作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

アントニーニ/読響による「軍隊」など(東京芸術劇場)

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16日火曜日に続き、20日土曜はアントニーニの振る読響のコンサートを聴いてきました。

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読売日本交響楽団:第211回土曜マチネーシリーズ

火曜日はハイドンは歌劇「無人島」序曲だけだったんですが、この日は「軍隊」と本格的な曲がプログラムされ、しかもハイドンがとりを務めるというアントニーニらしい選曲。

ヴィヴァルディ:ドレスデンの楽団のための協奏曲(RV577)
ヴィヴァルディ:マンドリン協奏曲(RV425) マンドリン:アヴィ・アヴィタル(Avi Avital)
J.S.バッハ:マンドリン協奏曲(BWV1052) マンドリン:アヴィ・アヴィタル
ヴィヴァルディ:リコーダー協奏曲(RV443) リコーダー:ジョヴァンニ・アントニーニ(Giovanni Antonini)
ハイドン:交響曲100番「軍隊」

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この日はサントリーホールではなく、池袋の東京芸術劇場。同じ指揮者、オケでもホールが違うと響きがだいぶ違いますのでそのあたりがどう演奏の印象に影響するのかというのも聴きどころですね。

マチネーということで開演は14時。芸劇のマチネーの時には芸劇の1階のカフェで食事をしてコンサートに臨むのが習慣になりつつあります。お昼に到着してホールに上がるエスカレーターの裏のカフェでランチをいただきます。

食べログ:ベルギービール カフェ ベル・オーブ 東京芸術劇場

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お昼時だったので席に着くまでちょっと待ちましたが、5分ほどで座れ、まずはビールとスパークリングワインをいただきます。

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頼んだのはハンバーグにハヤシライス。ここは基本的に何を食べても美味しいですよ。

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ハヤシライスは牛スジを煮込んでコクがありました。

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お昼すぎについて、しばらくゆっくりして落ち着いてホールに上がります。

この日の席は2階席のやや右手。オケを遠くから見下ろす席でした。芸劇とサントリーホールはどちらも客席数約2000席で規模は変わらないんですが、サントリーがご存知のようにステージを囲うような客席で席からステージが比較的近いのに対し、こちらの東京芸術劇場は縦に長い構造のためステージが遠く感じます。席の位置の関係もありましたが、この違いが演奏の印象に結構大きな違いを生みました。

客席はほぼ満員。この日のプログラムはヴィヴァルディの比較的マイナーな曲がメインにしてはお客さんの入りはいいですね。やはりアントニーニの知名度が集客に大きく働いているのでしょう。

この日もコンサートミストレスは客演の日下紗矢子。1曲目のヴィヴァルディのドレスデンの楽団のための協奏曲ではヴァイオリンなどソロ楽器を立たせて協奏交響曲のような布陣。火曜のコンサートでは出だしの「無人島」序曲からフルスロットルの演奏だったのに対し、このヴィヴァルディは典雅に音楽を流す感じでテンションがだいぶ異なります。アントニーニは腰を落とすことなく、リズムを少々煽り気味に曲に緊張感を与える程度。ホールの容積に対してオケも小編成のため、アントニーニに期待される前衛的な踏み込みよりも、心地よくキレのいい音楽が流れるように聴こえます。オーボエとファゴットのソロが活躍する曲で、日下さんのヴァイオリンを含めてソロのレベルは非常に高く、引き締まった演奏にまとまりました。

続く2曲目はマンドリンがソロを務めるマンドリン協奏曲。マンドリン協奏曲とは非常に珍しく、私も初めて聴く曲。マンドリンという楽器がオケに対して音量的にソロとして目立つ存在となるかという点も危惧しましたが、結果的には全く問題ありませんでした。というのも伴奏は基本的にピチカートでの伴奏故、柔らかな音色の響きでの伴奏でマンドリンのメロディーにかぶることはありませんでした。この曲はもとよりマンドリンのために書かれた曲ということで、ヴィヴァルディもそのあたりをしっかり考慮して書いたということでしょう。解説を読むとヴィヴァルディがマンドリンのために書いた協奏曲はこの曲1曲のみとのこと。マンドリンのアヴィ・アヴィタルのマンドリンは音量、コントラスト、リズムのキレとも見事で、この短い曲の魅力がよくわかりました。帰って調べてみたところDGからアルバムがリリースされており、その道では有名な人なのでしょう。末尾に参考アルバムとしてリンクをつけておきました。アントニーニはここでもマンドリンを引き立てることに徹している感じで、腰は立ったままでした(笑)

ヴィヴァルディに続いて大バッハのマンドリン協奏曲が続きますが、バッハにマンドリン協奏曲があったかと思うと、これはチェンバロ協奏曲1番をアヴィタルがマンドリン用に編曲したものとのこと。こちらは聴き慣れた曲。ヴィヴァルディの方はマンドリン用に書き下ろしたということでマンドリンの音色と音楽性を活かし切ったものだったのに対し、こちらのバッハの方はマンドリンの音色の面白さは活きていたものの、音階の鮮やかさや速いパッセージの切れ味はチェンバロには及ばずという印象も残しました。こちらは古楽器オケの演奏はいくつも聴いているため、現代楽器のオケでの演奏で、ソロが古楽器で音色の澄んだマンドリンということで、ザラついたオケの感触がなく、ソロが浮かび上がるということで意外にいい響きに聴こえます。ただアントニーニはこの曲でも攻めてくる感じはせずキレ味を感じさせるのみ。マンドリンは速い音階が多い分技術的にはかなり高度なものがあり、最難部分では少しテンポを落とすことでその苦労を共有するような演出。バッハは古楽器演奏の刷り込みが多い分、マンドリンの音色の面白さを味わえるところはあるもののバッハの真髄に迫るという感じまでには至りませんでした。それでもお客さんはもちろんマンドリンの妙技に拍手喝采。

アンコールはちょっとクラシックのレパートリーではなさそうなアヴィタルの演奏に会場が釘付けになる素晴らしいものでした。終演後に張り出されたアンコール曲の張り紙には「アヴィタル:プレリュード(Bucimis)とありましたが、Bucimisを調べてみると、「ブチミシュ(Bučimiš)」とありブルガリア(西トラキア)地方で踊られる15/16拍子のダンスのこととのこと。こちらもベストアルバムに収録されていましたのでリンクを貼っておきます。

休憩を挟んでヴィヴァルディをもう1曲。

今度はアントニーニ自身がリコーダーソロを受け持つヴィヴァルディのリコーダー協奏曲。この曲も初めて聴きます。アントニーニは指揮台の横のソロが立つ席にリコーダーを持って立ち、すっと首を振って演奏に入ります。かなり小さなリコーダーですので、ソプラノあるいはソプラニーノでしょう。冒頭からリコーダーソロが大活躍。この曲は晴朗快活なアレグロ、リコーダーの哀愁漂うメロディーが印象的なラルゴ、アントニーニの指づかいの限界まで攻めるフィナーレで10分少しの小曲ですが、マンドリン同様、ソロの超絶技巧で聴かせる曲。関心はオケよりもソロに集まります。アントニーニはリコーダーソロで指が追いつかなくなる寸前まで攻めまくり(笑) こう来るとは思いませんでした。

そしてようやく最後のハイドンです。リコーダー協奏曲の演奏が終わるとステージ中央に置かれたチェンバロがステージ脇に移動され、オケも人数が増え、ようやくティンパニやグランカッサ、シンバルの出番です。アントニーニの進行中の交響曲全集の録音ではこれまでパリセット以降の曲の収録には至っておりませんので、ハイドンの大曲においてアントニーニがどのような演奏をするかを初めて聴くことになります。もちろん脳裏には数日前に聴いた、キレキレの「無人島」序曲とベートーヴェンの交響曲2番の余韻が残っておりますので、ようやくこの日のメインディッシュに至り、聴覚に全神経を集中させて聴き始めました。

ぐっと腰をかがめて入るかと思いきや、1楽章は意外に抑えた入り。序奏のコントラストをくっきりとつけて来るかと思いきや、それほどでもなく、金管を唸らせてくるかと思いきやこちらもそれほどでもなく、均衡を保ち、ティンパニも時折り皮を破らんばかりに強打する岡田さんも、そこまで力を入れない感じ。これは後半にクライマックスを持ってくる計算が働いているのではと察します。続く軍隊の行進場面のアレグレットでも、同様。もちろんアントニーニ風にくっきりとした表情と前衛的な雰囲気を漂わせるのですが、現代オケでは音量を上げて迫力で聴かせる終盤の盛り上がりも明らかにフルスロットル寸前で抑えているよう。パーカッション陣の表情を見ていてもそのことがわかります。
アントニーニの動きに少々変化が見られたのがメヌエットから。明らかに少しコントラストを上げ、オケに対する指示も綿密になってきます。ハイドンの真髄はメヌエットにありとの確信があるよう。挟まれるトリオとの表情のコントラスト、低音弦のゴリっとした感触もはっきりしてきました。
そして、やはりフィナーレに入るアントニーニ、腰が落ちてきました! しかも弱音部をかなり音量を落としてコントラストを最大限に高めようという意図も汲み取れ、オケを煽り始めます。きましたきました! ハイドンの書いた当時は最前線を行っていた音楽を現代の最前線に持ってくるように、オケを煽りまくるアントニーニ。読響の方もアントニーニのギアチェンジに鋭敏に反応してテンションを高めます。この終楽章に明確にポイントを置いたアントニーニの戦略に会場のお客さんも身を乗り出して聴き入ります。そして最後のクライマクッスへ向けて集中。ティンパニ、シンバル、グランカッサ奏者も先ほどまでと力の入り方が違い最後は風圧を感じさせて締めます。

やはりアントニーニが振ると読響の響きが引き締まります、ヴァイオリンのソロの場面の多いプログラムでしたので、古楽にも通じる音色を持つ日下さんが合っていましたね。そしてハイドンはやはりアントニーニの才能を感じさせる素晴らしいものでした。惜しむらくは席が遠かったのとホールの容積がこの規模のオケには大きすぎたのか、飽和感を感じさせるまでに至らなかったことでしょうか。響きの印象はサントリーホールとは大きく異なりました。今回、アントニーニ自身も読響に対していい印象を持ったことでしょうから、この先も客演の機会はあろうかと思います。その際には是非、サントリーホールでの演奏を期待したいと思います。



(参考アルバム)




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1 Comments

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Katsudon

No title

お世話になります。
2日目の方を聴きに行き、只今、帰途に着く新幹線車内です。
私は2階席の左寄りで聴きましたが、貴兄もおっしゃる通り、このホールはヴィヴァルディをもちろん、ハイドンでも少々広く感じてしまいますね。至近距離で聴けば、アントニーニのアクセルの踏み込みをダイレクトに感じられたかもしれませんが、2階席までにはそれが届かず、拡散してしまった感じでした。
そんな中でも「軍隊」の後半2楽章、特にメヌエットのイキイキとした表現はハイドンを聴く楽しみを実感できるものだったように思います。
古楽器の団体を指揮するのとモダン・オケを指揮するのとでは、アントニーニはもしかして少々アプローチを変えているのかもしれない、と何となく思わないでもないような…。
やはり、イル・ジャルディーノ・アルモニコやバーゼル室内管弦楽団で生を聴いてみたいという欲望が、ただただ残るようなコンサートでした(別に読響が全くいただけないということではないのですが…)。

  • 2018/10/21 (Sun) 18:00
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