作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

ステファニア・ヴォイトヴィチの挿入アリア(ハイドン)

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良いアルバムが続いて手に入るときは、運気が上昇しているとき(笑)

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ステファニア・ヴォイトヴィチ(Stefania Woytowicz)のソプラノによるオペラアリア集のLP。この中の冒頭にハイドンの作曲による、ジョヴァンニ・パイジェッロ(Giovanni Paisiello)の歌劇「フラスカーティの女」(La frascatana)への挿入アリア「薄幸な花嫁」(D'una sposa meschinella)が収録されています。伴奏はクルト・マズア(Kurt Masur)指揮のベルリン室内管弦楽団(Kammerorchester Berlin)。その他にモーツァルト、ラヴェルの曲が収録されています。リリースは1970年、レーベルは旧東独ETERNA。

上品なボタニカルアートをあしらったデザインのジャケットにピンときて手に入れたアルバム。歌手のステファニア・ヴォイトヴィチは初めて聴く人。ジャケット裏に小さく添えられた写真を貼っておきましょう。

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ステファニア・ヴォイトヴィチはポーランドのソプラノ。Wikipediaによると1922年現ウクライナのカームヤネツィ=ポジーリシクィイに生まれ、ポーランドのクラクフの音楽学校で学び、1950年ポズナンのバッハコンクール、1951年ライプツィヒのバッハコンクール、1954年プラハの春音楽コンクールでそれぞれ1位になり、本格的な活動をスタートさせました。レパートリーは独唱、重唱、カンタータ、オラトリオなどが中心でコンサート形式の舞台を得意にしたよう。また、ワルシャワで開催される現代音楽祭「ワルシャワの秋」に度々出演し、シマノフスキ、ペンデレツキ、グレツキらの作品を取り上げたということで、現代音楽も得意としていたよう。discogsでアルバムを検索すると、現代ものも含む200枚近いアルバムがヒットしますので、その道ではご存知の方も多いかもしれませんね。1977年から1992年まで、ワルシャワ音楽協会の会長を務めたということで、ポーランドを代表する音楽家ということでしょう。亡くなったのは2005年ということです。

このアルバムで取り上げられているのはハイドンが他の作曲家のオペラに追加したアリア。ハイドンはエステルハーザ宮の楽長としてオペラ劇場で多数のオペラを上演ましたが、他の作曲家のオペラの上演に際して、公爵家の歌手に適したアリアを追加することもあり、それらの楽譜が残されていたため、ホーボーケンのカタログにも多くの曲がリストアップされているということです。他の作曲家の作品でもそれをより良くして聴かせようというハイドンのサービス精神がよくわかりますね。

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Hob.XXIVb:2 Aria di Donna Stella "D'una sposa meschinella" for Giovanni Paisiello's "La frascatana", Act 1 Scene 6 「薄幸な花嫁」パイジェッロの歌劇「フラスカーティの女」への挿入曲 [C] (1777)
針を落とした途端、オーボエの実に雰囲気のあるメロディーがオペラの場面を彷彿とさせる見事な入り。広々とした劇場の中で聴くような素晴らしい響きにうっとり。そしてヴォイトヴィチの第1声が入ると、えも言われぬような絶美のソプラノにいきなりノックアウトされます。なんという艶やかさ、そして音程が上がるところはまさに奇跡のような滑らかさ。高音の安定感も神がかってます。ゆったりと鳴り響くオーケストラに乗ってヴォイトヴィチが転がるような美声を次々と繰り出してきます。この伴奏、指揮はクルト・マズアですが、これほどまでに表情豊かなマズアの指揮を聴いたことがありません。

この曲は手元に、ヌリア・リアル、アンナ・ボニタティバス、エディト・マティス盤があり、どれも素晴らしい歌唱ですが、オペラの場面を彷彿とさせる感じはこのヴォイトヴィチ盤が1番。溺愛するヌリア・リアル盤は古楽器オケのキビキビとした伴奏に乗ったコケティッシュなリアルの歌唱が魅力的、ボニタティバス盤は同じ古楽器オケながらオーソドックスで歌唱も艶やかで堂々としたもの。そしてエディト・マティス盤はもちろんマティスの豊かな声量と高音域の輝かしさが聴きどころ。正直どれも素晴らしい歌唱で甲乙つけがたいんですが、このヴォイトヴィチ盤は謎めくようなソワソワ感に満ち溢れていて、まさに情景が目に浮かぶようなリアリティがあるといえばわかりますでしょうか。

ふと出会ったアルバムですが、書いたように素晴らしい音楽が溝に刻まれていました。針を落として流れ出すこの音楽の気配というか、雰囲気はCDではなぜか出ないんですね。これだからLP収集はやめられません。黄ばんでいても30cm角のジャケットにはモノとして存在感があり、ちょっと古びたLPをクリーニングして、針を落としてみるて最初の音が出る瞬間のワクワク感はデジタル時代には失われてしまったもの。それゆえ、LP時代の終焉から30年以上経った現在、それに気づいた人々がLPに再び目を向け始めたわけです。たった5分ちょっとのハイドンの曲1曲が収められたLPですが、このアルバムも我が倉庫の宝物に加わりました。評価は[+++++]とします。



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