作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

ラトル/ベルリンフィルの交響曲集-1

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今日はサイモン・ラトルがベルリンフィルと入れた交響曲集。2枚組で全部をレビューできそうもありませんので、その1です。

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今をときめくラトルとベルリンフィルのハイドン。世界最高峰の組み合わせであることは論を俟たないでしょう。
この世界最高峰の組み合わせによるハイドンの交響曲。しかもドイツ国歌の作曲者であるハイドンの交響曲です。レコード会社としては山口百恵のいい日旅立ちくらいの力が入ることは想像に難くありません(笑)

ラトルはベルリンフィルの音楽監督に就任以前にその主席指揮者・音楽監督であったバーミンガム市交響楽団とハイドンの交響曲を録音していましたが、ハイドンの曲に対するスタンスが非常に明確で、その諧謔性というかユーモラスな側面にスポットライトを当てるべく、テンポの設定やフレーズごとの演出のうまさが印象に残っています。

私がラトルの演奏でラトルがどんな音楽を生み出すのかを最も感じられたのは、何を隠そうハイドンの交響曲です。逆に、ハイドン以外の演奏でラトルの真価を感じられるような演奏に出会ったかというと、実はちょっととらえどころがないという印象も否定できません。あえて挙げればだいぶ前に放送された現代音楽のシリーズでしょうか。自身の解説付きでつくられた番組でしたが、現代音楽を指揮する立場、同時代の音楽を語る視点にラトルの狙いを感じたのが新鮮でもありました。

同じくベルリンフィルを率いる立場であったカラヤンは強烈すぎるぐらい自身の音楽の鮮明なスタイルを追求し、幅い広いレパートリーのすべてにカラヤンのスタイルで録音を残してきました。後を継いだアバドについてもこれまでの垢をすっかり削ぎ落とした純粋な世界、純音楽的な歌と緻密な壮大さへの憧憬といった狙いは演奏の基底に色濃く感じさせ、こちらも幅広いレパートリーの録音を残し続けています。アイーダといえばカラヤン、リヒャルト・シュトラウスといえばカラヤン、そして天地創造といえば真っ先にカラヤンです。そしてマーラーといえばアバド(私は)、夢のようなメンデルスゾーンと言えばアバドな訳です。

ラトルについては、もともと八方美人というか器用さが先に立って、音楽の狙いがいまいち見えにくいところがありますが、あえて挙げれば純粋な響きの変化による音響の快楽といったようなところが核にあるように見受けられます。ただ、この曲と言えばまずラトルという鮮明な印象は実はあまりありません。

まさにこの点がラトルのハイドンの演奏の特徴を浮き彫りにしていると言えなくもありません。このアルバムの演奏も最高のオケによるハイドンの交響曲の響きの変化を楽しむというのが消去法的に浮かぶテーマでしょう。

収録曲目はハイドンの交響曲88番から92番までの5曲と協奏交響曲の6曲。録音は2007年の2月のベルリンフィルハーモニーでのコンサートのライヴ。ラトルのベルリンフィルの音楽監督への就任は2002年ですから、就任5年目の演奏ということになります。

冒頭の88番V字は昨日、セルの演奏を取り上げたばかりで、セルの剛演が耳に残っている状態でのレビュー。
セルの鮮明なスタイルと比較するとラトルはオケの各楽器の巧さ、合奏精度の見事さは流石ですが、音楽づくりという意味ではオーソドックスなものといえるでしょう。あえてあげればやはりハイドンの機知を啓蒙的に紹介して音楽を楽しんでもらおうといったところでしょうか。

演奏はゆっくり目なテンポで、フレーズの構造をわかりやすく噛み砕いていくようなスタイル。ベルリンフィルハーモニーでの多くの録音と同様、デッド気味な実体感のある弦楽器の音響が印象的な録音。各楽章の演奏スタイルは対比で聴かせるというよりは全楽章一貫した流れ。終楽章はところどころレガートを象徴的に織り込み、個性的なフレーズをちりばめていますが、響きの面白さを引き立てることを目的とした小技という印象。
一流オケで直球を投げるというよりは、一流オケなのに遊び心をちりばめた8分の力での演奏といところでしょう。

つづく89番は、勝手に「証城寺」という名前をつけています。冒頭のメロディーが「しょ、しょ、しょじょじ」と聴こえるからです(笑)
歴代の名演がひしめく88番とくらべて気軽に聴ける分、こちらの曲のほうがラトルの演奏を素直に楽しめます。こういった素朴な曲の演奏のほうがラトルの魅力が伝わるような気がします。この曲は力が抜けていい演奏。

ということで、今日はここまでで時間切れです。
評価は88番は[+++]、89番は[++++]といったところでしょうか。この続きは明日。90番はコンサートのでのユニークな演出付きバージョンも含まれています。
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