作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

グレン・グールド1958年ストックホルムでのXVI:49(ハイドン)

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手に入れていなかったアルバムをゲット!

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グレン・グールド(Glenn Gould)のピアノによるハイドンのピアノソナタ(Hob.XVI:49)などを収めた2枚組のアルバム。ハイドンの収録は1958年10月1日、ストックホルムの音楽アカデミー(The Musical Academy, Stockholm)での録音。ノイズも拍手もないことから放送用録音と思われます。

実に久々にグールドを聴きます。

2011/01/29 : ハイドン以外のレビュー : グールド1959年のザルツブルク音楽祭ライヴ
2010/02/16 : ハイドン–ピアノソナタ : グールド最晩年の輝き

皆様ご承知の通り、グールドは最晩年にハイドンのソナタ6曲を録音しており、それがグールドのハイドンを代表するアルバムとして現在もリリースされ続けています。グールドの個性が突き抜けた演奏であり、ブログ初期に記事にしていますが、私はスタジオに籠って完全なる演奏を編集し続けて出来上がったグールドの演奏よりも、初期のライヴでの冴えまくった狂気のような瞬間にこそグールドの真髄があると思っており、上に挙げた1959年のザルツブルク音楽祭のモーツァルトなどをたまに取り出しては聴いています。
晩年のスタジオ録音以外にハイドンの録音があるとは思いもせずあまり探してもいませんでしたが、このアルバムの他にも録音がありそうなので、捜索開始です(笑)

さて、このストックホルムでの録音集ですが、手元にあるグールドの詳しい伝記、オットー・フリードリック著宮澤淳一訳「グレン・グールドの生涯」の巻末の演奏一覧にも触れられていないものばかり。この1958年の夏以降は8月にザルツブルクでミトロプーロスの振るコンセルトヘボウ管と共演、ブリュッセルでのコンサートを経て、9月にはベルリンでカラヤン/ベルリンフィルと共演ののちストックホルムに入り、このアルバムに収められた下記の曲を録音しています。

9月30日 モーツァルト:ピアノ協奏曲24番(KV491) ゲオルク・ルートヴィヒ・ヨッフム(オイゲン・ヨッフム兄)/スウェーデン放送響
10月1日 ハイドン:ピアノソナタ(Hob.XVI:49)
10月5日 ベートーヴェン:ピアノ協奏曲2番 ゲオルク・ルートヴィヒ・ヨッフム/スウェーデン放送響
10月6日 ベートーヴェン:ピアノソナタ31番(Op.110)、ベルク:ピアノソナタOp.1

前掲書本文にはザルツブルクからベルリン、ストックホルムを経て、その後ヴィスバーデン、フィレンツェ、ローマ、テルアヴィヴ、エルサレムなどの演奏旅行中に体調を崩し、深刻な状況となった経緯などが書かれており、けっして良い体調ではなかったことがわかります。ただし、このアルバムを聴くと、この時期のグールドのタッチは冴え渡り、モノラルながら非常に鮮明な録音も手伝って若いグールドの才能を堪能できる素晴らしいプロダクションとなっています。

Hob.XVI:49 Piano Sonata No.59 [E flat] (1789/90)
このアルバムを聴く前にスタジオ録音の方も久々に聴き直してみましたが、どちらも1楽章は速めながら、1958年の方はなりふり構わず韋駄天のように飛ばしまくるような速さで、それに比べると晩年の演奏スタティックに聴こえるほど。若きグールドはハイドンの音楽を早送りのような速度でハイドンのメロディーの巧みな構成のをおもちゃ箱のような子供の頃の記憶とダブらせて表現しようとしているのでしょうか。それにしても超特急のような速度で指は全く乱れず、テクニックのキレは恐ろしいほど。
この演奏、1楽章の速さだけだったら記事にすることはありませんでした。素晴らしいのが続く2楽章のアダージョ・カンタービレ。この楽章はこの1958年盤の聴きどころ。グールド独特の孤高な感じと、1楽章から続く軽さが見事に融合して、音楽は冴え渡ります。他のピアニストとは描く風景が全く異なり、荒涼たるカナダの雪原を思わせる険しさのような気配を帯びるハイドンの音楽。現代音楽に通じる静寂と峻厳さを感じさせる瞬間があると思いきや、音階にはグールド流の硬質感があり、全くもって個性的なハイドン。
そして、続く3楽章はさらにグールドの個性全開。ハイドンの音楽をデフォルメしまくって、新たにグールド流に再構築した音楽。透徹してアーティスティックなデフォルメの技が冴えわたります。今更ながらグールドの才能に驚いた次第。

この後に置かれたベートーヴェンの31番がグールド流のエキセントリックさを抑えた沁みる演奏で素晴らしいんですね。CD1のヨッフム兄とのコンチェルトも素晴らしい演奏で、体調というか心理的に追い込まれていたにも関わらず、このアルバムに収められた演奏は若きグールドの才能が迸る素晴らしいものばかり。ということで、肝心のハイドンの演奏は[+++++]。ハイドン目当てでない方にもお勧めできる素晴らしいアルバムです。



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