作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

ニュー・ヘルシンキ四重奏団による「日の出」(ハイドン)

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本日は知る人ぞ知る、つまり知らない人は知らないアルバム。というか、激マイナー盤です(笑)

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ニュー・ヘルシンキ四重奏団(The New Helsinki Quartet)の演奏による、ハイドンの弦楽四重奏曲Op.76のNo.4「日の出」、モーツァルトの弦楽四重奏曲23番(KV.590)の2曲を収めたLP。収録は1978年9月17日から18日にかけて、フィンランド北部、ボスニア湾沿いの港町オウルのオウル市庁舎(Oulu City Hall)でのセッション録音。レーベルはフィンランドのCULTOR(Länsi-Helsingin Musiikkiopisto)。

最近オークションで仕入れたLPですが、いかにもフィンランドらしいシンプルなデザインのジャケットにピンときて興味を持った次第。もちろん奏者も初めて聴く人ですので、針を落とすまで「当たり」かどうかわかりませんが、これが「大当たり」だったので取り上げた次第。奏者は以下のとおり。

第1ヴァイオリン:ジャン・ソダーブロム(Jan Söderblom)
第2ヴァイオリン:サトゥ・スルクメキ(Satu Sulkumäki)
ヴィオラ:イライ・アンゲヴルヴォ(Ilari Angervo)
チェロ:ジャン=エリク・グスタフソン(Jan-Erik Gustafsson)

西ヘルシンキ音楽学校で学んだこのメンバーによって1982年に設立され、アマデウス四重奏団に師事し、1984年にプラハのコンクールで優勝したとのこと。名前を見る限り、フィンランド系、スウェーデン系、ロシア系の人とフィンランドならではの取り合わせ。ジャケット裏面の写真を見るとそれぞれ20代くらいの若さ。録音を調べて見るとFINLANDIAレーベルから他のクァルテットと共同でシベリウスの弦楽四重奏曲全集のほか、グリーク、ドヴォルザーク、ヤナーチェクの弦楽四重奏曲のアルバムがあります。この時第1ヴァイオリンのジャン・ソダーブロムは現在指揮もしておりウェブサイトを調べてみると1970年生まれということで、録音時は20代にもなっていないことがわかりました。この録音、おそらく皆10代での録音でしょう。

Hob.III:78 String Quartet Op.76 No.4 "Sonnenaufgang" 「日の出」 [B flat] (1797)
針を落とすと、スピーカーの奥に広大な空間が広がります。まるで空気までフィンランドの北部の空気に変わってしまったような透明感。この素晴らしい響き、ヘルシンキのクァルテットがわざわざオウルまで出かけて録音した甲斐があろうというもの。冒頭から実にエネルギッシュな、まさに若さあふれる演奏。線もピシッと揃って技術的にも非常にレベルが高いもの。素晴らしいのが4人のバランスというか息の合い方。第1ヴァイオリンが艶やかななのはもちろん、浮かび上がりすぎることもなく、この曲の推進力あふれる展開にピタリと合った4人の鬩ぎ合いの面白さが存分に味わえるもの。微妙な照りや翳りの変化をデリケートに表現していく様子は、メンバーの若さを考えると類い稀なレベルに到達しています。
そのことがより説得力を増すのが2楽章のアダージョ。冒頭から味わい深いクァルテットの響きに惹きつけられます。まるで老獪なメンバーのクァルテットのような深みを帯びながら、どこかにニュートラルな視点があるため、ハイドンの高貴な印象を保っているよう。音量が下がるところのアーティキュレーションのデリケートさは見事の一言。曲の進みに応じて、それぞれのパートに代わる代わるスポットライトを当て、ふっと目立たせていくところも見事。いやいや見事なんですね。特にチェロの深みのある音色が曲の深みを際立たせます。
メヌエットもデリケート。独特のリズムにつけられたアクセントの巧みさに舌を巻きます。この曲の面白さをじっくり味わえと言われているような流石の演奏。すっと力を抜いたかと思うと、じわりと前に出てくるようにフレーズごとに巧みに表情をつけることで、この楽章が天才の筆によるものとはっきりとわかる演奏。ハイドンの意図を最もわかりやすく表現した秀演。
ここまでの演奏で想像できたものの、フィナーレは予想よりもテンポを落としてこの曲をじっくりと聴かせようという演奏。軽妙なフィナーレも良いものですが、これだけしっかりとメロディーを美しく鳴らされるとハイドン特有の閃きに満ちた音楽が深く印象に残ります。終結部へ至るハイドンの閃きの連続も絶品の演奏でまとめます。全楽器が非常に美しく響き、その響きを素晴らしい録音でLPにパックした見事なプロダクション。これは見事です!

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このアルバム、演奏内容といい、録音といい、そして中古品ゆえヨゴレが目立ちますが、見事なグラフィックデザインといい、ヨーロッパの音楽の中心たるウィーンのハイドンの作品を、ヨーロッパの辺境の地フィンランドで作られたプロダクションとしてまとめたものにしてはレベルが高すぎます。正直日の出のベスト盤と言っていい仕上がりです。おそらくこの音源はLPでした入手できないかと思いますが、手に入れて聴く価値は十分にあろうというもの。LPの再生環境のあるクァルテット好きな方(誰とはいいません(笑))、ぜひ手に入れて聴いてみてください! 評価はもちろん[+++++]とします。



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