作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

ジョージ・マルコム/マリナー/アカデミー室内管のハープシコード協奏曲(ハイドン)

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いいLPが立て続けに手に入ります。

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TOWER RECORDS(CD) / amazon(CD)

ジョージ・マルコム(George Malcolm)のハープシコード、ネヴィル・マリナー(Neville Marriner)指揮のアカデミー室内管弦楽団(Academy of St. Martin-in-the-Fields)の演奏で、ハイドンの序曲(Hob:Ia.7)、ハープシコード協奏曲(Hob.XVIII.11)、J. C. バッハのハープシコード協奏曲イ長調の3曲を収めたLP。収録はLPには記載されておりませんが、同内容の演奏を収録したEloquence AustraliaのCDの情報によると1968年5月にロンドンのキングスウェイホールでのセッション録音とのこと。LPは米London盤。

マリナーのハイドンの録音は名前付交響曲集や主要ミサ曲、天地創造に四季など多岐にわたりますが、中でも協奏曲の伴奏はかなりの数があります。手元にはほとんどの録音が揃っていると思っていたところ、最近オークションでこのアルバムを見かけ、所有盤リストをチェックすると未知のアルバムであることが判明。そろりと落札して手に入れた次第。しかも録音が60年代とマリナーの録音の中では古い方のものということで、マリナーのハイドンの原点のようなものが見えてくるのではないかとの期待も膨らみます。

ちなみに、当ブログではマリナーの演奏はかなり取り上げています。

2018/03/14 : ハイドン–交響曲 : マリナー/アカデミー室内管の99番、102番(ハイドン)
2012/10/26 : ハイドン–交響曲 : ネヴィル・マリナー/アカデミー室内管の「悲しみ」
2012/08/21 : ハイドン–交響曲 : マリナー/アカデミー室内管の86番
2011/08/10 : ハイドン–声楽曲 : 【お盆特番1】マリナー/ドレスデン・シュターツカペレのネルソンミサ
2011/04/24 : ハイドン–協奏曲 : バリー・タックウェル/マリナーのホルン協奏曲
2011/03/03 : ハイドン–協奏曲 : ハーデンベルガー、マリナー/ASMFのトランペット協奏曲
2011/02/27 : ハイドン–オラトリオ : フィッシャー=ディースカウフル登場、マリナー/ASMFの天地創造-2
2011/02/27 : ハイドン–オラトリオ : フィッシャー=ディースカウフル登場、マリナー/ASMFの天地創造
2010/12/06 : ハイドン–声楽曲 : マリナー/ドレスデン・シュターツカペレの戦時のミサ
2010/10/03 : ハイドン–協奏曲 : リン・ハレルのチェロ協奏曲集

Hob.Ia:7 Overture [D] (1777)
いつものようにLPをVPIのクリーナーで綺麗にクリーニングして針を落とすと、最初の序曲の瑞々しい響きに耳を奪われました。録音は万全。広々とした空間にオケの響きが広がります。自宅が響きの良いキングスウェイホールになったような素晴らしさ。もともと推進力に満ちた序曲ですが、この演奏のすごいのは弦楽器の異次元のキレ味。胸のすくような素晴らしい推進力と爽快極まりないヴァイオリンのボウイングに驚きます。ここまでの愉悦感を感じさせる弦は滅多に聴けるものではありません。マリナーの演奏はモーツァルトを含めて随分聴きましたが、弦の素晴らしさにおいてこの演奏に勝るものはありません。いきなり絶品の演奏に痺れます。

Hob.XVIII:11 Concerto per il clavicembalo(l'fortepiano) [D] (1784)
続いてハイドンのクラヴィーア協奏曲の最高傑作が続きます。マリナーの率いるアカデミー室内管の弦楽陣は、この曲の序奏でもキレ味抜群。ピアノやフォルテピアノの演奏に慣れてはいますが、ジョージ・マルコムのハープシコードはマリナーに負けずにリズムのキレが良く、繊細ながらオケをリードすることで十分にソロの役割をこなしています。音量および表現力の幅の大きいオケに対して、マルコムも永遠に続くようなトレモロの繊細さとデリケートな表情づけでオケに劣らぬ存在感を発揮しているのがすごいところ。マリナーもそれを意識してか、疾走感で先行するハープシコードをサポートする姿勢に徹してソロを引き立てる余裕を見せます。カデンツァではマルコムの妙技が見事に決まります。
2楽章は少し速めのテンポで美しい響きのオケがリード。マルコムはハープシコードらしくテンポをあまり揺らさずに淡々と美しいメロディを描いていくことで曲の美しさを際立たせます。マリナーも淡々と応じますが、オケの深い響きの中に繊細なハープシコードの音色が漂う感じが絶妙で、現代楽器にハープシコードの演奏も捨てたものではないとの印象を残します。
終楽章は速めにくると思っていましたが、思った以上に表情豊かな入り。そして予想通り、ギリギリのところまでテンポを上げて推進力を最大限に発揮します。そんな中でもかなりデュナーミクの幅をとってくっきりと表情をつける余裕があります。刻々と変化していく表情を実に克明に表現しながら、どんどん曲が進んでいく快感。この終楽章の表情の変化の見事さもこの演奏の聴きどころ。力任せになりがちなフレーズに十分な余裕を持って臨み、曲の深みを表現する匠の技と言っていいでしょう。このコンチェルトも見事な演奏でした。

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最近レビューがLPばかりですが、珍しくこのアルバムはCDの方もEloquence Australia盤が現役です。手元にはLPしかありませんが、この演奏もLPの録音の素晴らしさがあって、これだけの素晴らしい演奏を楽しめるわけです。CDの方は未聴ですが、若きマリナーが主兵アカデミー室内管からどれだけ素晴らしい響きを引き出していたかは伝わるものと思います。近年の古楽器による演奏は、様々なスタイルで新たな響きを引き出していますが、どっこいこうしたオーソドックスな演奏の最高峰を聴くと、スタイルはともかく、古楽器による演奏も音楽としてまだこの高みに達していないのかもしれないと思うようになります。マリナーのこの演奏、一聴をお勧めします。評価は[+++++]とします。



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