H. R. A. Award 2018
基本的には私がその年にレビューしたハイドンの曲のアルバムから、某メジャー音楽出版社のアカデミックな賞をパクって分野別のベスト盤を選ぼうというもの。新譜も旧譜もCDもLPもごちゃ混ぜですが、すでに世評の高いアルバムをここで表彰しても大勢に影響はありませんので、当ブログが取り上げないと誰も取り上げないような、真に素晴らしい演奏を収めたアルバムにスポットライトを当てようというのが真の意図であります。
ということで、2018年の分野別ベスト盤を開陳いたしましょう。
【交響曲部門】

2018/01/09 : ハイドン–交響曲 : オーマンディ/フィラデルフィア管の奇跡、時計(ハイドン)
ハイドンの交響曲ではジョヴァンニ・アントニーニや飯森範親による全集を見据えた企画が進行中で、どちらもいい演奏がリリースされ続けています。また古い演奏ではハンス・ロスバウトによる放送録音がまとまってリリースされるなど注目すべきアルバムがリリースされています。そんな中、古い録音のLPをいろいろ聴いた中で最も驚いたのが、このオーマンディ盤。もちろんオーマンディといえば大御所ですし、膨大な録音が残されていますが、個人的にはいまひとつハイドンの交響曲を振る人とのイメージを持っていませんでした。このアルバムを聴いて目から鱗が落ちた次第。全盛期のセルやライナーにも引けを取らない素晴らしい演奏に本当に驚いた次第。今更ながらフィラデルフィアサウンドの魅力に開眼いたしました。正攻法で仕上げられた豪華絢爛なハイドンの交響曲の魅力が炸裂します!
【管弦楽協奏曲部門】

2018/08/08 : ハイドン–協奏曲 : ヴァレンティナ・カメニコヴァのピアノ協奏曲集(ハイドン)
ハイドンの協奏曲は好きな分野なので、いろいろ聴いていますが、このカメニコヴァのピアノ協奏曲集、協奏曲なのにソロが実に控え目という超珍しい演奏。控え目というだけでなく、実に慎ましやかで繊細なニュアンスに富んだピアノで、こうしたアプローチがあり得るとは全く思いもつかなかったものですが、この静かな響きがしっかりと心に刺さる実に見事な演奏なんですね。このところ協奏曲のアルバムは新譜もいろいろリリースされていますが、キレのいい演奏はいろいろありますが、現代風のキレのいい演奏という枠からあと一歩踏み出してこないものがほとんど。先日リリースされたアルゲリッチとマイスキーのライヴはそうした意味で一歩も二歩も踏み出した爆演でしたが、ハイドンの演奏としてこれでいいのかという点もあり、カメニコヴァ盤を選んだ次第です。
【弦楽四重奏曲部門】

2018/09/29 : ハイドン–弦楽四重奏曲 : ニュー・ヘルシンキ四重奏団による「日の出」(ハイドン)
今年は東京クヮルテットもグリラーもオルランドもケッケルトもタネーエフも聴いていますが、選んだのはおそらく誰も知らないと思われるニュー・ヘルシンキ四重奏団による日の出。もちろん、演奏は日の出のファーストチョイスとしてふさわしい、素晴らしい演奏だから選んだわけです。東京クヮルテット、グリラー、オルランド、ケッケルトはそれぞれハイドンの演奏としては評価の確立しているものであり、ハイドンの良い演奏をしそうだとの想像力も働く団体ゆえ、ハイドンの弦楽四重奏曲の愛好家の皆さんに敢えて当ブログが今推すべきものとは思っておりません。今回、最終的にタネーエフとこのアルバムで逡巡しましたが、最終的にはこのニュー・ヘルシンキ四重奏団というマイナーな団体の偉業を称えるということが最も重要であるということで選んだ次第。均整のとれた素晴らしい演奏ですので、再生環境がある方は是非手に入れていただきたいと思います。
【室内楽部門】

2018/06/06 : ハイドン–室内楽曲 : 【新着】絶品! トリオ・ヴァンダラーのピアノ三重奏曲集第2弾(ハイドン)
トリオ・ヴァンダラーが16年ぶりにハイドンのピアノトリオの録音をリリースしたもの。記事本編に書いたように、トリオ・ヴァンダラーのピアノトリオの第1弾は私がハイドンのピアノトリオに目覚めるきっかけとなった思い出のアルバム。その後ピアノトリオといえば当ブログではトリオ・ヴィヴェンテがメガトン級の衝撃で話題をさらいましたが、演奏はそのヴィヴェンテに勝るとも劣らぬ精緻かつ愉悦感溢れるもの。弦楽四重奏以上にアンサンブルの面白さを堪能でき、ピアノが加わることでスリリングさも加わります。最近twitterでコメントをいただき聴き直した奥村和雄のヴァイオリンとヴィオラのためのデュエットや、トリオ・ディ・トリエステのジプシーロンドも素晴らしかったですが、ヴァンダラーの完成度が勝りました!
【ピアノ曲部門】

2018/05/02 : ハイドン–ピアノソナタ : トッド・クロウのピアノソナタ集(ハイドン)
今年1番の掘り出し物はこのアルバムでしょう。ジャケットを見てこのアルバムからはいい演奏のアルバムに共通する霊気のようなものを感じるのは私だけでしょうか。私自身全く未知のピアニストでしたが、このアルバムに収められたハイドンのソナタを聴くと、あまりにも見事な語り口に惹きつけられます。これはハイドンのピアノソナタを愛するすべての人に聴いてほしい名盤でしょう。騙されたと思って是非聴いてみてください。近年ハイドンの演奏に精力を傾けるポール・スミスや、若手のギョーム・ベロンの演奏も良かったんですが、やはりトッド・クロウの奏でる音楽の深さがそれに勝りました。
【声楽曲部門】

2018/10/15 : ハイドン–オペラ : ステファニア・ヴォイトヴィチの挿入アリア(ハイドン)
このアルバムも知る人ぞ知るものでしょう。ハイドンの曲は挿入アリア1曲のみですが、それでもこのステファニア・ヴォイトヴィチという名ソプラノの素晴らしい声の異次元の美しさは伝わります。そして伴奏を担当するクルト・マズアも最高。ジャケットの品のいいデザインも含めて宝物となりました。
【映像部門】

2018/12/05 : ハイドン–オラトリオ : 【新着】エキルベイの天地創造Blu-ray(ハイドン)
2018/12/31 : Haydn Disk of the Month : Haydn Disk of the Month - December 2018
こちらは前記事で12月のベスト盤に取り上げたばかりのアルバムということで、詳しくはそちらをご覧ください。
昨年はここまででしたが、本年は部門を2つ新設です。ブログを確認してみると、2018年は随分とコンサートに出かけており、書いた記事も21件にもなります。やはり実演でしか味わえない音楽の魅力もあり、今後も時間が許せばできるだけコンサートには顔を出したいと思っています。ちなみにコンサートについてはハイドン以外のプログラム聴いており、表彰もハイドンものとそうでないものを分けて選ぼうかと思っております。
【コンサート部門(ハイドン)】

2018/10/18 : コンサートレポート : アントニーニ/ムローヴァ/読響によるハイドン・ベートーヴェン(サントリーホール)
HAYDN2032と題したシリーズでハイドンの交響曲全集を録音中のジョヴァンニ・アントニーニが初来日し、読響を振るということで出かけたコンサート。ハイドンはなんと「無人島」序曲1曲だけだったんですが、この「無人島」序曲がすごかった! 低く腰を落として全身全霊で指揮をするアントニーニの指示により、読響から聴いたこともない鋭い響きが繰り出され、まさに迫力満点。この1曲でノックアウトされました。今年聴いた最高のハイドンでした。そのあとのムローヴァとのベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲と交響曲2番もアントニーニならではの前衛的な演奏で絶品でした。その日のアントニーニはもう一つ別の日に軍隊を聴きましたが、そちらは少しテンションが下がって想定内。次点はマルクス・シュテンツによる「哲学者」。こちらも生で初めて聴く哲学者でしたが、左右の掛け合いやユーモラスな展開を実に見事に描いた素晴らしい演奏でした。
【コンサート部門(ハイドン以外)】

2018/11/27 : コンサートレポート : ズービン・メータ渾身の春の祭典(ミューザ川崎)
コンサートはハイドンに関わらずいろいろ行きましたが、今年一番感銘を受けたのはメータの春の祭典です。ヤンソンスの代役として登壇したメータでしたが、メータ自身も病み上がりで歩くのもおぼつかない体調。十分な演奏は期待できないかなと思いきや、シューベルトも春の祭典も、往時の重量級のメータサウンド炸裂。シューベルトの分厚い響き、春の祭典は横綱相撲、アンコールのチャイコフスキーの白鳥の湖は夢見心地。今年一番暖かい拍手が会場を包む感動的なコンサートでした。演奏内容だけでいえば、ロト/レ・シエクルの春の祭典などが素晴らしかったんですが、メータはもう聴くことができないかもしれない体調だけに、心に響きました。
以上、2018年のベスト盤でした。
なんだか書いているうちに長くなり、気づいたら日をまたいでしまっていました。喪中ゆえおめでたい挨拶はできませんが、2019年も細々とブログを更新していきたいと思いますので、今年もよろしくお願いいたします。
2019年が皆様にとって良い年になりますように。
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