作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

【追悼】アンドレ・プレヴィン

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2月28日、指揮者のアンドレ・プレヴィンが亡くなりました。今日は思い出深いアルバムを取り上げましょう。

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ラヴィ・シャンカール(Ravi Shankar)のシタール、アンドレ・プレヴィン(André)指揮のロンドン交響楽団の演奏で、ラヴィ・シャンカールのシタール協奏曲を収めたLP。収録は1971年5月29日から31日まで、ロンドンのアビーロードスタジオの第1スタジオでのセッション録音。レーベルは英EMI。

なぜこのアルバムが思い出深いかというと、遥か昔、予備校生時代に代々木のジュピターレコードで、初めて店主のおじさんに頼んでイギリスに注文を出して取り寄せてもらったアルバムだからです。私のプレヴィンとの出会いのアルバム。

そもそもこの曲を知ったのはFM放送でですが、その後、確か日本テレビ系で日曜の夜に放送していた「素晴らしい世界旅行」という番組で、チベットの秘境、ムスタンで行われている鳥葬という風習を取り上げた回のBGMに使われているのを聴いて、さらに強烈なインパクトを受けました。鳥葬というのはチベットのこの地方で人が亡くなると、切り刻んでハゲワシに食べさせて大空に散らすという葬儀の風習。亡くなった人を切り刻むというところから日本では信じがたいものですが、そのあと処女の大腿骨の骨で作った骨笛を吹いてハゲワシを呼び、それに喰らわせるという恐ろしい風習。ただ、極限までに厳しい自然のチベットでは死者の魂を大空に返したいというのはなんとなくわかる気はします。その場面にこの曲が使われたということで、さらに興味が湧き、LPを手に入れたくなったという流れです。

ジュピターレコードについてはブログの初期に何度か取り上げていますが、私が音楽にのめり込むきっかけを作ってもらったお店。当時見たこともないような輸入盤の数々に胸をときめかせながら足しげく通ったことを思い出します。お店にないアルバムは海外に注文してくれるのを知って、恐る恐る頼んでみると、確か1ヶ月ちょっとで手に入ったように記憶しています。

電話をもらってお店に顔を出し、アルバムを受け取ると、期待以上にエキゾチックなジャケットにまずはびっくり。当時ネットもありませんので、英文の商品リストで演奏を特定して注文するだけでしたので、ジャケットすらわからず注文するのが普通でした。家に帰って、やおら針を落としてみるとさらにびっくり。FM放送やテレビで聴いたなんとなくインドやチベットを連想させる曲調はそのままなんですが、音が飛び抜けていい。さざめくような広々とした空間にオケが広がり、センターでシタールの摩訶不思議なメロディーがくっきりと浮かび上がります。オケは完全にシタールを引き立てるのに徹して、時折ハープの美しい音色が漂います。何より素晴らしいのがボンゴと呼ばれる太鼓やお鈴のような澄んだ高音の楽器がハッとするようにリアルなこと。これまで記憶にあった曲がクッキリと眼前に姿を現しました。

初めて注文して手に入れたLPなので、驚きとともに何回か聴くうちに、録音ではなくプレヴィンのコントロールするオーケストラの語り口の巧さに気づき始めます。シタールという西欧とは異なる文化圏の楽器の音色を踏まえて、オケを秀逸にコントロール。特にシタールの引き立たせ方、シタールとの対話的な部分の面白さはゾクゾクするほど。この演奏でアンドレ・プレヴィンという人がしっかりと印象に残りました。

そして、当時家にあった父のLPを調べてみると、チョン・キョンファとのチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲があり、これも刷り込みの演奏。興味を持った私は、さらにジュピターレコードでヴォーン・ウィリアムスのロンドン交響曲、ウィーンフィルを振ったリヒャルト・シュトラウスのティルなどを収めた管弦楽曲集などを手に入れて聴きました。どの曲もプレヴィンは曲の面白さをしっかりと踏まえて、完成度の高い演奏が彼の真骨頂だとなんとなくわかりました。

プレヴィンは非常に多くの録音を残していますが、ハイドンの録音はほんの一握りだけ。当ブログでもハイドンについては色々取り上げています。

2013/10/20 : ハイドン以外のレビュー : アンドレ・プレヴィン/ジョー・パス/レイ・ブラウンの「アフター・アワーズ」
2013/04/09 : ハイドン–交響曲 : アンドレ・プレヴィン/ピッツバーグ響の驚愕、ロンドン
2010/12/09 : ハイドン–交響曲 : アンドレ・プレヴィン/ロンドン交響楽団の87番ライヴ
2010/07/05 : ハイドン–交響曲 : プレヴィン/ウィーンフィルのオックスフォード

代表盤はウィーンフィルとPHILIPSに残した4曲の交響曲だとは思いますが、今聴き直すとピッツバーグ響の驚愕も悪くありません。

そして晩年はN響に度々客演しましたが、テレビで見たモーツァルトの協奏曲の純粋無垢な演奏も記憶に残っています。熱心なファンではありませんでしたが、プレヴィンの振る音楽に漂うわかりやすさと、完成度はプレヴィンに対する信頼感を保ち続ける軸だった気がします。

ハイドンの記事にも書きましたが、プレヴィンはクラシックというジャンルにとどまらず、ジャズのアルバムもリリースしており、私も何枚かの愛聴盤があります。品よくスイングするプレヴィンも忘れがたい思い出として刻まれています。

ご冥福をお祈りいたします。



(参考アルバム)




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5 Comments

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tenkichi995

No title

私も確か、この類のLPを持っていました。LPのジャケットは、奏者が全面クローズアップされ、足元にインドのお香のようなものがあったと思います。演奏自体は、オケよりもシタールの音源がとにかく印象的でした。協奏曲としての印象は余りなかったのですが。た。

  • 2019/03/03 (Sun) 22:02
  • REPLY
Daisy

Daisy

Re: No title

tenkichi995さん、コメントありがとうございます。

ネットを探すとこんなの出てきました!
https://www.discogs.com/ja/Ravi-Shankar-Two-Rāga-Moods/master/248800

  • 2019/03/03 (Sun) 23:40
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katsudon

No title

お世話になります。
プレヴィン、とてもエレガントで且つ音楽の曲の活き活きとした表情を紡ぎ出すのが上手な方だったように思います。
ピッツバーグ響、ロンドン響、そしてウィーン・フィルと入れたハイドンは折に触れて聴きますし、チョン・キョンファと入れたチャイコフスキー、シベリウス、プロコフィエフ、そしてリヒャルト・シュトラウスの管弦楽曲、アンネリーゼ・ローテンベルガー と入れた「4つの最後の歌」など、数えたらきりがないですが、一番気に入っているのは「ピーターと狼」「青少年のための管弦楽入門」です。演奏が良いのは言うまでもありませんが、奥さんと子供達と一緒に写った写真のジャケットを見る度に、優しい気持ちになるものです。
ご冥福をお祈りいただいます。

  • 2019/03/04 (Mon) 07:10
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tenkichi995

No title

恐らくこのLPだったと思います。過去のLPの大半は、処分してしまい、定かではありませんが。

  • 2019/03/04 (Mon) 19:51
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Daisy

Daisy

Re: No title

Katsudonさん、いつもありがとうございます。

プレヴィンも色々聴かれているんですね。ローテンベルガーとの「4つの最後の歌」は魅力的ですね。それこそ膨大な数の録音を残されていますので、追悼盤で色々リリースされるといいですね。N響との近年の共演もなかなか良かったのでそちらもリリース希望です。

  • 2019/03/04 (Mon) 22:48
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