作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

ソフィ・イェアンニンのオラトリオ「四季」(すみだトリフォニーホール)

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2月16日はコンサートに出かけてきました。演目は実演では初めて聴くハイドン最後の大作オラトリオ「四季」です。

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新日本フィルハーモニー交響楽団:ルビー<アフタヌーン・コンサート・シリーズ>

最近、天地創造はコンサートのプログラムに取り上げられることも珍しくなくなりましたが、天地創造よりも長い四季が取り上げられるのは稀なこと。しかも指揮者は女流とあって、興味をそそられチケット取ったもの。

指揮者のソフィ・イェアンニン(Sofi Jeannin)は、1976年ストックホルム生まれの指揮者。もともと合唱指揮者出身で自身もメゾ・ソプラノ歌手として活躍していた人とのこと。ニース音楽院、ストックホルム王立音楽アカデミー等でピアノや声楽学び、ロンドンの王立音楽カレッジで合唱指揮を学びます。2005年からはロンドンを拠点とする合唱団であるLondon Voicesでメゾ・ソプラノ歌手として活躍すると同時に王立音楽カレッジで合唱の指導者としてのキャリアを始めます。その後合唱指揮者としてのキャリアを積み、2015年からはラジオフランス合唱団の音楽監督、2017年からはBBCシンガーズの首席客演指揮者、2018年からは同合唱団の首席指揮者に就任するなどトントン拍子でキャリアを駆け上っています。そして、今回、フルオーケストラを伴う指揮者としてこのコンサートを担当することになったという流れでしょう。

歌手はおなじみの人ばかりで盤石の体制。

ハンネ(ソプラノ):安井陽子
ルーカス(テノール):櫻田 亮
シモン(バリトン):妻屋秀和
合唱:栗友会合唱団
合唱指揮:栗山文昭

この日は土曜のマチネーということでしたが、お客さんの入りは5割くらいと寂しい限り。ハイドンの知名度の低い長大な曲というプログラムの問題、日本での知名度の低い指揮者であるという問題を考えると止むを得ない状況でしょう。しかし、この日の演奏は、素晴らしいものでした。終演後の温かい拍手とブラヴォーはソフィ・イェアンニンの今後のさらなる活躍を期待させるものでしょう。私も心から楽しませてもらいました。



この日の席は3階席。3階席といってもサントリーホールだとRAに当たるステージを右上から俯瞰する席。開演前の眺めはこんな感じです。

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すみだトリフォニーホールのこの席は初めて。一旦3階まで登りますが、ホール横の階段とトコトコ降りて、実は2階になるという感じ。眺めも手すりがちょっと邪魔。手すりを設けるのは仕方がありませんが、デザインはもうちょっとなんとかならなかったのでしょうか。ここは最大手設計事務所の日建設計の設計ですが、ホワイエの狭さといい動線設計といい色々イマイチなんですね。なんとなく音楽を楽しむ習慣のない人が設計している感じです。

開演時間は14:00。定刻になると、まずは栗友会合唱団が登壇、続いてオケ。コンサートマスターがステージに上がり、チューニングが終わると、歌手とイェアンニンが登壇。イェアンニンはチラシ通りスタイリッシュな美人指揮者ですね。

イェアンニンの指揮はテンポをキッチリ指示するオーソドックスなもの。春の入りは予想した速めのテンポではなくじっくりとした歩み。音楽の作りはヴィブラートは抑え気味でメロディーとダイナミクスをくっきり浮かび上がらせ、非常に見通しよく音楽を作っていきます。この日のオケの精度は文句なし。イェアンニンの指示にかなり鋭敏に反応して、特にダイナミクスの表現が秀逸。鮮やかに吹き上がりハイドンの晩年の境地を新鮮さで蘇らせた感じ。特に素晴らしかったのがコーラス。流石に合唱指揮者出身なだけにコーラスに対する指示は非常にきめ細かく、時に口ずさみながらの指揮で、コーラスも非常に歌いやすそうでした。圧巻だったのがその声量。フルスロットルのオケにさらにエネルギーを加えるような渾身の歌唱でホールが満たされ、ハイドンの素朴なメロディーがイキイキと弾みました。前半の春の凝縮したエネルギー、夏の焦燥感、休憩後の秋の収穫の喜び、そして暗澹たる冬の景色から春に向かう喜び。最後のアーメンに到るまでの長い物語が、イェアンニンのニュートラルな棒によってハイドンの音楽の素晴らしさが浮かび上がる見事な指揮ぶり。歌手はいつもはバリトンの妻屋さんの声量が目立ちますが、この日は3人とも声量、輝き、そして表情付けとも文句なし。3人とも完璧な歌唱でこのコンサートに華を添えました。

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新進気鋭のソフィ・イェアンニンのあまりに見事な指揮に会場からは暖かい拍手とブラヴォーが降り注ぎました。集客はイマイチでしたが、ハイドン好きな方は次の機会を逃してはなりません。日本デビューにあえて天地創造ではなく四季を選んだ見識。次は是非、トビアの帰還かスタバト・マーテルを取り上げてほしいものです。両曲とも演奏の機会がほとんどありませんが、素晴らしいアリアとコーラスが詰まった名曲ゆえ、これらこそイェアンニンにこそ振ってもらいたいですね。

いいコンサートでした。



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4 Comments

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katsudon

No title

お世話になります。
私は初日の金曜日に出掛けてまいりました。
編成はそれほど大きくないのだろうとたかを括って、珍しく4列中央19番の席を取ったのですが、思いの外しっかりとした編成で、独唱者の表情を見るのには良かったのですが、オーケストラの音は直接音が響きより優ってしまって、少しばかり疲れた感は否めませんでした。
イェアンニンの指揮は特に奇をてらったものでも、ピリオド奏法を取り入れたものでもありませんでしたが、さすが合唱畑出身だけあって、オーケストラも含めて音の整え方がしっかりとしていて、安心して聴けるものでした。個人的にはもう少し刺激性のある部分もあっても良かったかな?とは思いましたが…。
しかしながら「四季」全曲をしっかりとした演奏で聴くことができる機会など早々にはないと思いますので、大変貴重な時間でした。
初日は7割くらいの入りでしたが、当然ですが、オーケストラ・ファンというよりは合唱ファン、合唱を実際にやっていらっしゃる方が多かったようで、座席から漏れ伝わる会話からはハイドンをあまりご存じでなかったり、「歌唱がドイツ語なのか英語なのかイタリア語なのかわからないわ」なんて方もいらっしゃって、それはそれで微笑ましく、ハイドンを世に広めるべく決意を新たにいたしました(笑)。

  • 2019/02/18 (Mon) 07:46
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Daisy

Daisy

Re: No title

katsudonさん、コメントありがとうございます。

金曜日の方に行かれましたか。確かに席によって響きの印象は大きく変わりますね。私は指揮者の表情や指示を見たい方なので、横から俯瞰する席が好みです。平土間はどうも奥の奏者の表情が見えないので、1階席の時はちょっと離れた場所で聴くようにしています。
確かにイェアンニン、大きな曲の流れのここぞというポイントをよりクッキリと際立たせたりするとさらに良いでしょうし、後半ちょっと力任せになるような印象もなくはありませんでしたが、特にコーラスに絶妙な指示を出すところや、オケにもポイントをわかりやすく伝えるところなど、非常に情報処理能力が高い印象を受けました。この手の指揮者は経験を積むごとに音楽が深くなるような気がします。何れにしても今後が楽しみな指揮者ですね。

  • 2019/02/18 (Mon) 21:49
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小鳥遊

休みだったので当日券で行くか直前まで迷ったのですが、木金とペレーニのベートーヴェンを聴きに行き散財したので、結局、取り止めてしまいました(ピアノはイムレ・ローマン!)。

聴きに行った方の評判が、何れも好評だったので、ちょっと後悔しています。

演奏会も音盤も、最近、ハイドンから離れ気味なので、そろそろ立ち返らなければ笑





  • 2019/02/18 (Mon) 23:29
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Daisy

Daisy

Re: タイトルなし

小鳥遊さん、コメントありがとうございます。

ペレーニも来てるんですね。しかもピアノがイムレ・ローマンとは! そちらもかなり魅力的でしたね。ハイドンの方にもぼちぼちおいでください(笑)

  • 2019/02/19 (Tue) 21:15
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