作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

シレーネ・サクソフォン四重奏団によるOp.20のNo.1(ハイドン)

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4月最初のアルバムは変り種。変り種と言っても内容が素晴らしくなくては取り上げません。

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TOWER RECORDS / amazon

シレーネ・サクソフォン四重奏団(Syrène Saxophone Quartet)による、ハイドンの弦楽四重奏曲Op.20のNo.1、レオ・サママ(Leo Samama)の「シレーネ(Syrènes)」、ジョージ・ガーシュウィン(George Gershwin)の「パリのアメリカ人」の3曲を収めたアルバム。収録は2016年5月23日、24日、オランダはフェルメールで有名なデルフト(Delft)のHofkerkというプロテスタント教会でのセッション録音。レーベルは個性的な録音が多い蘭ET'CETERA。

これまで、ハイドンの原曲を楽器を変えて演奏しているもので印象に残っているのは、何と言ってもアコーディオンでピアノ協奏曲を弾いたヴィヴィアヌ・シャッソのアルバム。

2017/04/09 : ハイドン–協奏曲 : 【新着】ヴィヴィアヌ・シャッソのアコーディオンによるピアノ協奏曲集(ハイドン)

ハイドンの音楽は弾かれる楽器の音色や特性を非常によく考えて書かれているので、ただの編曲では、元の楽器を超えるような演奏には滅多に出会えない中、アコーディオンという楽器の多彩な音色の魅力でピアノ協奏曲に仕込まれた音楽をピアノ以上に引き出した名盤です。

今回取り上げたアルバムは、ソプラノ、アルト、テノール、バリトンの4つの音域のサクソフォンで弦楽四重奏曲を演奏したもの。しかもジャケットを見ると美女4人組によるポップな仕立てによるアルバムで、さして期待せずに入手したものですが、これがなかなか本格的な演奏で、思わず、「これ、有りです!」と唸ってしまったもの(笑)

奏者はオランダの若手女流サクソフォン奏者による「シレーネ・サクソフォン四重奏団」というクァルテット。メンバーは以下の通り。

ソプラノ・サックス:フェムケ・イルストラ(ソプラノ)
アルト・サックス:フェムケ・スティケティー(アルト)
テノール・サックス:アネリース・フリースヴァイク(テナー)
バリトン・サックス:アウクリーン・クラインペニング(バリトン)

Hob.III:31 String Quartet Op.20 No.1 [E flat] (1772)
このアルバムの1曲目がハイドン。聴き始めてびっくりしたのはあまりに柔らかく自然なハーモニー。もちろんサックスといえばコルトレーンのあの魂に響くような浸透力のある音を想像していただけに、このハーモニーの柔らかさは意外でした。そして特にパートごとに音色が異なることで各パートの動きがよくわかること。そして何よりこのクァルテットの潜在力を思い知ったのは選曲です。ハイドンの数あるクァルテットの中でも、このOp.20のNo.1はシンプルなのに各パートのメロディーの展開の面白さと、シュトルム・ウント・ドラング期特有の陰りもある味わい深い曲で、サクソフォンのハーモニーが曲調に絶妙に合うんですね。演奏は若手らしからず、非常に落ち着いてハーモニーの美しさを淡々と描いていき、フレッシュさよりも円熟さえ感じさせる見事なもの。1楽章でサクソフォンの音色の美しさとハイドンの曲への相性の良さを聴かせると、続く2楽章のアレグレットでは、管楽器特有のタンギングによるリズムの軽やかな躍動が弦楽器よりもこの曲には効果的だと知らしめます。パート間のバランスもメロディーを浮かび上がらせるところと、伴奏にまわって音量を落とすところをクッキリと使い分けるしたたかさ。
そして3楽章では、まるでクラリネットのアンサンブルのような響きの柔らかさが印象的。まるでサクソフォンのために書かれたような見事な演奏に痺れます。そしてフィナーレはソプラノサクソフォンの華やかな高音の響きが隈取る、急転する音楽のしなやかで美しい響きを存分に味わえる曲。タンギングによるアクセントがキリリと決まる快感と美しいハーモニーの高次の融合。この響きの美しさはハイドンも想像できなかったでしょう。ハイドンは1曲だけですが、素晴らしい演奏にやられました。

続くレオ・サママの曲は現代音楽。現代音楽の精妙さが十分に感じられるもの。そして最後はおなじみガーシュウィンで、音楽と楽器の楽器の相性は申し分なしで、これは楽しめます。本来のサクソフォンの軽妙洒脱な音楽の流れは、クラシックの範疇に収まらないもので、アルバムの企画意図も良くできています。

シレーネ・サクソフォン四重奏団による、サクソフォンによるハイドンの弦楽四重奏曲の演奏は、ハイドンの曲から新たな視点からの魅力を浮かび上がらせる見事なもの。ヴィヴィアヌ・シャッソのアコーディオンもそうでしたが、ただ楽器を変えて演奏したのではなく、曲の持つ魅力が、新たな楽器での演奏で浮かび上がることを確信した奏者による偉業と言っていいでしょう。シャッソの演奏のインパクトに劣るものではないでしょう。評価は[+++++]とします。これは弦楽四重奏の好きな方には是非聴いていただきたいですね。



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