ケッケルト四重奏団の「皇帝」(ハイドン)

ケッケルト四重奏団(Koeckert-Quartett)の演奏による、ハイドンの弦楽四重奏曲Op.76のNo.3「皇帝」などを収めたLP。収録情報は記載されておりませんが、ネットで調べてみると、同一音源の異なるLPの記録には1952年7月13日、ハノーファー会議センターのベートーヴェン・ホール(Beethoven Saal)でのセッション録音とあります。もちろんモノラル録音です。レーベルはDeutsche Grammophon。
ハイドン愛好家の方ならケッケルトといえば60年代に録音された太陽四重奏曲集が有名ですが、その他に72年録音のOp.74のNo.1のライヴがあり、双方以前に取り上げています。
2013/08/07 : ハイドン–弦楽四重奏曲 : ケッケルト四重奏団のOp.74のNo.1(ハイドン)
2011/12/10 : ハイドン–弦楽四重奏曲 : 【新着】ケッケルト四重奏団の太陽四重奏曲復刻盤
両アルバムを取り上げた際に、このLPの存在も確認していましたが、それから5年以上経ってようやくこのLPに出会った次第。しかも録音は最も古く、メンバーも前出の二枚とは異なり第2ヴァイオリンがオリジナルメンバーです。
第1ヴァイオリン:ルドルフ・ケッケルト(Rudolf Koeckert)
第2ヴァイオリン:ヴィリ・ビュヒナー(Willi Buchner)
ヴィオラ:オスカー・リードル(Oscar Riedl)
チェロ:ヨーゼフ・メルツ(Josef Merz)
いつものようにVPIのクリーナーと必殺美顔ブラシでクリーニングして、モノラル専用のプレーヤーで針を落とします。
Hob.III:77 String Quartet Op.76 No.3 "Kaiserquartetett" 「皇帝」 [C] (1797)
モノラルですが、期待通り鮮明で切れ味鋭い音色が飛び出してくるなかなかの録音。冒頭からビシビシとテンションマックスの4人のせめぎ合いはこちらも期待通り。比較的速めのテンポでまさにキレキレの演奏が飛び出してきます。モノラルカートリッジなので音像の安定感も揺るぎなく、安心して演奏を楽しめます。このダイレクトなシャープさはCDでは味わえませんね。適度に鄙びた音色ながらきりりと引き締まった響きがだんだん心地よく感じてきます。
ドイツ国歌の元になった2楽章は、今度はテンションを落としてOp。20のNo.5同様、枯淡の境地を聴かせます。メロディーの提示の後の変奏に入ると、各パートの味わい深さが一層深みを増して、若干古めかしい印象を与えますが、それもこの演奏の味わいのうち。たっぷりとヴィブラートをかけながらも昔を慈しむようなゆったりと、そしてあっさりとした語り口が郷愁を誘います。
メヌエットの最初の鮮明な一音で雰囲気をさっと変える見事な場面転換。こうしたセンスこそが曲のメリハリを印象付けます。メロディーラインがわずかにポルタメント気味なところが時代を感じさせますが、全体の印象は切れ味の良さを保っているのが時代を先取りしていたのでしょう。
そしてフィナーレでは1楽章のキレとテンションが戻ります。硬軟織り交ぜ、クッキリとコントラストをつけながら推進力で音楽をまとめ上げる手腕は見事。多少の粗さが個性でもあり、響を揃えるのではなく音楽の表情を揃えながらも音色がそれぞれ微妙に異なることで得られる深みが聴きどころみました。実に味わい深い演奏に舌鼓。

ケッケルト四重奏団のハイドンでは最も古い録音である皇帝。やはりケッケルトは名四重奏団と納得した次第です。モノラルながら録音も鮮明。そして演奏も覇気がみなぎる素晴らしいものでした。こうした演奏の気配というべき空気感が録音から66年も経ってもLPから湧き出てくることも驚きです。評価は[+++++]と致します。
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