作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

セル/クリーヴランド管のロンドン他

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昨日に引き続きジョージ・セルのハイドンの交響曲集。いつもはなにを取り上げようかと逡巡するところですが、昨日の記事へのライムンドさんのコメントにより、今日はセルのロンドンを含むアルバムを取り上げるべきとの流れです(笑)

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昨日のアルバムは1959年のザルツブルク音楽祭のライヴ盤ですが、本日のものはクリーヴランド管弦楽団とのスタジオ録音盤。収録曲目は収録順に交響曲104番ロンドン、交響曲88番V字、交響曲92番オックスフォード。収録はロンドンとV字が1954年4月9日、オックスフォードが1949年4月27日と昨日のアルバムの約10年前の録音。
収録年の違い、オケの違い、ライヴか否かの違いがどのような差を生むのでしょうか。

Wikipedia:ジョージ・セル

ウィキペディアの情報によれば、セルは1897年6月7日生まれのハンガリー人。戦後直後である1946年にクリーヴランド管弦楽団の音楽監督に就任していますので、今回のアルバムのオックスフォードは就任3年目、56歳前後、ロンドンとV字は就任8年目での録音と言うことになります。まさに油の乗り切った頃ということですね。
なお、セルの情報についてはウィキペディアもなかなか詳しく出典などの裏付けもきちんとしており読み応えがありますので、セルのこと知るにはいちど通読されることをお薦めします。

さて、このアルバムのセルのハイドンの交響曲の演奏、剛演とはこのことでしょう。
録音は古いながらもスタジオ録音のため非常に張りのあるいい録音。ユナイテッド・アーカイブスレーベルの面目躍如といったところでしょう。

冒頭のロンドン、序奏から張りつめたテンションでぐいぐい推進。長音を延ばしきらず、余韻を切り気味に弾いていくのが曲の立体感を鮮明に浮き立たせています。壮大なロンドンではなくミケランジェロの彫刻のようなデフォルメに近いメリハリを感じさせるロンドン。高潔という言葉より剛決に近い印象でしょうか。弦楽器の鋼のごときフレージングはやはりセルならでは。2楽章のアンダンテの力の抜き具合もよく、終楽章の素晴らしい鋼の弦によるクライマックスも見事。ロンドンの類いまれな演奏としての評価すべきでしょう。

ロンドン以上に見事なのが続くV字。1楽章の切り裂くような特徴的なメロディーの本質をセルの鋼の弦がえぐりまくり、2楽章ののどかな情景との鮮明な対比。3楽章のメヌエットは面でとらえた木炭デッサンのような構えの大きな展開、そしてフィナーレはハイドンの天才を完全に音に再現。降りてきましたよ、神様が。

最後に収められたオックスフォードは高音がオフ気味に変わるのが気になりますが、録音自体は1949年とは信じられないクォリティ。演奏自体は前2曲と共通するセルの特徴が聴かれますが、膨らみ気味の低音の豊かな響きがかえってセルのタイトな音響と相反するように聴こえてしまい、特徴を薄めてしまっているように感じられます。これが録音のバランスの問題なのか、演奏自体のコントラストの付け方まで含めた問題なのかはわかりませんが、この演奏の存在によって、セルの音響はかえって薄くも聴こえる低音弦の印象によって一層鮮明になっていることがわかります。オックスフォード自体は昨日のライヴ盤のほうが一枚上との評価です。

総じて、脂の乗り切った壮年期のセルの好みがライヴ以上に徹底された録音ということが出来るでしょう。自ら鍛え抜いたオケとの周到に準備したスタジオ録音ということも大きな違いとなっています。

文面からつたわるかとは思いますが、今回の演奏、ロンドンとV字は[+++++]、オックスフォードは[++++]としました。すなわち、セルが好きな方は「必聴」のアルバムです!

8月末にソニークラシカルからリリース予定のハイドンの交響曲10曲セットとの録音の違いも悩ましいですね、、、(笑)
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