ウィーン・ニコライ弦楽四重奏団の皇帝など(日経ホール)

なんだか、記事を書き終わらぬうちにコンサートの予定になっちゃってます。コンサートでもらったチラシから気になるコンサートに出かけています。

WienNicolai.jpg
日経イベントガイド:第477回日経ミューズサロン

10月10日に日経ホールで行われたコンサート。ウィーン・ニコライ弦楽四重奏団(Wien Nicolai Quartett)によるハイドン、モーツァルト、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲を並べたプログラム。ウィーン・ニコライ弦楽四重奏団とは聴きなれない名前でしたが、メンバーはウィーンフィルのメンバーで、もらったチラシには『ウィーンフィルの創始者「オットー・ニコライ」の名を冠する』とあり、至極由緒正しい感じがして、しかも今回の来日が日本のデビューコンサートということで、それならば聴いてみようということでチケットを取った次第。

しかもプログラムは下記の通り、有名曲ばかりを組み合わせた、かなり集客を意識した構成。

ハイドン:弦楽四重奏曲Op.76 No.3「皇帝」
モーツァルト:弦楽四重奏曲14番K.387「春」
ベートーヴェン:弦楽四重奏曲7番Op.59-1「ラズモフスキー1番」

日本で絶大な人気を誇るウィーンフィルのメンバーがこれらの曲を弾くということで、客層の裾野はかなり広がるでしょう。メンバーは下記の通り。

第1ヴァイオリン:ヴィルフリート・和樹・ヘーデンボルク(Wilfried Kazuki Hedenborg)
第2ヴァイオリンベンジャミン・モリソン(Benjamin Morrison)
ヴィオラ:ゲルハルト・マルシュナー(Gerhard Marschner)
チェロ:ベルンハルト・直樹・ヘーデンボルク(Bernhard Naoki Hedenborg)

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日経ホールは読響以来2度目です。この日の席はやや右後方。規模は室内楽にはぴったりですが、多目的ホールなため弦楽四重奏には少々デッドで響きが痩せて聞こえるのではとの危惧がありましたが、だいたい予想通り。お客さんの入りはほぼ満員で、さすがにウィーンフィルというブランドが効いていると納得ですね。

1曲目の皇帝は、予想通りオーソドックスな演奏。1曲目ということでちょっと硬さも感じさせ、特に第1ヴァイオリンの音程が少し落ち着かない感じでした。響きがデッドなため、このあたりの粗が少し目立った感じ。ただし、1楽章で目立った粗も徐々に収まり、2楽章ではアンサンブルがかみ合ってきて、特に弱音のバランスの良さを感じさせるようになります。美しいメロディーを聴かせるところは流石にウィーンフィルということで味わい深い響きを作り出します。ヴィオラやチェロは盤石の安定感。メヌエットではこちらの耳がホールの響きに慣れてきたのか、デッドな響きがかえって心地よく感じられてくるのが不思議なところ。各パートの見通しが良くメロディーの受け渡しとリズムが鮮明に聞き取れるからでしょう。そして終楽章は複雑にメロディーが絡み合いながらまとまっていくところが聴きどころですが、弾き慣れているからでしょう、音楽が収束に向かうのを安心して聴いていられます。ということで、1曲目のハイドンはアイドリング的な感じがなくもありませんでした。

続くモーツァルトは、1曲目でアイドリングが済んだのか、冒頭から緊張感あふれる素晴らしい出来でした。ハイドンではどこか流れに淀みがあったように感じていたのが、モーツァルトでは実に楽しげにリラックスして4人のボウイングが揃って響きの統一感も上がった感じ。何よりのびのびとしてメロディーが心地よく流れ、アゴーギクもより自然に感じられました。この曲はモーツァルトがハイドンのロシア四重奏曲に深く感銘を受け、ハイドンに献呈したハイドンセットの6曲の最初の曲。作曲は1782年ということで、1曲目のハイドンの皇帝の1797年よりも15年も前に書いたことになります。こうして並べて聴くと流石にメロディーラインの美しさはモーツァルトならでは。ハイドンが構成の面白さに聴きどころを設けていたのに対し、モーツァルトはメロディーの流麗な美しさと、パートの絡み合いの面白さにこだわっていたことがよくわかります。天真爛漫にさえずるような音楽を聴いて、ハイドンがモーツァルトの才能を見抜いた時の様子を想像しながら楽しみました。特に3楽章のアンダンテ・カンタービレのジワリと染み透るような美しさ、終楽章のフーガの幽玄な感じは見事でした。

休憩を挟んで最後の曲はベートーヴェンのラズモフスキー1番。何度も書いていますが、ベートーヴェンのクァルテットは苦手分野の一つ。この曲の刷り込みは同じくウィーンフィルのウェルナー・ヒンク率いるウィーン弦楽四重奏団のもの。なんとなくウィーン風にまとめられたこのアルバムの演奏と比べて聴いてしまっていましたが、同じウィーンフィル母体のクァルテットながら、このウィーン・ニコライの方は、それと比べるとだいぶストイックに聴こえました。あえて流れの連続性を分断してキレ味を追求するような姿勢の演奏。ベートーヴェンを聴き慣れた人の耳にどう聴こえたかはわかりませんが、私には少し力入りすぎに聴こえました。まあ、ハイドンやモーツァルトはともかくベートーヴェンの感想はおまけ程度にご理解ください。この日のお客さんは迫真の力演に盛大な拍手で讃えていました。

そしてアンコールにはラズモフスキー3番のメヌエット。アンコール演奏前のアナウンスでラズモフスキーの3曲を録音して発売予定であることが告げられていましたので、番宣ならぬ盤宣という意味もあったのでしょう。

このコンサート、お手並み拝見的な気分でもありましたが、良い意味でも悪い意味でもウィーンフィルブランドに印象を引っ張られたような気がしました。ウェルナー・ヒンクやライナー・キュッヒル率いるウィーンフィル出身者のクァルテットが、ある意味ウィーン風の伝統の中で演奏してきたのに対し、このクァルテットもその期待を背負ってのスタートとなるわけです。伝統的な看板を背負ってこれからどのようにやっていくのか気になるところですね。もちろん、ハイドンの本格的な録音への期待も込めて見守りたいと思います。



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Author:Daisy

なぜかハイドン(Franz Joseph Haydn)が特に気に入り膨大な録音をコツコツ集めてレビューしております。好きなものはお酒全般(ワイン、日本酒、モルトなど)、美味しいものを食べること、料理、鄙びた温泉めぐり、歌舞伎見物、スポーツクラブで泳ぐこと(美味しいお酒を呑むため!)などなど。東京在住のごく普通のサラリーマンです。

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登録曲数:1,365
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(2019年3月31日)
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