作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

ホルスト・シュタイン/ドレスデン・シュターツカペレの太鼓連打、オックスフォード(ハイドン)

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前記事でビーチャムの優美な交響曲を聴いて、穏やかな交響曲をもう少し聴いてみたくてLPの中から取り出した1枚。

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ホルスト・シュタイン(Horst Stein)指揮のドレスデン・シュターツカペレ(Staatskpelle Dresden)の演奏で、ハイドンの交響曲103番「太鼓連打」、92番「オックスフォード」の2曲を収めたLP。収録は1961年、レーベルはETERNA。

N響に度々客演していたので日本ではおなじみの方も多いホルスト・シュタイン。私は学生時代に父の仕事の関係で回してもらったコンサートのチケットで実演を聴いたことがあります。朧げな記憶とN響の演奏記録を照合すると、聴いたのはおそらく1983年2月にNHKホールでモーツァルトのプラハ、ヒンデミットのシンフォニア・セレーナ、オネゲルの交響曲3番 「礼拝」などが演奏されたコンサート。この日は大学の製図の締め切りで前日が徹夜だったため、モーツァルトは完全に子守唄で熟睡。目が覚めたのはヒンデミットに入ってから。ずんぐりむっくりしたシュタインの意外に緻密なタクトからの繰り出される多彩な響きと、穏やかな起伏を経て盛り上がる流れの良さ。この時はじめてヒンデミットを聴きましたが、独特な音楽に興味を持った覚えがあります。そしてオネゲルも聴いたことがあったのはパシフィック231くらい。こちらもオネゲルの迫力を生で存分に味わい、職人気質のホルスト・シュタインの繰り出す音楽の魅力を知った次第。

ホルスト・シュタインはWikipediaなどによれば、1928年、ドイツのエルバーフェルト(現ヴッパータール市)生まれの指揮者。フランクフルト音楽大学、ケルン音楽大学などで学び、その後はヴッパータール市立劇場合唱指揮者、ハンブルク州立歌劇場指揮者、ベルリン国立歌劇場を経てマンハイム国立劇場音楽監督になるなど、オペラの人。1952年から1955年にかけてバイロイト音楽祭でクナッパーツブッシュ、カイルベルト、カラヤンらの助手を務め、1962年にはバイロイトで「パルジファル」を指揮。1970年には「ニーベルングの指環」全曲を指揮するなどワーグナー指揮者として知られる人です。その後ウィーン国立歌劇場第1指揮者、ハンブルク州立歌劇場音楽総監督、スイス・ロマンド管弦楽団音楽監督、バンベルク交響楽団首席指揮者などを歴任するなど世界の一流どころで活躍。N響には16回客演しているとのこと。2008年に亡くなっています。

シュタインのハイドンの録音はおそらくこのアルバムのみ。しなやかで自然な流れと、大局を見据えて穏やかに盛り上げるコントロールはオペラの人ならではと言っていいでしょう。ハイドンの交響曲から穏やかに盛り上がる曲である太鼓連打を選ぶところも流石なところです。

Hob.I:103 Symphony No.103 "Mit dem Paukenwirbel" 「太鼓連打」 [E flat] (1795)
モノラルながらモノラル用のプレーヤーでかけると適度に鮮明でピラミッドバランスの分厚い音色が心地よい録音。テンポもフレージングもオーソドックスですが、凡庸な感じは一切せず、むしろ揺るぎない安定感と迷いのない説得力に満ち溢れている感じ。主題に入るとオケの分厚い響きの魅力がさらに増していきます。そしてフレーズ毎の表現のキレ味も見事。オケのすべてのパートがあるべきバランスにしっかりとはまって完璧な響きが繰り出されます。まさに太鼓連打の理想的な演奏。優美な曲のフォルムを堪能できます。1楽章の最初と最後のティンパニも実に穏やかに響き渡ります。
続くアンダンテも穏やかでジワリと盛り上がる期待通りの見事なコントロール。ツッコミどころ皆無の完璧に淀みのない音楽。ホルスト・シュタインという人の堅実な音楽がハイドンにピタリとはまります。そしてメヌエットでもゆったりざくっりとここでもしなやかに音楽が流れます。外連味なく堅実な運びは、誰にもできそうですが、おそらくこの高みには誰も到達できないであろう、地道に磨き上げたコントロール能力のなせる技とみました。
そして遠くから響くホルンの絶妙に美しい音色で始まる終楽章は、曲の結びにふさわしい盛り上がりを予感させる、さざめくような音階から入ります。気持ちよく吹き上がるオケを自在にコントロールしてここでも完璧なバランスに仕上げてきます。恐ろしいばかりのコントロール能力。最後まで冷静に温かい音楽を作っていく能力に脱帽。

Hob.I:92 Symphony No.92 "Oxford" 「オックスフォード」 [G] (1789)
太鼓連打同様、完璧に磨き抜かれたフォルムを纏った序奏から入ります。続く主題の推進力と迫力はなかなかのもの。速めのテンポによるフレーズのキレが良いのが推進力につながっているのでしょう。徐々に畳み掛けるような迫力を帯びて、1楽章から手に汗握る展開に圧倒されます。強奏の合間の木管の美しい響きがバランス良く聴こえるポイントなのでしょうか。素晴らしい迫力に惹きつけられます。
この曲の白眉たるアダージョは絶美。特に弦楽器のメロディーと木管に内声部のとろけるようなハーモニーは出色。完璧なフォルムに仕立てられた音楽に身をまかせるだけ。ハイドンの書いた音楽の美しさに何も足さず、素材だけで仕上げた本当の美しさ。ここまでの完成度に到達する演奏が他にありましょうか。メヌエットは太鼓連打同様優雅で堂々としたもの。そして、オックスフォードの聴きどころであるフィナーレの冒頭のメロディーはオケが軽やかに反応し躍動感満点。変奏を重ねるうちに徐々に盛り上がり、自然なクライマックスを構築。最後はビシッと決まります。

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ホルスト・シュタインによるハイドンの太鼓連打とオックスフォード。流石に歌劇場で鍛え抜かれたコントロール能力は伊達ではありませんね。ドレスデン・シュターツカペレの重厚な音色と相まって、ハイドンの交響曲の決定盤的な素晴らしい演奏に痺れました。派手な演出も個性的な解釈もないんですが、この演奏より完成度の高い演奏はありえないほどの揺るぎない構築感。その上ウィットに富んだフレージングもあり、晴朗なハイドンの魅力を存分に表していると言っていいでしょう。モノラルながら録音も盤石で、多くの方に聴いていただきたい名盤と言っていいでしょう。評価は[+++++]とします。



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