1772)
このクァルテットの新鮮な響きが最もマッチしたのが、最後のOp.20。これまでの2曲よりもリラックスして演奏しているようで、愉悦感も感じさせる自在な弓さばきとチェロの明るい音色が心地良いですね。音楽にエネルギーが満ちて推進力を感じさせますが、第1ヴァイオリンの表情がもう少し豊かだとさらに聴き映えするでしょう。続く2楽章もアンサンブルにしっかりと勢いがついてこの曲のエネルギーを汲み取っています。前半の慟哭のような音楽から後半の美しいメロディーの変化もいいんですが、このメロディーの美しさに磨きがかかるといいですね。精妙な響きをベースにしたメヌエットをへて、軽やかにフィナーレに入り、最後はぐっと踏み込んでまとめます。

新人アーティストに寄り添って発掘することをミッションに掲げるRUBICONレーベルが放つジュビリー四重奏団のデビューアルバム。演奏を評価する視点で見ると、しっかりとした個性があるクァルテットですが、ハイドンの曲を世に問うにはもう一段の熟成が必要でしょう。ただし、こうした新人アーティストが多くの人に知られ、そして成長していく機会を作ることで、未来の名演奏家が生まれていくことになるため、このレーベルのこうした取り組みは非常に重要だと思います。このアルバムの最後に置かれたOp.20の演奏には磨けば光る宝の原石が散りばめられているように聞こえました。評価はOp.54が[+++]、他2曲は[++++]とします。



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