【新着】ビーチャムの99番、時計初出ライヴ(ハイドン)
いやいや、素晴らしいアルバムがリリースされました!

TOWER RECORDS / amazon
サー・トーマス・ビーチャム(Sir Thomas Beecham)指揮のロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団(Royal Philharmonic Orchestra)の演奏で1950年代のBBCによるライヴを集めた4枚組のCD。ジャケットの左肩には誇らしげに"FIRST CD RELEASE"と記されており、初CD化ということがわかります。この中の1枚目にハイドンの交響曲99番、101番「時計」が収められています。収録は99番が1954年9月16日にロンドンのロイヤル・アルバートホール、時計が1959年10月25日に同じくロンドンのロイヤル・フェスティヴァルホールでのライヴです。レーベルはica CLASSICS。
ビーチャムといえば、1950年代にリリースしたザロモンセットの名録音が有名で、クラシカルなザロモンセットの決定盤的存在なのは、ハイドンファンのみなさまご承知の通り。かく言う私もザロモンセットの名演盤としてはビーチャムのアルバムは外せないものと見なしております。演奏はオーソドックスなものながら、揺るぎない説得力を帯びた、まさに定番的存在であります。当ブログでは交響曲は93番をだいぶ前に取り上げたきりになっておりました。
2013/07/24 : ハイドン–交響曲 : トーマス・ビーチャム/ロイヤルフィルの93番
2012/09/02 : ハイドン–オラトリオ : トーマス・ビーチャム/ロイヤル・フィルの四季
そのビーチャムの振るザロモンセットの交響曲に、BBCが録ったライヴがあるということで、本盤に興味を持った次第。ハイドン以外にもモーツァルト、ベートーヴェン、ブラームスなどの交響曲も収められており、非常に貴重な録音です。
Hob.I:99 Symphony No.99 [E flat] (1793)
録音はモノラルながら、柔らかなオーケストラの響きと、コンサート特有のざわめきが味わえるなかなかいい録音。このアルバムを聴く前にEMIのセッション録音を聴き直しましたが、EMI盤の直裁な響きに対して、テンポがゆったりとして、実に自然な響きが心地いいですね。そして序奏から主題に入る流れのしなやかさはこの99番という曲の魅力をより素直に表現している感じ。自然な躍動感とゆったり流れる音楽の美しさが存分に味わえます。そしてビーチャムの美点はフレーズごとに実に品よく表情を描くこと。まさに古き良き時代のハイドンの見本のような演出ですが、古さを感じさせるというよりは普遍的な魅力を掘り起こしている感じ。1楽章は穏やかな構成感の美しさで聴かせます。
そして、99番の白眉であるアンダンテ。美しいメロディーが彫りの深い表情付けによって実に典雅な音楽に昇華。ハイドンの緩徐楽章の中でも最も美しい曲だけに、ジェントルなビーチャムの手に掛かるとロマネスクのバシリカのような形式美の極致に至るレベルになります。自然な音楽の呼吸に身を任せる至福のひととき。
そよ風のような軽い入りのメヌエット。メヌエットがなぜここに挟まれたかを考えての演出でしょう。この軽さの表現と、穏やかな展開がビーチャム独特の品のよさ。トリオを含めて絶妙に自然な軽さを表現。
フィナーレはメヌエットの軽さを引き継いでさらりと入りながら、徐々にオケに力が漲り、軽さと華麗さを伴いながらクライマックスへ向かっていく流れの面白さを存分に味わえます。オケには微塵も力みなく、余裕にあふれた表現。ハイドンはこうでなくちゃと言わんばかり。全楽章に優美さが香る名演です。拍手付き。
Hob.I:101 Symphony No.101 "Clock" 「時計」 [D] (1793/4)
録音年代とホールは変わりますが、こちらもモノラルで録音は悪くありません。しなやかさは99番で、ホールの残響はこちらの方が木質系の響きを感じます。優美な99番に対して、時計の1楽章はビーチャム流の品の良さは感じるものの、主題に入るとグイグイとオケを煽っていきなり大迫力。続く楽章との対比を鮮明に描こうというのか、ビーチャムにしてはかなりの迫力で攻めてきます。この時計の1楽章は見事な構成の曲ゆえ、それを見切っての踏み込みでしょう。低音弦にティンパニが唸り、アクセントも引き締まってライヴならではの高揚感。ちょっとトスカニーニを思わせるような見得を切る瞬間もあり、1楽章はビシッと決めます。
典雅に来ると思ったアンダンテですが、リズムを打つ管楽器がちょっと無骨さを感じさせ、流麗な弦楽器と合わさってなかなか面白い表情。古い時計のコミカルな動きを描こうというのでしょう。展開部からは1楽章同様、オケが唸りなかなかの迫力。表情の無骨さは変わらず、それが粗さではなく、迫力につながっているのは流石です。
そして、メヌエットはそのまま荒削りな魅力を伴って、グイグイときます。曲の構成をしっかり踏まえながらも、オケに演奏を任せてあまり細かいコントロールはしていない感じ。特にトリオのフルートなどはかなり自由に吹いている感じです。それでもオケの吹き上がりが心地よくハイドンのメヌエットの楽しさの真髄は突いています。メヌエットも最後のアクセントで釘を刺します。
フィナーレは期待通りオケがフルスロットルで気持ちよく盛り上がります。ビーチャムは面白いようにテンポを上げてオケを煽りまくり、オケもそれに応えてなりふり構わず爆発。こちらもライヴならではの高揚感。最後は大見得を切って観客も拍手喝采!
セッション録音の品のいい印象が強かったビーチャムですが、この時計はかなりオケに任せる面白い演奏でした。99番の方は典雅の極致、そして時計は最晩年のビーチャムの遊び心のようなものが垣間見える名演でした。ビーチャムが亡くなったのは1961年で60年には80歳で引退していますので、54年の99番は最も充実してオケをしっかりとコントロールした名演、時計はおそらくコントロール能力も落ちてきている時の演奏なのでしょう。このアルバムのハイドンの2曲はビーチャムという人の人生の記録でもありますね。特に99番の素晴らしさが心に残りました。両曲とも評価は[+++++]とします。
なお、ハイドンの2曲の後にボッケリーニのシンフォニア(G521)が収められていますが、これが実に面白い曲で、演奏も最高。こちらも楽しめます!

TOWER RECORDS / amazon
サー・トーマス・ビーチャム(Sir Thomas Beecham)指揮のロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団(Royal Philharmonic Orchestra)の演奏で1950年代のBBCによるライヴを集めた4枚組のCD。ジャケットの左肩には誇らしげに"FIRST CD RELEASE"と記されており、初CD化ということがわかります。この中の1枚目にハイドンの交響曲99番、101番「時計」が収められています。収録は99番が1954年9月16日にロンドンのロイヤル・アルバートホール、時計が1959年10月25日に同じくロンドンのロイヤル・フェスティヴァルホールでのライヴです。レーベルはica CLASSICS。
ビーチャムといえば、1950年代にリリースしたザロモンセットの名録音が有名で、クラシカルなザロモンセットの決定盤的存在なのは、ハイドンファンのみなさまご承知の通り。かく言う私もザロモンセットの名演盤としてはビーチャムのアルバムは外せないものと見なしております。演奏はオーソドックスなものながら、揺るぎない説得力を帯びた、まさに定番的存在であります。当ブログでは交響曲は93番をだいぶ前に取り上げたきりになっておりました。
2013/07/24 : ハイドン–交響曲 : トーマス・ビーチャム/ロイヤルフィルの93番
2012/09/02 : ハイドン–オラトリオ : トーマス・ビーチャム/ロイヤル・フィルの四季
そのビーチャムの振るザロモンセットの交響曲に、BBCが録ったライヴがあるということで、本盤に興味を持った次第。ハイドン以外にもモーツァルト、ベートーヴェン、ブラームスなどの交響曲も収められており、非常に貴重な録音です。
Hob.I:99 Symphony No.99 [E flat] (1793)
録音はモノラルながら、柔らかなオーケストラの響きと、コンサート特有のざわめきが味わえるなかなかいい録音。このアルバムを聴く前にEMIのセッション録音を聴き直しましたが、EMI盤の直裁な響きに対して、テンポがゆったりとして、実に自然な響きが心地いいですね。そして序奏から主題に入る流れのしなやかさはこの99番という曲の魅力をより素直に表現している感じ。自然な躍動感とゆったり流れる音楽の美しさが存分に味わえます。そしてビーチャムの美点はフレーズごとに実に品よく表情を描くこと。まさに古き良き時代のハイドンの見本のような演出ですが、古さを感じさせるというよりは普遍的な魅力を掘り起こしている感じ。1楽章は穏やかな構成感の美しさで聴かせます。
そして、99番の白眉であるアンダンテ。美しいメロディーが彫りの深い表情付けによって実に典雅な音楽に昇華。ハイドンの緩徐楽章の中でも最も美しい曲だけに、ジェントルなビーチャムの手に掛かるとロマネスクのバシリカのような形式美の極致に至るレベルになります。自然な音楽の呼吸に身を任せる至福のひととき。
そよ風のような軽い入りのメヌエット。メヌエットがなぜここに挟まれたかを考えての演出でしょう。この軽さの表現と、穏やかな展開がビーチャム独特の品のよさ。トリオを含めて絶妙に自然な軽さを表現。
フィナーレはメヌエットの軽さを引き継いでさらりと入りながら、徐々にオケに力が漲り、軽さと華麗さを伴いながらクライマックスへ向かっていく流れの面白さを存分に味わえます。オケには微塵も力みなく、余裕にあふれた表現。ハイドンはこうでなくちゃと言わんばかり。全楽章に優美さが香る名演です。拍手付き。
Hob.I:101 Symphony No.101 "Clock" 「時計」 [D] (1793/4)
録音年代とホールは変わりますが、こちらもモノラルで録音は悪くありません。しなやかさは99番で、ホールの残響はこちらの方が木質系の響きを感じます。優美な99番に対して、時計の1楽章はビーチャム流の品の良さは感じるものの、主題に入るとグイグイとオケを煽っていきなり大迫力。続く楽章との対比を鮮明に描こうというのか、ビーチャムにしてはかなりの迫力で攻めてきます。この時計の1楽章は見事な構成の曲ゆえ、それを見切っての踏み込みでしょう。低音弦にティンパニが唸り、アクセントも引き締まってライヴならではの高揚感。ちょっとトスカニーニを思わせるような見得を切る瞬間もあり、1楽章はビシッと決めます。
典雅に来ると思ったアンダンテですが、リズムを打つ管楽器がちょっと無骨さを感じさせ、流麗な弦楽器と合わさってなかなか面白い表情。古い時計のコミカルな動きを描こうというのでしょう。展開部からは1楽章同様、オケが唸りなかなかの迫力。表情の無骨さは変わらず、それが粗さではなく、迫力につながっているのは流石です。
そして、メヌエットはそのまま荒削りな魅力を伴って、グイグイときます。曲の構成をしっかり踏まえながらも、オケに演奏を任せてあまり細かいコントロールはしていない感じ。特にトリオのフルートなどはかなり自由に吹いている感じです。それでもオケの吹き上がりが心地よくハイドンのメヌエットの楽しさの真髄は突いています。メヌエットも最後のアクセントで釘を刺します。
フィナーレは期待通りオケがフルスロットルで気持ちよく盛り上がります。ビーチャムは面白いようにテンポを上げてオケを煽りまくり、オケもそれに応えてなりふり構わず爆発。こちらもライヴならではの高揚感。最後は大見得を切って観客も拍手喝采!
セッション録音の品のいい印象が強かったビーチャムですが、この時計はかなりオケに任せる面白い演奏でした。99番の方は典雅の極致、そして時計は最晩年のビーチャムの遊び心のようなものが垣間見える名演でした。ビーチャムが亡くなったのは1961年で60年には80歳で引退していますので、54年の99番は最も充実してオケをしっかりとコントロールした名演、時計はおそらくコントロール能力も落ちてきている時の演奏なのでしょう。このアルバムのハイドンの2曲はビーチャムという人の人生の記録でもありますね。特に99番の素晴らしさが心に残りました。両曲とも評価は[+++++]とします。
なお、ハイドンの2曲の後にボッケリーニのシンフォニア(G521)が収められていますが、これが実に面白い曲で、演奏も最高。こちらも楽しめます!
- 関連記事
-
-
【新着】ジョヴァンニ・アントニーニの交響曲全集第7巻(ハイドン)
2019/03/12
-
【新着】飯森範親/日本センチュリー響の交響曲集第6巻(ハイドン)
2019/02/26
-
【新着】エルンスト・メルツェンドルファーの交響曲全集(ハイドン)
2019/02/11
-
ホルスト・シュタイン/ドレスデン・シュターツカペレの太鼓連打、オックスフォード(ハイドン)
2018/12/22
-
【新着】ビーチャムの99番、時計初出ライヴ(ハイドン)
2018/12/18
-
クルト・マズア/ベルリン放送響の交響曲5番、61番(ハイドン)
2018/12/02
-
【新着】ジョヴァンニ・アントニーニの交響曲全集第6巻(ハイドン)
2018/07/07
-
【新着】飯森範親/日本センチュリー響の交響曲集第4巻(ハイドン)
2018/06/29
-
【新着】ハンス・ロスバウトの交響曲集(ハイドン)
2018/04/06
-