作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

【新着】飯森範親/日本センチュリー響の交響曲集第6巻(ハイドン)

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このシリーズ、順調なリリースが続いています。

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飯森範親(Norichika Iimori)指揮の日本センチュリー交響楽団の演奏で、ハイドンの交響曲39番、61番、73番「狩り」の3曲を収めたSACD。これで6巻目になります。収録は2018年10月19日、大阪のいずみほホールでのライヴ。レーベルは日本のEXTON。

このシリーズ、これまで5巻のうち4巻を取り上げていました。

2018/06/29 : ハイドン–交響曲 : 【新着】飯森範親/日本センチュリー響の交響曲集第4巻(ハイドン)
2018/03/26 : ハイドン–交響曲 : 【新着】飯森範親/日本センチュリー響の交響曲集第3巻(ハイドン)
2017/07/19 : ハイドン–交響曲 : 【新着】飯森範親/日本センチュリー響の交響曲集第2巻(ハイドン)
2016/11/19 : ハイドン–交響曲 : 【新着】飯森範親/日本センチュリー響の交響曲集第1巻(ハイドン)

この前の第5巻も良かったんですが、その前の4巻の素晴らしさに比べると、ちょっと手慣れた感が感じられたため、記事にはしませんでした。今回の6巻は期待通りの出来。オケをよく鳴らして、このコンビのオーソドックスなハイドンの交響曲の魅力がしっかり感じられます。

Hob.I:39 Symphony No.39 [g] (before 1770)
初期の傑作交響曲の一つ。このシリーズの中では残響が適度で、オケの響きにも実体感があり録音も自然に感じられます。ここにきてマイクセッティングも落ち着いてきました。疾走するこの曲の入りの感じが非常に丁寧に描かれ、シュトルム・ウント・ドラング期特有の仄暗い感じもよく出ています。オケにも生気がみなぎり、1楽章はタイトな攻めを感じる演奏。
それを受けて2楽章のアンダンテは落ち着いたテンポでコミカルなメロディをゆったりと楽しむ楽章。メロディーの描き方も力が抜けて非常にリラックスした展開。時折アクセントや長い休符を効かせることで、コミカルさを強調。語り口の巧さが印象的。
独特の濃い情感の乗ったメヌエットに軽やかなトリオが挟まれる3楽章は淡々と描くことでさらりと流し、嵐の到来を注げるようなフィナーレへの繋がりを確保。そのフィナーレも力まず流れよくしたことで、楽章の対比をかえって強調できたように聴こえます。オーソドックスながら、見通し良くまとめたことで、非常に完成度の高い演奏となりました。

Hob.I:61 Symphony No.61 [D] (1776)
あまり録音の多くない中期の曲。1楽章は適度なダイナミックさを実に上手く表現した演奏。オケがよくコントロールされ、実に気持ちよくホールに響き渡ります。絶妙な力加減と言っていいでしょう。録音の良さも相まってハイドンの仕込んだ機知と音楽の面白さがくっきりと浮かび上がります。一見シンプルなメロディーが軸ですが、様々な楽器で繰り返され、微妙に変奏が発展していく面白さがたまりません。
2楽章は12分近い長いアダージョ。穏やかな曲調ながら長い楽章の構成感はしっかりと保って、次々と展開していくコントロール力は見事。しかも要所で聴かせどころをしっかり設けることで引き締まった音楽にまとめていきます。
メヌエットは1楽章よりも力を抜いて、オケではなくホールの空気を鳴らすように音を響かせます。トリオの部分の折り目正しい感じと木管の響きの美しさは絶品。
コンパクトながらアイデアに富んだフィナーレ。ここでもオケがよく鳴り、キビキビとしたテンポとダイナミクスが痛快。見事。

Hob.I:73 Symphony No.73 "La Chasse" 「狩」 [D] (before 1782)
序奏のゆったりとした足取りを優雅に描いた入り。主題に入るとメロディーを流麗に浮かび上がらせ、発展させていきます。このあたりのセンスは申し分なし。ヴァイオリンの澄んだ音色が響きの明るさにつながっています。曲が進むにつれて響きが徐々に厚くなっていく感じやダイナミックになっていく感じはかなり緻密にコントロールしているのでしょう。
ザクザクとしたアンダンテは、録音の良さを痛感するところ。厚みがありながら自然で繊細な響きだからこそ、音楽の繊細さも味わえるもの。ちょっとした響きの変化のデリカシーが聴きどころです。
メヌエットも同様。内声部の動きも含めて響きが鮮明に録られていますので、パートの動きがくっきり浮かび上がります。
そして盛り上がる有名な終楽章。元は歌劇「報いられた誠意」の第3幕の序曲。狩猟の信号ラッパのようなホルンの音形が特徴でこの曲はアダム・フィッシャーとハイドンフィルの来日公演でもアンコールで演奏されました。アダム・フィッシャーが湧き上がるような躍動感にスポットライトを当てたのに対し飯森範親はもう少し落ち着いていて、ライヴにも関わらずホルンも含めて襟を正したようなHi-fi調。アルバムの最後だけにもう少し躍動して欲しかったところ。

コンサートは全曲演奏を目指していますが、アルバムの方はいまだに全集を目指すとはどこにも書いてないまま(笑)第6巻までこぎつけたこのシリーズ。この第6巻は演奏の完成度も高く、録音もこのシリーズでは最も自然。最後の73番がもう少し吹っ切れた盛り上がりを聴かせて欲しかったところが惜しいところでしたが、39番と61番は絶品。特に61番はこの曲の面白さを再認識させてくれる見事な出来でした。ということで、継続して見守っていきたいと思います。評価は73番が[++++]、ほか2曲は[+++++]とします。



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3 Comments

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katsudon

No title

お世話になります。
このコンサート、会場におりました。
これまでハイドン・マラソンにはなかったことですが、この回から飯森シェフが、舞台転換の時間を利用したりして、自らマイクを握り、曲の解説をする場面が登場しました。以前、ラジオのレギュラー番組を持っていたこともあるマエストロなので、弁も立ち、内容も鑑賞の手助けになるものですが、もしかしたらうるさ方には「余計なことをして…。純粋に音楽を楽しみたいのに…。」と思われてしまうかもしれません。
しかしこの時、39番の解説として、モーツァルトが2曲のト短調シンフォニーを書く際に、この曲に多大な影響を受けたことに疑いの余地はない、と力説しいていたマエストロの言葉には説得力がありました。
個人的にはハイドンとモーツァルトとの間のエピソードは、「ハイドン・セット」の献辞を始め、音楽史上最も崇高な出来事だと思い、それらに想いを馳せると幸せな気分になるので、そんな意味でもよい解説でした。

  • 2019/02/27 (Wed) 22:00
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Daisy

Daisy

Re: No title

katsudonさん、コメントありがとうございます。

そういえば、このコンサート行かれた旨書かれていましたね。最近私も毎週のように名古屋や大阪に出張していますが、ほぼ日帰り突貫です(苦笑) いずみホールのこのコンサートも一度生で体験してみたいものです。

さて、39番についてはこれまでも色々な方がモーツァルトのト短調交響曲へ影響を与えたと書かれていますが、モーツァルトの交響曲全集を録音され、ハイドンマラソンを進行中の飯森さんがおっしゃるのは説得力が違いますね。そのような情報が音楽を聴く上で大きな気づきに繋がることもありますので、いずれにせよ貴重なものだと思います。

コンサートのプログラムでも通り一遍の曲目解説もあれば、かなり力の入ったものもあり、プログラムの解説だけでも聴き方に大きな影響があります。以前行ったコンサートでは武満徹の没後20年のコンサートのプログラムは渾身の作で、コンサート前に心意気に昇天しました(笑)

  • 2019/02/27 (Wed) 23:22
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katsudon

No title

お世話になります。
追記です。
当日のコンサートでは、73番の前に首席チェロの北口大輔氏の独奏で黛敏郎作の無伴奏チェロのための「文楽」が演奏されたのですが、マエストロが「近松が文楽の世界で成し得たことは、ハイドンがシンフォニーやクァルテットで成し得たことに匹敵する意義がある。その意味でも今日、この曲がハイドンの作品に囲まれて演奏される意味がある」ともおっしゃっていて「うむうむ」と思った次第。北口氏の演奏も拍手喝采の嵐でした。

  • 2019/02/28 (Thu) 23:36
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