作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

アルト・ノラス/オッコ・カム/ヘルシンキ室内管のチェロ協奏曲1番(ハイドン)

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新譜もいろいろ入手して聴いているのですが、なかなかこれぞというものがありません。

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アルト・ノラス(Arto Noras)のチェロ、オッコ・カム(Okko Kamu)指揮のヘルシンキ室内管弦楽団(Helsinki Chamber Orchestra)の演奏で、フィンランドの作曲家ヨーナス・コッコネン(Joonas Kokkonen)のチェロ協奏曲とハイドンのチェロ協奏曲1番を収めたLP。ハイドンの収録は1976年11月9日、アルヴァ・アアルトの設計で有名なヘルシンキの文化の家(Kulttuuritalo)のコンサートホールでのセッション録音。レーベルはFINLANDIA。

このアルバム、オークションで見かけて、ググッときたもの。何よりジャケットに描かれたスケッチはアアルトの有名はフィンランディアホールのホール内部のデザインのスケッチということでビックリ。しかもハイドンとは全く縁遠いと思っていたオッコ・カムの振るヘルシンキ室内管による録音。このような組み合わせの録音があること自体も全く知りませんでしたので、私にとってはかなりのインパクトがありました。

私はシベリウスといえばオッコ・カムが刷り込みで、1昨年の秋に来日して神奈川フィルを振ったコンサートに行っています。

2016/10/18 : コンサートレポート : オッコ・カム/神奈川フィルのシベリウス(みなとみらいホール)

この記事とコメントを読んでいただくと、私のオッコ・カムならびにアアルトに対する格別なる偏愛がわかるかと思います(笑)

さて、このアルバム、本来はチェロのアルト・ノラスが看板であるわけで、ノラスについて触れないわけには参りません。確認してみると手元にスロヴァキア室内管との1987年のチェロ協奏曲1番、2番の録音もありました。いつものようにWikipediaなどを紐解くと、ノラスは1942年フィンランドのトゥルク生まれでヘルシンキのシベリウス・アカデミーでチェロを学び、その後パリ音楽院でポール・トルトゥリエに師事、1966年のチャイコフスキーコンクールで2位となり、欧米で活躍。ソロのみならずクァルテットなど1970年からはシベリウス・アカデミーの教授として教育者としても活躍しています。

さて、このアルバム、ハイドンの協奏曲はB面で、メインのA面はヨーナス・コッコネンのチェロ協奏曲が収められています。ライナーノーツを紐解くと、ヨーナス・コッコネンのこの協奏曲の作曲には3人の存在が深く影響を与えているとのことで、1人目が建築家のアルヴァ・アアルト。コッコネンの自宅をアアルトが設計し、その際の対話から音楽と建築が音楽と言葉よりも近いものであるとの確信に至ったとのこと。それゆえジャケットにアアルトのスケッチが使われているわけですね。2人目がアルト・ノラス。1966年のチャイコフスキーコンクールの演奏の素晴らしさに触れ、この作品はアルト・ノラスに献呈され、1969年にノラスのチェロで初演されました。3人目がコッコネンの母親。初演の年1969年に亡くなりましたが、3楽章のアダージョはコッコネンが母親の思い出のために書いた短いオルガンのための作品のテーマをもとにしているとのこと。

そのコッコネンのチェロ協奏曲は幽玄な雰囲気の中にチェロの深い音色が響き渡る作品。現代風でもありシベリウスの延長上でもあり、北欧風でもある音楽。印象的なのはアルト・ノラスのチェロの引き締まった音色。この作品の価値を問えるほどにフィンランドの音楽を聴いているわけではありませんが、アアルトの自然と抽象芸術の融合と深いレベルで共鳴しているような気がするのが不思議なところですね。

Hob.VIIb:1 Cello Concerto No.1 [C] (1765–67)
さて、B面ながら肝心のハイドンです。オッコ・カムの振る伴奏は予想通り、どこかにローカル色を感じさせながらもオーソドックスな入り。アルト・ノラスのチェロは大変筋の通った律儀な入り。キリリと背筋が伸びる演奏。まさに教科書通りの安心して聴ける演奏。カムの伴奏は徐々にロマンティックな雰囲気にシフトしていき、ノラスも徐々に溜めを効かせてボウイングに勢いが出てきます。チェロの表情に凛とした冷たさを感じさせるので、音楽が引き締まります。高音域と低音域で音色を変化させることで淡々とした流れの音楽にも面白みが加わり、個性的な演奏になります。肩肘張らずに流れの良さを保ち、1楽章のカデンツァに至ってノラスのボウイングが本領発揮。ピシッと筋が通ったカデンツァにこちらも身が引き締まる感じ。
続くアダージョはカムの聴かせ上手さが浮かび上がります。ゆったりとメロディーラインをなぞりながらも、しなやかな深みを感じさせる見事な伴奏。ノラスが入る前に完璧なお膳立てで迎えます。ノラスもアダージョ楽章の美しい旋律をしっかりと腰を落としてこなしていきます。カムの描く程よい情感にノラスが乗ってゆったりとした音楽を作っていきます。半ば過ぎの盛り上がりでぐっと力が入って山を作ったかと思うと、すっと力を抜いてコントラストをしっかりつけることで峻厳な印象を残すあたりの手腕は見事。
フィナーレはこちらも力を抜いてさらっと行くかと思いきや、そこここにくっきりとしたアクセントををつけて推進力を保ちながらも輪唱のようにメロディがこだまするような効果を狙ってきます。一定のリズムによる快速テンポが生み出す独特の効果はこの曲を知り尽くした者のなせる技と言っていいでしょう。最後まで爽快感に満ちた演奏でした。

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ヨーロッパの辺境、フィンランドの奏者、レーベルによるハイドンのチェロ協奏曲。少し前に取り上げたニュー・ヘルシンキ四重奏団による日の出同様、素晴らしいプロダクションに仕上がっています。ハイドン目当てで手に入れたアルバムですが、期せずしてアアルトと親交があったヨーナス・コッコネンの作品も知ることとなり、視野を広げることができました。ヘルシンキ北方にあるコッコネンの自邸は調べてみた所、通年一般公開されているようですので、老後の旅行先として候補に入れておくことにします(笑) ハイドンの評価は[+++++]とします。

(参考)
Alvar Aalto's Villa Kokkonen



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